11. コロンバインの願い
― 前回のあらすじ ―
シージ・ゲートのデュエルは0勝1敗1分で
第3セットを迎えた。
さあ、1勝しないとだ睦樹!
第三セット
ボーン・ダイスの代わりに大理石ダイスを使用した。
スノウドロップの白ダイスは、今回は振るわず④、でも平均以上。
そして青ダイス②、ピンク・ダイス③と珍しく低迷した。
俺の大理石は残念①だと!?
相性悪いのか?
バルローグ・トットのアイアンウッドは⑤、そして黒の赤目が⑥と、大健闘!!
スノウドロップ:④・②・③
俺:①・⑤・⑥
「フン、いい気にならないでね」
初めて俺かなり有利?
俺の合計値12に対して、相手は9だ。
思わず口元がニヤける。
それを見たブルーベルもクスクス笑っている。
笑うが良い、今回は俺の勝ちだからな。
だが、どうもダイスは、一回前のが相性はイイようだ。
スノウドロップはポーカー・フェイスだが、コロンバインは明らかに不機嫌そうで、口数も少ない。
さあ、ここは負けられない!
「勝ちに行くぞ!」
「はいですん」
しまった、これは死亡フラグか?
クソ、ままよ!
スノウドロップは、平置きでは絶対勝てないので、思い切って④③にするしかない。
そうなると、こちらが平置きにすると向こうの勝ちは…
ス:俺[④③:⑥・②:①・〇:⑤]と、
[④③:⑤・②:①・〇:⑥]の
2ケースあり、俺の負け率は1/3。
一方俺の勝ちは…
ス:俺[④③:①・②:⑥・〇:⑤]
[④③:①・②:⑤・〇:⑥]
[④③:⑥・②:⑤・〇:①]
[④③:①・②:⑥・〇:⑤]
の4ケースで4/6、つまり2/3で勝利だ。
ここは必勝の平置き作戦に出た。
さあ、ゴブリン兵たちが槍を交え、ゲートが開けられる!
右のゲート[スノウドロップ:④③ 俺:⑥]>負け
ちょ、待て、それはヤバい!
中のゲート[スノウドロップ:② 俺:⑤]>勝ち
ふう、良かった、これで勝利だ。
左のゲート[スノウドロップ:◯ 俺:①]>勝ち
壁の左側に、赤い旗が上がった。
「やれやれ、やっと勝った~……」
「やったのですん」
「キャハハハハハハ!」
「フン、運が良かっただけなのよ」
「そうですね、次が勝負です」
最初⑥が潰されたのを見たときは、肝が冷えた。
相手の②が俺の①に当たっていたら、負けていた。
それでも、やっと互角まで持ってきた。
次こそ運命の第四セットだ。この勢いで勝って終えるぞ!
「我らが主よ、ご武運をお祈りしますナリ」
「ああ、八郎丸。勝つぞ!」
第四セット
俺は大理石ダイスをやめて、ボーン・ダイスに戻した。
(さあ、運命の勝負ダイスだぜ! 俺は運命に打ち勝つ!)
と、意気込んだものの、結果はかなりヤバかった。
スノウドロップの白ダイスが⑥、青ダイスは③だったが、コロンバインのピンクまで⑥を出した。
こちらは、ボーンが③、トットが④、赤黒が④と振るわない。
まあ、こういう時もあるかも知れないが、土壇場に追い込まれている。
スノウドロップ:⑥・③・⑥
俺:③・④・④
「オーホホホホ、さすがはあたしのダイスちゃん。勝負はつきましたわ」
「まだ負けた訳じゃないのですん!」
「うわ~、これはもうあれかもだわさ。短い間だったけど、楽しかったのよさ~」
「まだ勝負は付いていないナリ!」
ダメだ、かなりヤバい。
平置きではぜったい勝てない。④③と重ねても、相手が平置きしたとき、
ス:俺[⑥:④③・③:④・⑥:〇]
2個の⑥が場所入れ替えるケースもこれと同じなので、この2ケースだけ勝利で、あとは4ケースとも敗北だ。
かなり分が悪いが、あとは運を天に任せるしかない。
(任天堂さま、今までたくさんお布施しました。どうか光を!)
右のゲート[スノウドロップ:⑥③ 俺:④]>負け
な、何だと!?
こっちの④③潰しで、大きく重ねてきた。
しかし、これに当たらないで良かった。
中のゲート[スノウドロップ:⑥ 俺:④③]>勝ち
助かった……これでドローだ。
左のゲート[スノウドロップ:〇 俺:〇]>引き分け
黄色い旗が上がった。
「ふえええ……」
ヤドゥルがほっとしたのか、情け無い声を上げている。
「引き分けナリ」
「お姉さま、これはまぐれでしたわね」
「ええ、悪運が強いようですね」
スノウドロップは、平置きしたときの俺の勝利2ケースのうち、⑥③と重ねることで、ひとつを引き分けに落としてきたのだ。容赦ねえ。
俺の勝利は、
ス:俺[◯:④・⑥③:〇・⑥:④③]
の1ケースしか残されてなかったのだ。
これを取れなくて残念だったが、なんとか辛うじて首がつながって、助かった感の方が強い。
第五セット
さあ、今度こそ決着だ!
那美、君への道を拓くために、力を貸してくれ。
それから炎の槍よ、魔槍屠龍蜻蛉切蜻蛉切よ、俺に勇気をくれ!
敵の意思を砕き、未来を切り拓く勇気を!
そして国津の神々よ、どうか、どうかそのお力をお与えください。
俺は……俺は……
スノウドロップとコロンバインが、どうしても欲しいんです!!!
ブルーベルも加え、こんな美しい美少女たちを、三体も侍らせることができるんだ。
これ以上の幸せがどこにあろうか?
ギラギラした俺を見て、ブルーベルがケタケタ笑っている。
構うものか。俺は次のダイスにすべてを賭ける。
いざ勝負だ!
スノウドロップのダイビング1投目。
白いダイスが、ボードに跳ねて、転がり、舞を終えると、出目は⑥。
「さすがお姉さま!!」
やはり白のダイスは彼女の望みに寄り添う。
そう、望みだ。
強い望みを抱かなくてはならない。
俺の望みは、スノウドロップ、お前を頂く、だっ!!
(さあ、我が邪なる望みを叶えよ、バルローグ・トット!)
俺がダイスを振る。
ボードの上を転がり、転がりそして上を向いた顔は、⑥だ!
「やったのですん、主さま!」
「フン、シッポのくせに、ちっちゃく巻いてればいいのに」
なんとかタイに持ってきた。
しかし、このあと俺は勝つ。絶対に勝つんだ……根拠はないけどな。
さあ、第2投だ。
スノウドロップがピンクのダイスをダイビングしながら落とす。
ボードを舞うピンク・ダイスが止まると、その目は、③。
「ごめんなさい、お姉さま、あたしのダイスが……」
「コロンバインのせいじゃないわよ。それに③はひどい目ではなくってよ」
「我らが主よ、いざ!」
俺は謎の骨で出来たダイスを手に取った。
さあ、俺にコロンバインを授けてくれ!
(我が望みを叶えよ、いと古き者より生まれい出し、ボーン・ダイスよ!)
やや黄みがかった白いキューブが軽やかに舞い、そしてステップを止めると、その目は⑥だ!
「やったのですん!」
「フン、まぐれの運気よ、消えなさい!」
「コロンバイン、ゲームの場に、呪詛の言葉を投げてはいけませんよ」
「そんな……願いを掛けるのと一緒ですわ」
え、それって効く呪詛なのか?
くそ、そんなんルール違反じゃないのか?
いや、それなら呪詛を跳ね返せばいいんだ。
「これはまぐれの運気なんかじゃないぜ、コロンバイン。俺の運気だ」
「うみゅ……」
どうだ、決まったか?
ブルーベルが大受けしてる。
よしよし、笑いは運気を上げるもんだ。
「お、お姉さま、最後は青のダイスだけど、だいじょうぶです。コロンバインが祝福します」
コロンバインは目を瞑り、額を青いダイスに当てて静かに祈るようにする。
黙ってれば実に可憐で可愛い妖精さんだ。まあ、煩くても可愛いが。
ほうっと光がダイスを包む。
「ブルーベルちゃん、帰ってきて!」
「え? これって良いの、店長?」
「ダイスの目を変えようというものではございません。ですから問題なしでございます」
何か、やばいなあ。
スノウドロップはダイスを厳かに受け取り、そしてダイブ・スローイング! 青いダイスが跳ね、転がり、そして出目は⑤!
「やりましたわ、お姉さま」
「そうね、ありがとうコロンバイン」
ここまでのダイス……
スノウドロップ:⑥・③・⑤
俺:⑥・⑥・?
第1セット敗北
第2セット引き分け
第3セット勝利
第4セット引き分け
第5セットはダイスが走っている。
このまま勝ち切れるのか睦樹!!
第14章12話は、令和6年10月21日公開予定!




