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4. ロケットヘッド


 そこに凄まじい勢いで飛来する影!


 ドリルのように高速回転しながら、竜人の頭部に突き刺さった!!


 長く伸ばされた首はくの字に曲がり、竜頭は階段に激突。

 本体も続けて落下して、一帯を瓦礫に変えていく。


 赤い襲撃者は華麗に空中回転して着地、ズン、と音を立てて床がひび割れる。


「遅いではないか」


 瀬織津姫がなじる。


「これで良いのだ。緋色者は遅れてやってくると主殿から聞いた」


 微妙に間違っているが、紅に近い赤銅色の装甲に覆われた国津神、速玉男命参上だ。

 瓦礫からゆっくりと立ち上がる竜人の目には、怒りの炎が静かに燃える。


「もう一度問う。お前はどこから来た者だ?」


「我は深淵より来たり。深き底より溢れ出る者なり」


 低くくぐもった声。

 よけいなことを聞かなければ良かった。


 ヤドゥルが耳を押さえてしゃがみ込んでいる。

 小天狗が気を失って落下してくるのをキャッチ。

 回答が咒言だった。アストラル体に、ダメージを与えられたようだ。


「みんな、怯むな!」


 ボフッ、ボフッと音を立てて黒い煙幕が竜人の頭部を襲い、その視界と咒言効果を奪う。


 すぐさま夜刀神が反応して、暗黒咒を放ったのだ。

 実戦ではこうした支援魔術の使いどころが、勝敗に大きく影響する。


 瀬織津姫の領巾から水流が迸り、竜人の鱗を遡っていく。

 水咒は体にまとわりつきながらエーテル・パワーを削り取り続けるいやらしい攻撃だ。


 さらに畳み掛けるように、シンたちの攻撃が続く。

 竜人の尾が、爪が、それを払いのける。


 やっかいなことに、煙幕で暗闇に閉ざされていても、そこそこ反応できるようだ。


 それでも白い粘糸が飛び、竜人の鉤爪と尾を絡め取るのに成功。

 糸はビルの床や壁に竜人を繋ぎ止める。


 小天狗も意識を取り戻し、「おのれ悪魔ばらめガァ!」と果敢に挑んでいく。気配を散らす効果があると信じよう。


 多彩な攻撃が効果を上げているにも構わず、竜人が直立不動のまま一段と大きく気を溜めるのが感じられた。


 先ほどと同じブレスとは限らない。

 種類によっては致死性のものもある。


 俺に迷はなかった。


 黒煙の中に隠れる一点を目指し、必殺の槍を突き上げる。


 見えなくとも感知するに十分な、大量のアストラル・パワーが凝縮するその一点を。


 一葉、二葉、再び翼のガードを貫く。


 同時に尾と爪が戒めに抗い、鋼のような土蜘蛛の糸を振り切った。

 だが、間に合わない。屠龍の槍の切っ先は、竜人の膨張した喉に達した。


「小天狗、離れろ!」


 パウッ!!


 弾ける甲高い音とともに、限界まで圧縮されたアストラル・パワーが炸裂した!


 無明の黒煙を一瞬で吹き散らし、濃縮された入道雲のような瑠璃色の魔力の爆煙が、一気に球状に拡がった。


 次いでドンッ! と腹に響く激しい炸裂音と閃光!


 喉が弾け飛んだ!


 周囲の建築がビリビリと振動している。


 まばゆいアストラル光の軌跡を描きながら、竜頭が高く高く吹っ飛んでいく。


「やったぞ!」


 夜刀神が漆黒の剣を掲げ叫ぶ。


「主さま、まだ来ますん!」

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