9.死闘2
令和6年8月23日公開
― 前回のあらすじ ―
高円寺の隠世で、魔人と対決
音声攻撃の大ダメージを受けるものの
睦樹は反撃で腹部を切り裂いた
しかし、魔人バイニンは、まるで怯まない!
逆に自分に置き換えると、もし痛覚が鈍いなら、さっき喰らった一撃はけっこうヤバかったのかも知れない。
かなり痛かったのだから、実は相当なダメージが入っているとも考えられる。
自分の体でこれ以上確かめたくはないけど、きちんと知っておきたい情報だ。
しかし、相手は待ってはくれない。
「おめぇ、ナイフとか卑怯じゃんよぉ……んじゃオレも、マジでいかせてもらうかんよぉ」
男がさらに奇妙なポーズを取った。そう、ジョジョ立ちのようなアレだ。
「チャリイイィィィィィィーー!」
(そこは「ウリィィィィィィ」とかだろうよ!)と、心の中でツッコミ入れたところに、鋭い足払いの蹴りが飛んできた。
しかも、足からはオレンジ色の炎が上がっている。
(何だよそれは!)
俺はとっさに後方ジャンプ。しかし続いて炎の蹴りは上に跳んできた。
小刀を振りかざして払おうとする。
「あっ!」
超まずい!
燃えるサンダルに、小刀がはじき飛ばされてしまった。
さらに炎に彩られたキックとパンチが、容赦なく連続で来る。
それを肘で受けながら、じりじり押されていくばかり。
ズン、ズン、と、防御していても軽微ながら、ダメージが容赦なく入ってくるのが分かる。
(このままじゃやられる!)
どうにかしなきゃと焦ってたところに、頭を掠める大きな回し蹴り。
ひやりとして胃のあたりが冷たくなる。
さらにもう一撃上に来て、上体を傾け躱した直後、低くまっすぐに足が飛んできた。
ドン! っと蹴りが、思いっきり腹にハマる。
俺はまたしても、勢い良く弾き飛ばされた。
バーン!
背中で商店街のシャッターにぶち当たり、その場にずるずるとヘタリ込んだ。
現世なら、さっきのグラタン全部吐いてるところだが、幸いそうはならなかった。
確かに隠世では痛みが鈍いし、身体もタフなようだ。
てことは、やっぱりさっき声でぶっ飛ばされたときは、かなりのダメージだったってことだろう。
そしてこの一撃も………。
俺はよろよろと立ち上がった。
まずい、やっぱりだいぶキテる。足が踏ん張れない。
くそ、頑張れムッキー!
再びヤツは両腕を翼のように拡げ、片足を上げるポーズ。
これはまたあの念動波の声だ。
マジで超ヤバい。俺、終わったかも――!!
声より先に、笹の葉が飛んで来る。
「ク エ ェ ェ エ エ エ エ エ エ エ ――――!!」
ヤドゥルの魔法障壁の青い光はしかし、念波のボイスを受けて、ガラスのようにカシャーンと音を立てて砕け散った。
そして俺の背後では店のシャッターが轟音を上げ、ひしゃげる。
俺も衝撃を受けたものの、ひっくり返るほどじゃなかった。
魔法障壁が力を削いだのだ。だが万能というわけじゃなく、強い攻撃は越えてくるってことか。
すると今度は、ジャンキーのドレッドヘアが、いきなり踵を返して駅の方向にダッシュして行った。
これでもう充分と、走り去ってくれたワケじゃないんだろう。
なにか大技でも仕掛けてくるのだろうか、嫌な予感がする。
「主さまこれを!」
その隙にヤドゥルが、小刀を回転させながら道の上を滑らせてくる。
俺はそれを足で踏んで止め、拾い上げた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
お気に入り、ブックマーク、評価、SNSでの拡散など、できましたらお願いいたします!
また、ご感想をいただけると励みにもなります。
※ ※ ※ ※
ハーブ魔人の大技が来る!
次回も魔人との死闘の決着!!
10話は、令和6年8月24日公開予定!




