7. スマホのトレジャー
令和6年9月10日公開
― 前回のあらすじ ―
巨大ガマ、プリンス・クロウリーを倒し、レベルアップ
さて、このまま探索を続けるのか?
俺自身もそうだが、これまでの戦いでダメージを食ったシンがいる。
みんな召喚して、一気に回復させることにした。
蟇蛙のプリンス・クロウリー、濡れネズミのオイリー・ジェリー、丸猫狗のスネコスリ、ミントスライムのべとべとさん。俺のフォー・シンズが、勢揃いだ。
何か召喚するだけで、どっと疲労したんだが、召喚ってMPみたいな精神的な魔力を使うだけじゃなかったのか?
なんか、すっげースタミナ削れてる気がする。
夢の記憶を辿るが、細かいところを思い出せない。
あとでヤドゥルに確認しよう。
それにしても、初めての俺のシンたちだ。
不気味な奴が多いが、揃って神妙に控えていると、ちょっと可愛い。
「そうだ、これって撮影とかできないかな?」
スマホを取りだしたのだが、それはまったく不思議な別のモノに変わっていた。
外見は革張りの手帳のようであり、ページをめくると、そこには不思議な映像が動いていた。さらに続くページにも別の画像があった。
誰かの目線で撮られた日常動画という感じで、しかもそれは鮮明な画像ではなく、妙に歪んだり、一部強くコントラストが強調されたり、逆にその多くはぼやけていたりだ。
まれに鮮明過ぎてギラギラして燃えるようだったりする画像もある。
その風景を見ている人の、主観で加工された映像――なんじゃないかと思った。
これはけっこうハマる。見ているときりがない。
もとはスマホなのだから、他に役に立つアプリみたいなものは、入ってないだろうか。
シンの情報とか、見られるアプリなんてないかな……。
ページをめくると、シンたちの写真というか、動画が並んだページを見つけた。
シンはそれぞれ今の動きが、そのままページの中で再現されているのだ。
(ほお、ここからステイタス画面とかに移動できるといいな)
そう思ってスネコスリの絵を見ながらページをめくると、その通りになった。
「これって便利だな………」
スネコスリの能力や性格が、ちゃんと書かれている。
[国津神族の下魔。岡山県に伝わる犬に似た妖怪とされる。人に懐き、戦いを好まない。人の愛情に応える]
術式の項目には【ミナイブキ】というのがあり、タッチすると、[チーム全体のEPをやや回復させる]と表示された。
俺がやられた【アシヒダルー】は、予想どおり敏捷性に対するデバフだ。
「ヤドゥル、EPって体力みたいなもんだよな? 正確にはなんだっけ?」
「エーテル・パワーですん。主さまやシンの生命力であり、形を為すための力ですの」
「そう、それそれ」
このノートは相馬吾朗として知っていたことを、表現しているのだろうか?
それとも何らかの情報ソースにアクセスしているのか?
たぶん後者だろう。原理は分からないが、これは便利だ。
ステイタス画面にもEPのゲージがあるが、どのシンも少ない……が、みな一律マックス値の半分である。
痛い一撃を食らった上に、プリンスに食われたジェリーは、瀕死でもいいはずなのに、しっかり半分まで回復しているのだ。
これは何らかのルールがあるに違いない。
「よし、スネコスリ、ミナイブキだ」
「すりすり、マかセルすりー。
はイ、ミんな息をスうっと吸ってー……止メてー……さあ、フぅっと吐イてーー
皆 息 吹 ーー!」
地面から明るい緑色の気が立ち昇り、シンたちのEPが回復していく。
俺も回復している感触だ。しかし、まだまだ充分ではない。
その代わりスネコスリのAPゲージというのが少し削れた。
「術式を使うと何が消費されるんだっけ?」
「アストラル・パワーですん」
そうだった。
夢の記憶は映像なので文字があまりない。
いくらかは思い出せるが、言葉を探す検索性が悪いのだ。
映像を検索するために、適した言葉を思い出すのが面倒だ。
逆に言葉を思い出せれば、検索性がぐっと上がるだろう。
シンが臣と書くというのも、映像で「臣」の字が脳内で見えたから分かったのだ。
そういや、俺のステイタスも見られるのか?
そう考えながらページをめくると、それがすぐに見つかった。
「これって……」
俺の想念みたいなものと、シンクロしてるんじゃないか?
現世ではスマホは情報端末だ。
通信以外にもネットにつなげていろいろ検索できる。
俺がそう認識しているアイテムが、隠世では認識を発展させた魔法のような機能になる。
その仕組みは判らないが、とにかく俺が見たいと思う情報が、ここには表示されるようだ。
「現世の技術じゃ再現できないだろうな」
俺のEPゲージの表示も思ったより削れている。【ミナイブキ】で回復してこの程度とは、下手すると、もう少しで死んでた?
こんなにダメージを喰った覚えはないんだけど、疲労感は確かにある。
もしかすると……。
「ヤドゥル、もしかして封魔したてのシンってのは、エーテル低いまま?」
「はい、そうですん」
「さらにだよ。もしかして、倒したときはEPゼロなんだから、その分の補填ってもしかして俺の?」
「はい、召喚に足りないシンのエーテルは、主さまから供給されますの」
「それ先に教えろよ」
「主さま……さっき思い出されたと………」
そう言って拗ねていじけた姿も、けっこうカワイイぞヤドゥル。だがしかし、俺のストライクゾーンからは遠く離れているのだ。
「そうか、すまんな。細かいことは、すぐには思い出せないんだよ」
「じゃあ、ちゃんと説明しますですの」
「おう、頼んだ」
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
お気に入り、ブックマーク、評価、SNSでの拡散など、できましたらお願いいたします!
また、ご感想をいただけると励みにもなります。
※ ※ ※ ※
ヤドゥル先生から隠世のことを習おう!
次回8話は、令和6年9月11日公開予定!




