8. 超常の者
そう、超常の者……それがこの世界の支配者だ。
俺は見た目は超グレグレだが、きっと内には素直な心を持つ生徒たちに、しかと教えを垂れて聞かせた。
「ここ隠世よりさらにあっちの世界に、常世という霊や神々の暮らす場所がある。その常世を超えて現れるから、超常の者と呼んでいるんだ。そいつがあの城に近づきすぎたんで、守護者に熾焔球術式――つまり超強力な火炎弾の術式で撃ち落とされたんだ」
「はぁ??」
「地上で蠢く光は、さまざまな精霊たちがさんざめく、アストラルの光だ。美しいだろ?」
「ああ……そりゃキレイだぜ」
クズ一男の方は誘導され始めた。
「い、いったいなんだってっんだよぉ?」
クズ二男は、俺の説明がまったく耳に入っていないご様子。
すべて拒絶モードに突入だ。ご愁傷さま。
「さて、俺がきちんと話したんだから、今度はお前らの答える番な。どうしてテルオさん――さっきの浮浪者の爺さんを、痛めつけてたんだ?」
「め、メザワリやろ……あんなクソジジイ……」
「そうだ、浮浪者のくせにナニがうれしいんだかニコニコしやがってよぉ……テルテル坊主なんざ配りやがって……ナニサマのつもりだ?」
良いぞ。お喋りになってきたクズ一男は、落とせそうだ。
「ほんとうにそれだけか? 誰かにテルオさんのことを、聞いてたんじゃないのかな?」
「それは……あれだ……あれ……」
男が言いよどむ。
俺はさっきから言葉に力を乗せている。
この言霊の強制力に抗うのは、一般人には難しい。
流れで誘導してるんだから、なおさらだ。
現世でもコレが使えたら便利なんだが、残念ながら隠世だけで使える能力だ。
チンピラが言葉に詰まったのは、答えようとしたのに、何らかの障害が発生したからだろう。
どうやら防御咒が掛かっている。
ということは、やはりあれは意図的な襲撃だったということになる。
「さあ、誰に言われたんだい? 教えてくれないか?」
「俺は……ただ……」
「――ただそうしろと、言われただけ……だろ? それは……どこの? ……誰にだ?」
男たちは、急にゼイゼイと苦しそうに、肩で息をし始めた。
口からはダラダラとよだれが落ちるに任せている。
かっと見開いた目からは、滂沱の涙が溢れ落ち、眼球の血管は浮き出てブチ切れそうな勢いだ。
かなりつらいだろうが、まあいい気味である。
ヤドゥルはそれを静かに見つめている。
何を思っているのやら――およそロクでもないことであるのは間違いない。
「さあ、答えて……楽になるんだ……。どんな……奴だった?」
「お、俺は知らねえ……こいつが受けた話なんや」
クズ二男がようやく答えてくれた。
「答えろ……どんな…奴だった?」
クズ一男を睨みつける。
「それは……ふわわわわわわ……」
さっきまで居丈高に俺の胸ぐらを掴んでいた男が、びっしょり冷や汗をかいて震えだす。
せっかく饒舌になっていたのに、先に精神が壊れそうだ。




