表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/244

14. 赤竜大暴れ

令和6年8月28日公開


― 前回のあらすじ ―

  隠世の回廊と那美と睦樹が突き進んだ先

  大きなホールに待ち受けていたのはレッドドラゴン

  そのファイアブレスが放たれた!

 しかし、竜の炎は俺達には届かなかった。


 三羽の鳥女たちが、翼を激しく打って、猛烈な風を巻き起こしていた。

 同時に女神瀬織津姫の周囲に舞うリボンから水が吹き出し、水結界を作って味方を熱から守る。


 炎の勢いは俺達に届く前にかき乱され、水の障壁で無効化された。

 紅蓮の流れは大きく広がって集中せずに散るか、押し戻されてドラゴン自身の足元を焼いた。


 その炎がまだ消えやらぬ内に、那美は床を蹴って大きく跳躍しながら、何もない空間に刀を一閃。

 すると彼女はドラゴンの頭部の目の前に、瞬時に出現した。


 空間が切り取られ、その間を一瞬にして詰める那美の得意技、時空斬だ。


 大きく開かれた(あぎと)が閉じる寸前に、鋭く冷たい鋼が口の中を薙いでいた。


「おしゃべりは止めだ!」


 竜の舌がドサリと音を立てて床に落ちたのは、那美がそう宣言しながら、痛烈な二の太刀を左側頭部に与えた後だった。


「ア ギ ャ ア ア ア ア アアアズズズズーーーー!!」


 のけぞる竜の口腔で、激しく炎が沸き起こる。

 その熱は吐き出されず、その大きな頭部を包んで燃え盛った。


 巨体が苦しみもがいて、デタラメに暴れだす。


 壁に力任せにぶち当たり、不活性エーテルの建造物を破壊した。

 ガラガラと崩れ落ちる瓦礫は、一部は蒸散するものの、ほとんどは塊のまま周囲を襲った。


 シンも俺も、それを避けるので精一杯だが、那美は瓦礫を避けつつ、竜の苦し紛れのランダムな動きさえも読んでいた。

 華麗に避けながら、着実に刃を浴びせていく。


 壁の崩落が落ち着くと、俺は思い切って踏み込み、槍の一撃を突き上げる。

 竜の喉元に深々と刺し込むと、ずいっと引き抜いた。

 血と炎が混ざって、槍傷から外にシュウシュウと溢れ出てくる。


「心臓を!」


 那美が叫ぶ。


「任せろ!」


 しかし、ドラゴンはさらに猛烈に暴れだした。

 不用意に近づくと、鉤爪か尾にやられそうだ。


 右手から半蛇の鎧武者が、尾を防ぎつつ斬りかかる。

 瀬織津姫は術式により、味方全体の防御力を上げてくれた。


 鳥女たちは、竜の鼻面をかすめ飛んで、注意を逸らす。

 那美は一撃離脱戦法でダメージを与えつつ、竜の攻撃目標を自分に引き戻した。


 俺は狙いやすい大きな脚を、何度か突き刺し機会を窺うものの、なかなか心臓を捉えられない。


 ならば動きを止めるまで。


「雷撃を!」


 俺がシンに指示すると、後方から輝く雷球が飛んで敵に炸裂し、紫の電光がその鱗を彩る。

 電気ショックでドラゴンが仰け反り、一瞬だが動きが鈍化した。


「喰らえ!」


 魔槍屠竜(まそうとりゅう)蜻蛉切(とんぼぎり)の穂先は、ドラゴンの心臓を深々と射貫き、爆発のような血飛沫を辺りに撒き散らした。


「やったか!」


「下がって!」


 俺は槍を竜の心臓に残したまま、バックステップで後ろに退く。

 一瞬前まで居たところを、ドラゴンの前足が薙ぎ払った。


「ふぅ、ヤバイヤバイ」


 その間も那美の一撃離脱攻撃は、休むこと無く続けられている。

 星気(アストラル)化が追いつかず、ドラゴンの足元には血の海が出来ている。

 足を取られないようにしないと危ない。


 それに刺さったままの槍も、取り戻さなくては……と、思うそばから那美が着地で滑った!


 俺は即ダッシュ!


 立ち上がろうとする那美の上に、ドラゴンの前足が振り下ろされる。

 迷わず那美にタックル、血の海の上をいっしょに滑った。


 ゴチュッ!


 と、すぐ横ででかい音がして、その激しい反動で床から跳ね上がる。俺達はそのまま転がりながら距離をとった。


 間一髪でセーフだ!


「ありがとう!」

 那美が刀を突いて、立ち上がりながら、こちらにも手を伸ばす。

 ふつう逆だと思うんだが、まあいいか。


 血ですべるので、しっかり彼女の手を握り返し、シンに命じてから立ち上がる。


「ケライノー! 凍結だ!」

「ヒィーイ!!」


 凍結術式の蒼い光が、ドラゴンを捉える。

 大したダメージは入らないが、血の池が凍り、足と尾の自由を一時的に奪った。


 俺はその隙に槍に取り付き、滑る足元に気をつけながら引き抜こうとしたが、筋肉が締め付けているのか、なかなか抜けない。


 捻じりながら気を叩き込み、思い切り引き抜く。

 そこを、心臓への追加ダメージを嫌ったドラゴンの裏拳に、槍もとろも弾き飛ばされた。


 あまり力の入れられない動きだったので、ダメージも深刻ではないが痛いっちゃ痛い。

 立ち上がるところに、胸から溢れ出る血が追いかけてきて、頭からそれを浴びてしまう。


(主さま、真っ赤っ赤、だいじょぶ?)


「旦那、無茶し過ぎですわ」


 毛むくじゃらの赤っぽい亞人が、丸っこい蛇を背負っている。

 遅れてやってきたシンの、山童(やまわろ)野槌(のづち)だ。


 見た目が派手に重症っぽいんで、めちゃ心配してくれてる風。

 すかさず彼女が回復術式を掛けてくれ、痛みも引いてゆくので助かる。

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

お気に入り、ブックマーク、評価、SNSでの拡散など、できましたらお願いいたします!

また、ご感想をいただけると励みにもなります。


 ※ ※ ※ ※


隠世でのレッド・ドラゴンとの戦いも大詰め

見事打ち倒せるのか?


15話は、令和6年8月29日公開予定!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ