5. 不運属性発動
アホは扱いやすいが、マジで捕まったらアウトだ。
メッチャ痛い目に遭わされるプラス、下手すると体をぶっ壊される。
それだけは願い下げだ。
だがしかし、奴らが一方的に痛い目に遭うのは、俺としては一向に構わない。むしろいい気味である。
古言葉を運用すれば、「ザマーミロ」というところだ。
というわけで、優しすぎるテルオさんに免じて、俺以外の肉体言語を用いた、ハードな語らいによる解決を選ぶこととする。
(良かったな、チンピラども)
俺は小さな雑居ビルに駆け込んだ。
クズ2男 AI生成に加筆修正
「逃がすな!」
後ろを走る太り気味のクズ二男は、体型のせいで遅れ気味なのだろう、長身のクズ一男の背中に、関西イントネーションで呼びかけた。
それでも相次いで、ドカドカと勢いよく階段を駆け上がって来た。
俺はとっくに三階までたどり着いて、余裕でゼイゼイ言ってるとこ。
そしてスナック、ハングリーママのドアを開ける――いや、開かない?!
年始以外、ほぼほぼ年中無休のはずなんだが、ドアノブをガチャガチャやっても、中からは無反応だ。
(マジか?)
ママはお客と飲みに行ったに違いない。しかもバイトまで連れてか。
いや、バイトだけ居てもアウトなんだが。
運の悪いことに、ごくごく稀にこうしたこともある。
これって俺の不運属性のせい?
(ごめんテルオさん。俺、あなたの優しさには、応えられなかったよ……)
そこに心も体もホットになった、二名様御一行がご到着。
「残念だったな……お前らついてない。店閉まってるわ」
「んーだと? クソヤロウ!」
「バカか、このクソヤロウが! ついてねぇなぁテメーだろがよぉ!」
お、日本語に戻った。
歌舞伎町で今夜一番「クソヤロウ」を叫んだクズメンどもが、ドヤドヤと上がってくる。
ちょっと油断した。
これはもう少しだけ距離を取らないと詰む。
俺は覚悟を決めて、階段の上からジャーンプ! あんどキーック!
不意を突かれた上背あるクズ一男が、俺さまご愛用青のサルバトーレの靴底を胸に受けて、みごとにひっくり返る。
俺は反動を利用して着地。
腰を階段にぶっつけてアイタタタってのも、着地に含めてくれるのならば。
慣れない大立ち回りをしただけでも、めっちゃ褒めてもらいたい。
もちろんヤドゥルにではなく、あのお方にだ。
いや、そんな呼び方すると、名前を呼んではいけない邪悪なる魔法使いみたいだから訂正――あの麗しきJKに、だ。
クズ一男は、階段を転げ落ちながら後ろのクズ二男を巻き込んで、二階の狭い踊り場に倒れ込んでいる。
「クソガキが!!」
「こんクソヤロウが!!」
日本屈指の凡庸なる罵声をダブルで、ケツの辺りに喰らいながら、俺はすでに四階へと走り去っていた。
「ぶっ殺す!」
「ぜってー殺す!」
ぜってーこんなことで、殺されたくはないのだ。




