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4. 出花隼の話

― 前回のあらすじ ―


  アーマーはあのアストランティアのフィギュアが変化したものらしい

  中野隠世を支配する出花隼のシンの大黒猫に、警告を受ける睦樹だった


 黒い化け猫が消えていった通路の黒い穴を照らしてみたが、何も映じない。

 階下に行けるかも知れないが、罠の可能性が高いとみた。


 RPGの鉄則!

 駆け出しの冒険者は、死にたく無ければ、無理をしてはならない。


「まったく失礼な猫ですん」


「ヂッヂィ! コンド会ッタらぶっ殺チュー!」

「そうだなジェリー、遠慮なくやっちまおうぜ」


 オイリー・ジェリーはドヤ顔でうなづき、鼻からぶしゅーっと気炎を吐く。

 敵が居ないと威勢がいいようだ。


 化け猫は出花(いでか)のシンだったが、随分と主に忠実のようだった。

 あいつはあんな可愛い顔をしているくせに、性格的にはかなり陰険だし、切れるとナニするか分からなそうだが、シンには優しいのだろうか。


 でも、支配する方法はってのは、優しさだけじゃないのかも知れない。恐怖による支配だってあるんだ。


 とはいえ、俺はあいつが悪魔族で悪い奴であろうと、積極的に対立するつもりはない。

 それに、もう少し判り合えないだろうかとも思うのだ。


 いきなり攻撃されたり、暴力を振るわれたりしてるんだが、そこまで憎みきれないのだった。


 年下だからって、俺がちょっと甘いだけなのか?

 いや、奴なりに必死だったり、一生懸命なところが見えて、そこに共感しているのかも知れない。


「ヤドゥルは出花のことを、少しは知っているのかい?」

「少しは知ってる程度ですん」


「分かる範囲でいいから教えてくれないか?」

「はいですの。出花隼は、使徒になってから現世の時間で、まだ半年しか経っていないのですん。なのに急に頭角を現して、知られるようになったですの」


 中坊の癖に俺より半年先輩か。

 すぐに追越してやる! とかそんなんで発奮できないタチだからなあ……これが現世でポンコツの原因なのかも知れない。


「やっぱり強いから注目されたのかな?」

「その後ろ盾に、闇の女帝と呼ばれる、悪魔族第二使徒の一色百合子(いっしきゆりこ)が付いているからとの噂ですん」


 なんだ、パトロン付きか……って、一色百合子ってどっかで聞いたことあるぞ?

 ああ、あのバビロン占星術師の美魔女か!

 そんな有名人が使徒って、どうなん?


 あの美魔女が、出花のベビー・フェイスにメロメロになったのかも知れない。何となく想像がつくな。

 そのうち出花もTVに引っ張り出されるかもだ。


「その一色百合子は悪魔第一使徒の澁澤耶呼武(やこぶ)教授の実のお姉さんなのですん」

「名字違うのに?」

「家庭の事情まで詳しく知らないのですん」


「なるほど、で、姉弟で仲がいいんだな」

「それは違いますの」


「え? そうなの?」

「姉弟は、悪魔族の中の二大派閥の長で、いつも競い合ってるのですん」


「ああ、そういえば、そんな感じだったな。でも、中野は澁澤教授が支援して、落とせたんじゃなかったんだっけ?」

「はいですの」


「じゃあ、なぜ、そのライバル的な姉を助けたんだ?」

「闇の女帝百合子が、弟耶呼武教授に何らかの交換条件を出して、支援をさせたという情報ですの」

「なるほど……」


 もしかして、教授に支援させることで、若きプリンスたる出花隼の地位を上げようとしたんじゃあるまいか? つまり二大派閥の支持を得ているという……。


「出花隼のお話の続きをしますの」

「ああ、よろしくヤドゥル」


「隼の性格は冷淡で苛烈、目的のために手段を択ばないところがありますん。悪魔ヴァレフォールをロードにして、中野のルーラーになっていますの」


「ロードとルーラーの関係ってどうなの?」

「ルーラーはロードをそのエリアの中心に据えて、その力を使って中野を支配しているのですん」


「王と大臣みたいな関係なのかな」

「はいですの」


 渋谷ではロードのレッド・ドラゴンを倒したけど、ルーラーを倒さなかったから、渋谷支配には至らず、渋谷のダンジョンが崩壊しただけになったわけだ。


「中野は国津神が支配していたのに、悪魔族に取られたのが、五月だったな?」

「はいですん」


「他に国津神が守っている隠世は、秋葉原と吉祥寺ってことで合ってる?」

「それと上野と浅草ですん。秋葉原は天津神の協力を得て、共に守る街ですの」


「天津神と国津神は同盟関係にあるんだろ?」

「はいですん。同じ日本を守る神族ですの」


「なんで天津と国津と二神族必要なんだ?」

「すみませんですの。宿得は、その辺は分からないのですん」


 ヤドゥルはお詫びのおじぎをする。


 それはそうだ。ヤドゥルが神話知識をなんでも知っているわけはない。

 那美だったらその辺も理解しているのだろうか。


「じゃあなぜ悪魔族とか……ほかは、天使族に仙族……そんな外国の神族の連中が日本にいるんだ? しかも東京に」

「すみませんですの。それも宿得には、分からないのですん」


 また謝らせてしまった。


「そんないちいち謝らなくてもいいよ、ヤドゥル」


「はいですの」


 それにしても、使徒ってのは謎が多すぎる。


「知らなくても謝らなくてもいいから、聞いていいかい?」

「何なりとなのですん」


 にっこりと笑うヤドゥルは実に可愛い。

 断じて幼女趣味は爆誕していないがっ!


「俺や那美が国津神の使徒ってことは、世界改変に関してどう影響してくるんだい?」

「それにはお答えできるですの!」

 ドヤ顔でヤドゥルは解説する。


「お二人が国津神以外の使徒や超常の者を倒すことで、現世は国津の神々が望む姿に近づいていくのですん」


「国津神が望む世界ってどんなんだ?」

「ヤドゥルより、主さまの方がご存知のはずですの」


 そう言われてもピンとこない。


「前にも聞いたけど、俺たち使徒は他の使徒と神族の繁栄を懸けて、殺し合うってことで合ってるかな?」


「はいですん。でも、ふつうは殺しはしませんの。どちらかが力を失い負けを認めれば、(とど)めを刺さない協定があるのですん。その代わり、配下の臣の内、相手が望む一体を差し出さなくてはならないですの。それで勝敗が決し、世界は改変されますん」


「ヤドゥル、シンを差し出すルールは初めて聞いたぞ?」

「あれ? お伝えしませんでしたの?」


「はい、ヤドゥルは、お伝えしていませんですん」

「ごめんなさいですん」

「あぁ、謝らなくていいけどな……」


 そういえば、相馬吾朗と水生那美は、他の使徒を倒したあと、シンを奪っていたんだっけか……確かに、ハーピーたちは、そうして那美が手に入れたような覚えがある。


 吾朗のは自分で封魔したシンばかりだ。

 那美は封魔があまり得意じゃなかったのかも知れない。


 すると「力が強すぎた」というワードが夢の記憶の中から返ってきた。

 彼女は倒して封魔する際に、勢い余って、すべて消し飛ばしてしまうのだった。


今回も出会いはナッシング……

済みません、こんなはずじゃなかったんですが……

どうか、犬養睦樹くんのこれからのダンジョンでの出会いを

生暖かい目でお見守りください


5話は、令和6年10月2日公開予定!


  * * * *


劇作家、演出家、カルト文化や様々な映像表現の評論家である唐沢俊一先生が、9月24日お亡くなりになりました。博覧強記の66歳でした。御冥福をお祈りします。

「汝が罪を祝福し、眠りののち星と燃えんことを祈らん」

私よりたった2つ上です。死因は心臓発作。

つい数日前まで、SNSで気炎を上げていらっしゃったのに、ほんとうに残念です。


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