11. 救済の方法
「今ね……七体の大悪魔がいるの」
「いるって?」
「私の体に棲みついているのね」
「棲みつくって……どういうこと!? 今、君の中に? 七体も同時に、欠片じゃなく??」
「そう、完全体じゃないけど、腕や脚やお腹に、それぞれ場所を見つけて居座ってる。でも私が主導権を握っているから大人しくしてるけど」
「もし、主導権を失ったら……」
「私の中で権力争いが起きて、勝った者が私を支配する……カナ?」
「かなって……」
「誰が勝者でも、ちゃんと統合できてれば、まだいいの。でも、反乱を抑えきれないと、私の体もどうなるか分からない」
「どうなるかって……?」
「うーん、肉体の痛みは日常ね。体が異常に熱くなったり、ひどい頭痛や、出血が止まらなくなったり。ぶつけなくても痣はよく出るし、酷いときは瘤みたいなのができる……頑張ればすぐ消えるけどね」
それを押して、アイドル活動であれだけ頑張ってるのか……。
「実際になってないから分からないけど、そんなだから、制御失ったら肉体が変形する…カモ?」
肉体変形? この美しいアヤが、化け物のようになってしまうってことか?
「そんな危ういバランスの上で君は……」
「けっこうスゴイこと、やってるでしょ、私」
「ああ、凄すぎるよ。ほんと凄い。偉すぎって言ったら変だけど偉い」
「フフフ……吾朗さんにほめられるの、かなり好きなんだ。もっと言って」
ニコリと微笑むアヤは、蠱惑的ともいえるエロカワだ。その表情からは、内に秘めた存在をかけた苛烈な闘争など、うかがい知ることもできない。
「ああ、アヤはほんと凄いぞ」
ほめるくらい、いくらでもしてやる。どんどん自慢しろ。
「それ……で、俺に何をして欲しい?」
「悪魔からの解放……カナ?」
「いいんだな?」
「いいって?」
「それって悪魔族を裏切ることになるんだろ?」
「そうね」
「プロフェッサーが……お父さんが許さないだろうし……」
「そうなる…ね」
「どうすれば……」
「父を……殺して」
「…………!」
衝撃的な言葉だが、俺はそれを覚悟していた。
やはりそうくるのかと。
しかし、あの澁澤教授を打ち負かした上で命を奪うことなど、簡単にできることじゃない。
「だめ?」
「いや、ダメじゃない。ただ、とても難しいだけだ」
それと人を殺す覚悟……だ。
俺に直接人を殺めることなんて、できるだろうか?
それに隠世では簡単に人は死なない。
死んでも基本的に物理的な肉体に戻るだけだ。
だが、何度も死ぬと、遂には魂の器が壊れ、肉体に戻れなくなるらしい。何度もプロフェッサーを倒して殺さなくてはならない。
かなり無理ゲーだろう。
当然だが、現世で殺すなんて問題外だ。それは立派な殺人罪になる。
しかし隠世での殺人は……違法ではない。
違法どころか、神族戦争では、現世の戦争と変わらない。敵を殺せば殺すほど英雄だ。
しかし、実力ではプロフェッサーの方が上のはずだ。
なので勝利するとしたら、正面から戦うのではなく、何らかの罠に嵌めて殺すしかない。
とっても卑怯だな。
それに、何度も罠を作れるのだろうか?
「すぐにとは言わない。けど、時間がないのも確か」
 




