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4. シンとの作戦

「では作戦を説明しよう。会談する廃ビルを中心に、半径百メートル以内、およそ二町四方だな。その範囲に潜んでいる、あるいはその範囲から出ようとしない不審な者を見つけたら知らせてくれ。会談自体を中止する。


 異常がなければ、中心から五十メートル、半町離れて円を描くように均等に布陣してくれ。そのまま隠形し待機。外からの干渉に備えるとともに、万が一交渉決裂で戦いになったときには、俺のところに駆けつけて欲しい。


 それと、みんながここで召喚されていることは、歌舞伎城管理局には知られてはならない。俺がしょっぴかれるからな。だから隠形はしっかりとしてくれ。得手でない者は得意な者の助けを借りるように」


「心得た」土蜘蛛が跪き真っ先に応えた。


「造作もなきことよの」瀬織津姫が婉然と微笑む。


「迎撃は我が引き受けた!」速玉男命が拳を合わせる。


「承知」とつぶやく夜刀神。


「任せて、任せてくりゃれ」と小天狗が羽ばたく。


 野槌はぐっと頭部をもたげて頷いた。


「我は隠形が苦手だ。瀬織津姫よ、頼んで良いか?」

「速玉男どの、少しばかり濡れても良ければの」

「おお構わぬぞ、水も滴るいい男というではないか」

「ほほほほ、お戯れが上手よの」


 野槌が思念を送ってくる。


(わしが地に根を張るの。それで地に触れる者はすべて知ることができるの)

「凄いぞ野槌、そんなことができるんだな。よろしく頼んだよ」


 野槌はさっそく自分自身も土遁で地の中に隠れながら進んでいく。


「ほう、かような手があるのかえ。ならば、妾が見えぬ水滴を宙に漂わしょうぞ。あまり遠くまではかなわぬが、触れればただちに妾の知るところとなるわいな」

「完璧な察知結界だ。では早速取り掛かってくれ、セオ姫さま」


 シンたちがそれぞれ持ち場に去っていった。


「さて、もういいぞヤドゥル」


 上空から緑色の人魂のようなものが降りてきた。その輝きは膨らむと、ヤドゥル人形を包みこんだ。

 球体関節などの人形らしい形状は消え、まさに魂が吹き込まれたように、ヤドゥルは人の幼女の姿で立ち上がった。


「ただいまですん」

「お前はギリギリ近くの場所で待機していてくれ」

「むぅ……」

「それが最大限の譲歩だ」

「不承不承の承知ですの」


「さあ、行くぞ!」

「ひゃあ!」


 俺はヤドゥルを抱え、廃墟の建物の隙間を全力で走っていった。

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