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12. 水の領巾


 これは深刻なレベルの炎熱の呪いなのだ。

 解呪しない限り、呪いは糸という存在に感染したまま残る。

 そして新たに糸を成した途端、自動的に発動されるのだ。


 火炎咒は蜘蛛の糸から、さらに土蜘蛛の体にまで飛び火する。

 逃げ遅れた精霊虫たちが巻き添えで発火し、か細い悲鳴を上げながら散っていった。


「さすがは三の君か()!」


 そう(うな)りつつ、しかし自身の炎上にもひるまない。

 そして放たれた炎の糸が、俺にめがけて殺到!


「え? そんなんあり?」

呪詛(すそ)は往々にして返されるものですん」


 ヤドゥル、なんでお前は他人(ひと)ごとみたいにして、しかも上から目線なんだ?

 燃える糸が俺を捉える。


「あちちちちち」


 脚と胴を糸に捕縛され、歩くことさえできない上に身体炎上中。

 そこに文字通りに燃える男、土蜘蛛の大人(たいじん)の巨体が迫ってくる。


 これはさすがにヤバイ!

 俺は一対一(タイマン)を諦めて助けを呼んだ。


「うわあ、()()よ、瀬織津姫(せおりつひめ)さま~~!!」


 セオ姫さまの助けより早く、勢いに乗った手刀が繰り出される。

 あの首を()ねた鋭いヤツ!


 すかさず俺は、ブーツ裏のギミックを発動させた。


 小さくて鋭いアストラル爆発が靴底で発生し、俺は後方にジャンプ。

 脚は動かせないが、土蜘蛛が急速接近したせいで、糸にゆとりができたのだ。


 一瞬遅れて、土蜘蛛の必殺の手刀が宙を切った。

 ついでに炎上する白糸が、ざっくり切られて助かる。


 しかし別の腕からさらなる炎の糸が放たれて、俺に殺到した。


 再び、脚が、腕が捕らわれる。


 これはマズい。


「吾が君よ……なんという無様な成りじゃのう」


 耳朶(じだ)に冷たい吐息が吹きかけられる。


 声の主の姿は見えないが、召喚に応えた瀬織津姫だ。


 彼女が編んだ水気(すいき)の防壁が、俺を包み込む。


 炎が鎮火した上に、白い剛糸はするりと抜けていった。

 全身を水の膜で覆われた身体は、いかなる束縛をも流してしまうのだ。


 体の自由を取り戻した俺は、速攻で土蜘蛛に向かって飛び込んでいった。


 紅蓮の炎をまとった朱槍が振り下ろされる。

 土蜘蛛のたくましい両腕の甲殻が迎え打つ。


 ドン! という衝撃とともに炸裂する爆炎!


 さらなる火勢に包まれても土蜘蛛は怯まず、残りの二本の腕が、がら空きの俺の腹に向け刺突した。

 後方ジャンプを想定しての、素早い直線的攻撃だ。


 しかし、土蜘蛛の鋭く伸ばされた手刀は、またしても空を切った。


 ブーツの爆炎が、今度は俺を上方に回避させていたのだ。

 敵の腕甲を捉えた槍の穂先を支点にして、俺の体は円を描いて舞い上がる。


「なんと!?」


 この動きは予想外だったようだ。


 俺はそのまま高々と前方宙返り。土蜘蛛の頭上を飛び越えて背後に降りると、横殴りに槍を振るった。


 ガツンと強い手応え!


 槍は土蜘蛛の胴を深々と(えぐ)るも、最後の二本の腕がそれを途中で抑え込んでいた。


 槍を封じられたが、以前これでドジ踏んだので対処法を編み出していた。

 朱槍はエーテルの残滓を残してふっと消える。


 俺の手の中には、槍が我楽多化(キップライズ)した、小さな銀色のアイテムが残された。


 槍に掛けられた咒もキャンセルされる。

 これ以上火焔が伝染することはないが、得物を取られるよりはずっと良い。


 それにすでに燃えている炎は、伝染力は失うものの、有効にダメージを与え続ける。


 俺はバックダッシュで距離を取ってから、再び朱槍を宝具化(トレジャニング)させた。


「さあ来い土蜘蛛!」


 なおも燃え立つ土蜘蛛は、腹部から派手に血を吹き出していた。

 追加ダメージも半端ないが、まるで気迫は衰えていない。


 赤いほとばしりは、床に落ちる前にエーテル残滓の銀色の飛沫と変じて、美しく輝いた。


 その飛沫を嬉々として浴びたオレンジ光の精霊虫の生き残りどもが、金色(こんじき)に輝きケラケラと笑っている。


 ゆっくりこちらを振り向くと、土蜘蛛は片膝を付いた。


 そして六つの手を地に付け、怒髪天のような蓬髪(ほうはつ)(こうべ)を深く垂れたのだった。

令和八年1月18日、12話の冒頭の抜け落ちた部分を追加しました


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公も修羅場くぐってるのが伺えて、戦闘が面白いです 主人公は火使いなのかな [一言] 他にもいるだろう臣がどんな面子なのか楽しみです 色んな神話の神々や悪魔が出てくるのはワクワクする
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