表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/243

3. シン召喚

 オートマタであるがゆえに、何らかの縛りがあるのかも知れない。

 今みたいに、ルールを破ってはならないとか、嘘を吐いてはならないとかだ。


「ヤドゥルにその辺を聞いても、また『禁則事項ですん』とか言うんだろうな」


 独言して無人の建物の中に入ると、配下のシンたちを召喚した。

 見つかったら監獄行きか、鞭打ちでも食らって追放とかだろうか。


 まずは先程の瀬織津姫と土蜘蛛だ。


「ほお、吾が君、ここは随分と寂しげな歓楽街じゃのう」

「ここは歓楽街じゃないよセオ姫さま。そこから離れた廃墟地帯だ」

「ふん、詰まらぬわ。これでは先の瓦礫町と大差ないではないかえ」


「主様、吾らを召喚されたということは、腹をくくられたのでござるな?」

「そうだ、よろしく頼むよ」

「心得た」

「仕方ないのう」


 残念ながら山童はお休みで、代わりに小天狗を召喚する。

 いわゆる烏天狗というやつで、嘴と翼を持つ鳥人だ。山伏の衣装を着込んでいる。


「かぁ~主殿、わしゃあ何する? 何するかぁ? 何するが良いのかぁ? 」

「小天狗、静かに! あとで指示するから待機!」

「がぁ!」


 こいつは煩いので、せっかく飛べるのに偵察に向かない。なので、さっきは呼ばなかった。


 さらに強力な国津神速玉男命(はやたまおのみこと)を召喚する。

 日本の古い神さまなのに、その姿はなぜか近未来的サイボーグのような強化スーツで全身を鎧っている。

 (くれない)に近い赤銅色(しゃくどういろ)の装甲が頼もしい。

 見た目通り格闘戦に秀でた武闘派だ。


「三位殿、この速玉男によろずお任せあれ!」


 喋り方もヒーローもののお兄さん的に明るい。

 陰キャの俺としてはちょっと引く。


 さらにもう二柱、下半身が巨大な蛇体、上半身に黒の鎧を装備した夜刀神(やとのかみ)と、太くて短いイモムシにも似た蛇の姿の野槌(のづち)だ。


 夜刀神は社を持たない地主神として知られている。

 古代日本の蛇信仰の名残を留めている姿だ。

 隠形で近寄り野太刀を振るう、頼もしい忍者のような戦士だ。


「フッ………」

(それだけかい)


 野槌は今でこそ妖怪枠に入れられているが、もともとは鹿屋野比売神(かのやのひめがみ)といって草原に宿る国津神が本来の姿だ。

 この野槌も祀られる社を失って零落した姿とされるが、回復術式が使えるし、毒攻撃もでき、頼りにしている。


 俺のゲーム脳では、覚醒イベントとかで力を取り戻した暁には、美しい姫様に変身すると確信している。


(よろしくの……)


 控えめにテレパシーで伝えてくる。丸っこい蛇だけど可愛い。

 国津神にはこうした忘れられた神々が多いのだ。


「みんな、新しくシンとなった土蜘蛛族が(おさ)土師(はじ)殿だ。よろしく頼むよ」


 各々に皆、それに応える。


 そして俺は居並ぶシンを前に、今日の会合の内容を説明した。


「これから悪魔族の使徒と一対一の秘密の会談を行う。もしかしたら罠かも知れないし、他の神族が嗅ぎつけて邪魔をしてくるかも知れない」


「まさか悪魔族に与するのかえ?」

「天津神との絆を、如何にするつもりだい?」

 セオ姫さまとハヤタマさまが詰め寄る。


「もちろん天津神との同盟は、変わらず最重要だ。しかし、国津神族が滅んでしまわないために、悪魔とも取引する可能性を残しておくんだ」


「吾ら国津がそうまで追い込まれておるとは……」


 土蜘蛛は神族大戦に関してよく知らないのだろう。

 このところ国津は攻防戦に負け続けている。このままだと本当にヤバいのは確かだ。


「吾が君もヤキが回ったのかえ? 悪魔族の使徒など信頼できぬわ」

「確かに悪魔族は信頼に足るとは思えない。でも、今日会うのは、現世(うつしよ)でも俺の友人なんだ。彼女だけは信じられる」


「我は三位殿を信じよう」

「ありがとう、ハヤタマさま。セオ姫さまも信じてくれ」


「ふん、吾が君は悪女にたぶらかされておるのじゃ」

「ははは、その可能性も捨てられないね。だから俺に協力してほしい」

「最初からそのように頼めばよいのじゃ」

「助かるよセオ姫さま」

「貸しにしておくわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ