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8. アヤの守り

 仙族が一枚岩じゃないように、悪魔族もまた互いに内側で牽制し合っているのだ。

 教授と女帝など、姉弟なのにだ。

 仙族の派閥とはまるで違う。あちらは血縁や地縁が中心らしい。


 使徒たちは強烈な個性の持ち主が多く、まとめていくのはただでさえ大変だが、特に悪魔族はヤバいのが揃っている。

 アヤもまたその仲間なんだが、確かにある意味強烈な個性の持ち主といえるだろう。

 その叔母さまは見た目からしてもだが、次元が違う高純度のアクの強さだ。


「あんな目立つ使徒もそういないよな」

「ホント。よく狙われないなーと、思ってたんだけど、実際差し向けられた仙族の殺し屋に、殺されかけたこと、あるんだって」


「現世での手出しは、完全な掟違反じゃないか?」

「もちろん……だけど、彼らは証拠とか、残らないようにやる…から」


「そんな……もしかしてアヤもヤバいんじゃないのか?」

「私は見た目、ちゃんと変えてるし……ダイジョブ」

「そんな変わってない!」


 これだけ目立つ美少女は、他にはいない。

 それに最近は、テレビにまで顔が出るようになってきたのだった。


 アヤも大活躍した歌舞伎城戦争は、仙族に相当犠牲者が出ている。本当に死んでしまった者もいるかも知れない。

 恨まれていて当然だろう。


「今はマネージャーさんで、相当腕の立つ人が、つきっきりで守ってくれてる」

「そうか、なら少しは安心か。でも、ほんと気をつけてくれよ。俺現世じゃナンも役に立たんからさ」


「ほんと、喧嘩とか、からっきし……だよね」

「ははは、ポンコツなのは自覚してるさ」

「吾朗さんこそ、無理して怪我しないで…ね」


 アヤのステージに、ストーカーまがいのファンが上がろうとしてきたことがある。

 そのとき俺は、柄にもなく飛び出して行ってしまった。


 激しいもみ合いになり、殴る蹴るされた結果あえなく撃沈。

 一晩入院して、そのあとしばらく通院したことがあったのだ。


「でも、もう君に現世で遭う機会も、そうそうないからな……」


 彼女は売れっ子アイドルの道に踏み出している、かなり忙しい芸能人の身なのだ。

 俺がバイトしていたような小さなライブハウスにも、もう出ることはないだろう。


「それもなんか、寂しいカナ。今度一緒に、ご飯食べよう?」

「隠世で食えばいいじゃないか。世間話ししかしないなら、敵対神族の使徒同士が歌舞伎城でメシ食ってても問題ないだろ」


「えー、現世で会うから、ドキドキするんじゃナイ?」

「仙族じゃなくて、ファンに殺されるよ」


「そのときは、私が守ってあげる」

「あはははは、それは嬉しいやら情けないやらだな」


 まあ、ガチで殺されるとしたら、俺ひとりの時だろうけどな。


「でもアヤって、護身術とか習ってるの?」

「フィジカルなのは要らないの。私たちの使い魔(ファミリア)は――あ、シンのことね――現世でも動けるヤツ、いるから……でも、オートで殺しにかかるから、ちゃんと止めてあげないとね」


「それだと、護衛マネージャー要らなくね?」

「ん? でも岩垣さんいると、だいたいは諦めてくれるから、無駄な争いなくていいと思う」

「軍事抑止力みたいなもんだな。でも、悪魔族側は、そのファミリアを先制攻撃に使えるよな?」

「うん、できるよ」


「そうなのか! てことは、証拠も残さず敵対神族の使徒を攻撃できるじゃないか」

「ダイジョブだよ、悪魔族はそんなことしない……ハズ」

(オイオイ!)


「でも、超常的な攻撃があれば、使徒なら感覚でやられてるの、スグ分かるし、事件のあとを霊能者が視れば、どこからの攻撃なのかバレちゃうよ」

「へー、現実の方のオカルトは、さっぱり解らないからなあ」


「少しは勉強しておいた方が、いいカモ」

「それもそうだな」


 古神道に関しては、そこそこ実践を始めてるんだが、他のところの知識も仕入れといても悪くない。


「こんど俺が神道知識教えるから、アヤが魔術知識を教えてくれないか?」

「あ、それイイ。しよう、しよう。夜遅くなら、ファミレスとかでもイイし」


 深夜のファミレスで、怪しいオカルトと神様系のガチ話をしている美少女新人アイドルとポンコツニートという情景を思い浮かべて、これはアカンと思った。


「やっぱり隠世でやろう」

「えええ~」


 まあ、でも現世で一緒に食事くらい、実現したいな。あくまで友人として。


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