6. プリンス・クロウリーの見る夢
令和6年9月9日公開
― 前回のあらすじ ―
巨大ガマにダメージを与えるが
毒液を少し浴びてシャツもボロボロ
さて、どう攻略するか?
「ガマの毒ですん」
「そうだな、ヤドゥル」
そういうのがあるって知ってるなら、最初から言ってくれ。
しかし、こいつはやっかいだ。
側面や背面から倒すには、何度もぶっ叩かなくちゃならない。
しかし、いつ毒を噴射されるか判らない。
今後の課題として、一撃必殺スキルの獲得が必須だ。
ヤドゥルの術式障壁越しにやる手もあるが、大量に噴射されたらヤバそうだ。
「こうなりゃ、ガチンコ勝負だぜ!」
さっきも似たようなことを言った気がするが、もう済んだことは気にすまい。
俺は巨大蟇蛙の正面に廻り、槍を構えた。
「主さま危ないですん」
「ヤツの口が動いたら、俺に笹の葉飛ばしてくれ!」
「上手くいくか判らないですの」
「いつもちゃんとやれてるじゃないか。ダイジョブだヤドゥル、お前は出来る子だ」
ガマの口がむにっと開いた。
「今だヤドゥル!」
舌がビュッと飛び出す。
笹の葉が空を切る。
俺はガマに向かってダッシュだ。
目前に魔法障壁が生じる。
ドン!
とイイ音を立てて、舌先はそれにぶつかって止まる。
しかし貼り付くことはなく、ずるずると落ちていく。
俺が前に出ると、魔法障壁も合わせて前に動くので、壁に押されて舌がぐにゃりと曲がりながら地面に落ちる。
俺はそのまま全力で突進!
ガマは舌を戻そうと、両手まで伸ばして器用に引っ張るが、地面に粘着して素早く回収できない。
そのわずかな隙に、俺は開いた口腔に、突撃の勢いつけて槍の穂先を突き刺した。
エーテルの血飛沫が、口の外にまで飛び散って、透明な八角形の魔法の盾を濡らした。
俺は構わず穂先で、ぐりぐりかき回してやった。
「うわっ!」
「主さま!」
次の瞬間、俺は吹っ飛ばされていた。
考えられないようなことが起きたのだ。
巨大蟇蛙は、腹の中身を胃袋ごとぶちまけたのだ。
槍もその胃袋に刺さっていたのだが、その勢いで抜けて、俺も一緒にすっ飛ばされたのだった。
ガマの口から、巨大なピンクの風船のようなものが溢れ出している、という感じだろうか。これが膨らむ勢いで弾かれたようだ。
「宿得は、こんな攻撃なんて知らないですの」
「そうか、お前にも知らないことがあって安心したよ」
「主さま、あれ! 油鼠ですん」
オイリー・ジェリーもまた外に放り出された。
脚がピクピクしている。嬉しいことに、まだ生きているようだ。
「ジェリー、戻れ!」
間に合った。
その体がすっと消えて還っていく。
一方ガマは、自分の胃を舌ごと手で掻き集めるようにして、ほぼ元に戻しきるところだ。
まだ間に合う。俺は迷わず跳び込んでいった。
胃といわず、口と言わず、とにかく突きまくった。
ガマの毒が吹き上げられるが、魔法障壁で凌ぐ。
多少掛かってダメージを受けるが仕方ない。
しだいにガマの動きが弱まってくる。
その目の力が弱くなってきた。
「今ですん!」
「封魔!」
トドメの一撃に封魔の力を槍に込めて、ズンっと深く突き刺した。
穂先は内側の皮を破り、急所を破壊した。
紫と暗いオレンジ色の炎がわき上がった。
ガマの存在は光の塊に収束して、槍に吸収されていった。
「ボクは夢見るガマ、プリンス・クロウリー、這いずりの王子さ。いつか姫が口づけをくれる。そしたらボクは元の姿に戻れるのさ、ゲ、ゲ、ゲ、ゲ」
やっぱり姫待ちかよ。
キモコワスキーな女性使徒が、試してみたりするのだろうか?
倒したあと、レベルアップ的なものに伴う、例の不快感があった。
これには、なかなか慣れない。 やっぱりレベルアップは、気持ち良い感じに体験しないと、それらしくないんだが、仕様が間違ってないだろうか?
そんでもって俺サマ、実際のトコ、どんくらい強くなっているんだろうか?
シャツはボロボロになってしまい、まともに着られたもんじゃないが、現世に戻ったとき困る。毒液が蒸散したあと、仕方なく身につけることにした。
これは、何か事故かなんかに巻き込まれた体だな。
シャツは現世に帰ったら、もとに戻ってるとか、都合のいいことには……ならないだろうな。
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プリンス・クロウリーをゲット!
しかし、シンも自身もけっこうダメージありだ。
次回7話は、令和6年9月10日公開予定!




