13. 神族革命
「だけど、天津神族が首を縦に振らないぞ」
「大丈夫。国津神族とだけ、同盟を組めばいいの」
「いや、それは難しいぜ。つまり今までの同盟を断って、悪魔と組めってことだろ?」
「問題ない。天津神族も天使族も打倒して、支配下に入れればいい…だけよ」
「ははは、そいつはぶち上げたなあ」
余りに大胆な新秩序だ。
誰も考えなかった、国津神による逆転日本支配。
そんなことが起きれば、現世にどれだけの影響を与えることになるか、計り知れない。
「ずっと国津神は天津神の下に隷属していたでしょ」
「隷属っちゃあ隷属かも知れんけど、そこまで卑屈じゃないよ」
「それすら感じさせない、完璧な支配ってこと」
「うーむ」
「世界大戦後は、天津も国津も天使に支配されていた。それを解放できる、チャンスでもあるんだよ」
「確かにすごい構想だよそれは。でも、そっちだって悪魔族の盟主は、君のお父さんだろ? 俺説得する自信まるでないぜ」
「え? 父は殺すんだよ?」
可愛い唇から、サラリとキラーするワード出た。
「やっぱりそこは変わらないのか……」
匣と鍵を手に入れて、アヤを悪魔から解放するだけじゃ、ダメらしい。
元凶がなくならない限り、前に進めないというのか。
父親による軛で、アヤの手足はがんじがらめってことのようだ。
でも、殺さなくてもなんとかならないもんか?
「匣を使えれば、私と吾朗さんで組んで、父だって簡単に殺せる。だって、現世で悪魔を使えばいいんだもの。そのあと私が悪魔族の盟主になれば、なんの問題もないわ」
「そこまで匣は強力なのか」
「うん、超絶強力…ね。隠世でも使いこなせれば、今までの戦いとは次元が違うものになるんじゃないカナ」
ということは、匣を手に入れてもなお、悪魔の制御にはかなり危険を伴うとみていた方が良さそうだな。
「そう……ふたりで神族革命を起こそうよ?」
「こいつは参ったなぁ……」
それが本当にあの七大悪魔だとしたら、匣と鍵さえあれば、成功の可能性は充分あるのだろう。とんでもないレベルの悪魔たちが揃うことになるのだから。
「一応確認しとくけど、その七大悪魔って七つの大罪の悪魔なんだよな?」
「そうだけど?」
そうだけどナニカ? って当然のような顔をしているが、実際とんでもないことだ。
人間の七つの大罪に当てはめられた七大悪魔たち。
傲慢のルシファー
憤怒のサタン
嫉妬のリヴァイアサン
怠惰のベルフェゴ―ル
強欲のマモン
暴食のベルゼブブ
色欲のアスモデウス
どの悪魔も悪魔族最強の力を持つ魔神どもだ。
それを七体も同時に支配し、隠世ではシンとして使役でき、現世でも式神として支配できるとしたら、とんでもない力になるだろう。
今だかつて、そんな使徒は存在しなかったはずだ。
「やっぱり俺一人じゃとても決められない。持ち帰って第一使徒と相談していいか?」
「水生那美さん……ね」
「うん、あの人に相談しないとだ」
「分かった……」
水生那美まで廃して俺が国津神の盟主になれとか言われたら、簡単に断れたんだが、さすがに無かったか。
「よし、会談は以上かな」
そう言いながら、俺は椅子から腰を浮かせた。




