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5. ゴブリンの贈り物

― 前回のあらすじ ―


  新宿隠世の荒野で、北誠士郎とストラスは

  巨大な筒状の怪物と戦い、レギオンたちを守る

  そして、はぐれレギオンの女性をオペラの塔に連れて戻る

  ストラスが恐れる霧は、瓦礫町へと向かった


 中野ブロードウェイ隠世に現れたゲーム・ショップ、ハックル・ゲーム・ピットで、ピクシー三人娘のかしましい様子をじっと見つめ、俺は至福の時を過ごしていた。

 三人とも何て完璧な造形美なのだろうか。


 コロンバインはピンクの蝶の(はね)を、ひらひらと羽ばたかせながら揺れている。

 少しそばかすのある幼顔(おさながお)に、茶色の巻き毛がクリクリしている。

 このちっさいのにクリクリがたまらない。


 服もピンク系、上はスッキリした短衣(チュニック)幼気(いたいけ)なさを、下は花びらのような上掛けの内側にふわりと広がる黄色のフレアスカートでボリューム感を出し、可愛らしさを表現している。

 ブルーベルと言い争いをしているときでさえ、その仕草ひとつひとつが愛らしい。


 スノウドロップはまったく逆で、凛とした清楚な美しさだ。

 短い蜂の翅を震わせて、綺麗に宙に静止している。


 風になびかせる長い金髪に、少しお姉さんらしいすっきりとした面立ち。

 伏し目がちな切れ長の目に、憂いを帯びた深い緑の瞳が魅力的だ。

 口元には常に微笑みがあり、彼女のとらえどころのない神秘感を増幅させる。


 白の袖なしワンピースは、裾が花びらのように広がり分かれている。

 そこから伸びる色白の手足はしなやかで細く美しい。


 ブルーベルは蜻蛉の長い翅で、音を立てて素早く速く良く動く。

 才気煥発な感じの女の子だ。

 さまざまなポーズを一瞬で変化させ、見ていて飽きない。


 明るい緑の髪に青紫のブルーベルの花をモチーフにした帽子を被り、ツンと尖った鼻と、キュッと口角の上がった唇、目力の強い大きな瞳が特徴だ。


 服も青紫で、花びらのように先の尖ったミニスカート。

 翅と手足のバランスの良さが素晴らしい。

 どこを切り取っても絵になる。


「いやらしい顔して、コロンバインちゃんを見ないでくれる!?」


 ロリピンクに罵られるのも、また格別のご褒美だ。


「コロンバン、仮にもマスターなのだから、本当のことを言ってはいけませんよ」


 クールホワイトさん、マスターに厳しすぎ。


「あーしがマスターのフヌケたニヤケ顔を楽しんでるんだから、邪魔しないでのよさ」


 やっぱりブルーフラッパーには楽しまれてたか。

 うむ、善き哉、善き哉。


「主さま、妖精さんたち、みんなお話だけで臣になったのですん。本当にすごいですの」


 おっと、そう言うヤドゥルも激可愛いぞ。いや、そういう話しじゃないようだ。

 俺を褒め称える幼女人形の言葉を聞け!

 いや、それもだいぶ違う気がするが……俺は何をしているんだ?


「我らが主の凄きこと、修羅の如しナリ」

「それは違うだろ、八郎丸」

「クゥ……」


「戦わずしてシンにするのが、すごいのですん」

「そんなにすごいことなのか、ヤドゥル?」


「はいですん。ヤドゥルは他に知らないのですの」

「スノウドロップは物知りそうだから聞くけど、こういうケースは無いのかい?」


「そうですね。ブリテン島では、小さな子どもたちと、お友達になることはありましたけど、契約もなしに、言葉だけで臣従になることはありません。でも、今回は賭けの対象としての臣従ですから、一種の契約ですよ」


「そうか、でも、封魔をしなくて俺は良かったよ。戦って一度殺さなくちゃならないからな。他にもシンにする方法はあるのかい?」


「アングロ・サクソンの魔術師たちは、呪文でわたくし達を縛り、使役することがありました。実に不快でしたわ。ケルトのドルイドたちは、逆にわたくし達の家来になりたがりましたのよ」


 どうやらヤドゥルが言うほど、特殊では無かったようだ。

 それでも、ブルーベルのときは、歌と踊りで、というよりもだ、それで困惑した俺とシンの様子で面白がらせて、その結果の交渉でシンになった。


 小さいオジサンに対しては言葉というより威圧でか?

 狗神のときは、EP吸わせまくった結果なので、これもかなり特殊だろう。


 まあそこそこ主人公としての特性、芽生えてきたかも知れない。

 今後もできるだけ封魔をしない方針でいこう。


 さて、名残惜しいが、そろそろ行かなくてはならない。


 店主とちびゴブリンたちが、ゲームを片付けて行く中、俺はさいごに店内のゲームや小物を見て、目を楽しませていた。

 片付けが終わるのを待って、俺は最後に店長に挨拶をする。


「ありがとう、ホーハックルさん。楽しかったよ」

「ご満足いただけて光栄です。わしの名までご存知とは、なかなかに策士でございますな」


「すみません、勝手にアナライズしちゃいました。なにせアウェーなもんで」

「何ごとも慎重なのは、ダンジョン・シーカーには大切な心得でございます。感心こそすれ、何の問題もございません」


「それに、俺はゴブリンって種族を誤解していたよ。もっと野蛮なのかと思っていた」


「左様ですね……野蛮な輩もおりますが、それは群れから追い出された、彷徨う一匹狼のような者です。多くのゴブリンは約束を守り、隣人を大切にする者たちです」

「そうだったんだ」


「それに、こう見えて手先も器用ですしね」

「ドワーフみたいだね」


「ドワーフは……悪意ある者たちも少なくないので、どうぞお気を付けください」

「え? そうなんだ。それも意外だね。もっといろいろ聞きたいけど、時間が足りないんだ」


「どうぞ、ハックル・ゲーム・ピットにまたお立ち寄りください」

「でも、どうやって来たら良いんだが……あ、スノウドロップが居れば来られるのか」


「この(はしばみ)の杖をお持ちください」


 ゴブリン店長は、先が二股に分かれた木の短い杖をくれた。


「この杖の二本に枝分かれした方を、両手それぞれにお持ちください。そして長い方を上にして、ダンジョンを進みます。この上の枝が下がったときに眼の前に扉があれば、この杖で扉を叩いてくださいませ。するとたちどころに、そこにわしどもの店が、つながるようになります」


「へえ、それはすごい便利だ」


「他にも応用が効く便利な棒でございます。ダンジョンで床に反応したら、そこには何かが隠されている印となります。良いものもあれば危険なものもありますが」


「こんな良い品をどうもありがとう、ホーハックルさん」


 店主に礼を言って、俺たちは店を後にした。

 シャッターは閉まらない。

 どうやらここでしばらく営業するようだが、どんな客が来るんだ?


 さあ、我らは速やかに二階に行かねばならぬ。



いつもお読みいただき、ありがとうございます!

面白かったら、応援よろしくお願いします!

この作品の出版への足がかりになります。


 ※ ※ ※ ※


さあ、中野ブロードウェイの冒険再開です!


第15章6話は、令和6年10月28日公開予定!

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