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6. 不運属性を超えて……

「ごめんごめん、そういうつもりじゃないんだけど、テルオさん助けるために現世のチンピラをこっちに引っ張り込んだら、ナイフで心臓グサリ」


俺は大げさに、両手で胸を押さえて仰け反った。


「ユ―レイ?」

「死んでないって!」


「うん、よかった」

「けっこう痛かったけど、ヤドゥル一緒だし」


「ヤドゥル、エライ子だ、今は?」

「外に待たせている」


「それで?」

「ヤドゥルときたら、もう不満たらたらで……」


「ううん、その話の続き――」


「ああ、もう大変だったのさ。そのあと国津神のデカいのがチンピラ瞬殺して、そいつがバトルにしつこく挑戦してきて、なんとか勝ったら、シンになってくれたのはラッキーって感じだが、偵察に出した山童とシンクロしてたらレギオンどもを率いた正体不明の悪魔に睨まれて、一瞬意識乗っ取られたと思ったら、山童が凶暴化してて、皆でそれを鎮めて、荒野に出たら風の精霊の群体に包囲されていじくられ、バスに乗ったら仙族のランファにデートしようってむっちゃ絡まれて、変装して同乗してたワン長老にはなんか探り入れられて、その後ここに来るまでヤドゥルをまこうとして全力で走ったのに、あっさり追いつかれて、諦めてそこまで同行させて、やっとこさここにいるわけで、フウ…………」


 我ながらいろいろありすぎだろう。


「ク……!!」


 アヤが真っ赤になって、笑いを堪えている。


「いいよ、ここは笑うところだ」

「プッ! アハハハ!! スゴイ、スゴすぎゴローさん! 運のステータス超壊れてる?」


 ここまで爆笑するアヤは、久しぶりに見た。


「確かに俺って運にデバフかかってるよな、こっちでもあっちでもね」

「今度、幸運を呼び寄せるチャーム、作って上げる。ちゃ・あ・ん・と、効くやつ。こっちでもあっちでも……ね」


「ええ? そりゃ、マジで嬉しいかもな。たいしてキャラ立ちに貢献しないくせに、ガチ迷惑な不運属性ともオサラバできる」


 そんな隠しパラメーターが、俺たち使徒にあるかどうかは知らないが、ガチでトラブルに巻き込まれ易い体質であるのは確かだ。


「楽しみにしてて。でも、ワン長老もバスに偶然乗ってたのって……怪しくなくない? 何か情報抜かれるような、仕掛けされてない、カナ?」

「少なくとも糸は付けられてないよ。ヤドゥルが見てくれる」


「そう…………余計なもの、持ち込んでない、みたい……フム、まぁ、おおむね大丈夫……きっと」


 アヤが何らかのサーチスキルを用いたのだろう。

 彼女の瞳孔が大きく見開いて、また戻った。大きな目がよけい大きく見え、お人形さんのようだと思う。


 見た目はこんな可憐な少女なのだが、悪魔の使徒としてはかなり怖れられた存在なのだ。

 敗退したものの、ここ歌舞伎城を守り、仙族の猛攻を受けた戦いでは、数十人の使途をひとりで血祭りにしたという。


 その前にあった中野の戦いでも、圧倒的な強さを見せつけた。

 中野は我らが国津神とのガチバトルだったが、そこで初めて使徒としての彼女と出会い、お互い敵同士で戦ったのだ。


 途中までは俺たちが優勢だったが、アヤの父親が思わぬ場所から加勢に現れて、ひっくり返された。

 そんな不倶戴天の敵であるはずの悪魔族の美少女使徒とは、現世(うつしよ)ではもともと友人だったりする。


 彼女が地下アイドル時代、新宿のライブハウスで出演していた時、俺は裏方のバイトに駆り出されていて、そのとき知り合ったのだ。

 音楽の趣味とかがかなり合いまくって、意気投合した。


 なので隠世で出会ったときは、愕然としたものだった。


 しかもいきなり敵同士だ。

 さらに、容赦ない熾烈なバトルで、死ぬかと思ったわけだ。


 その直ぐ後にもまた現世で偶然出会って、なぜか大爆笑。


 お互いの運命を呪うとともに、友人としての絆は変わらないことを確認し合ったのだった。


 今日の会合もスマホの会話で連絡を取り合い、長く時間が使えるこっちで落ち合ったというわけだ。


 俺は暇だが、現世のアヤはかなりハード・スケジュールなのだ。なのでこんな深夜になってしまったというわけだ。

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