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4.妄想は暴走する

令和6年8月18日公開


隠世の記憶を半覚醒の夢でたどる主人公。

神族連合の会議で発言した水生那美に、他の神族使徒たちが反応する。

さらに、夢の記憶は加速する……

 那美の宣言に、一瞬気色ばんだ他神族の使徒たちが、すぐに敵愾心を燃やして彼女を睨みつける。

 そして今度は打って変わって、自分こそはと先鋒を求めて争い始める。


 そう、これでいいんだ。

 その後報奨を巡っての軽い応酬があったが、最も危険度の高い先鋒が一番。二番はとどめを刺した者が、重視されることで合意をみた。


 それらはすべて現場で競われることとなり、一番最初に目標である妄鬼に、有効なダメージを与えた者が、先鋒と認められる。


 心定まらぬ使徒たちを叱咤する那美の強い声と、その凛とした眼差しに、俺は惚れ惚れして見入ってしまっていた。


 那美は俺の熱い視線に気づいて振り向くと、優しい笑みを返してくる。

 まったく、マジで女神じゃないか。


 その場には、他にも目を惹く美少女たちがいた。

 さっきまで険悪だった、悪魔族と仙族の使徒たちだ。

 年ごろの少女らしく、もう仲直りして笑い合っている。


 人を魅了するような蠱惑的な眼差し。

 さっき那美を煽った悪魔族の娘の小さな舌が、紅を差した上唇を舐める。


「国津の第三使徒ってどんなかと思ったら、意外と地味なのかよ?」


 真紅の結い上げた髪を揺らし、ちょっと顎をしゃくってこちらに流し目。

 俺を挑発する気なのか。


 傍らには、髪をふたつ団子にまとめて頭に載せた、人懐っこそうな大きな目を、キラキラさせた少女がいる。

 幼い感じなのに、赤毛の娘に比べてかなり胸がでかい。


「ウチ、よその神族初めてデスよ。イロイロ教えてくたさいなのデス~」


 対照的なふたりが近づいてきて、悪魔族の少女が俺の体に軽く触れた。


「ふ~ん、けっこういいカラダしてるって?」


「イイ体、触るデスよ? こうか?」


 最初は肩、そして胸から、引き締まった腹筋を撫で回してケタケタ笑っている。

 そして吸い付くような手の感触が、さらにその下へと滑る……


「ふ~ん、硬いのは腹筋だけじゃないんだぁ」


「イイ体、スゴく硬いデスよ~」


 イヤイヤイヤ、その手の動きはイカンぞ! お前らどこ触ってるんだ!


 少女たちは体をピッタリ寄せ、限界まで硬化した秘蔵の黄金銃を取り出すと、柔らかなその指で引き金に指をかけた……って違うだろ~~~!!!


 だめだ!


 夢の記憶と俺のエロ妄想とが、途中からごっちゃになっちまったようだ。

 これはこれでオイシイんだが、記憶を確かめるにはちとまずい。


 並外れた妄想力が、こんなところで仇になるとは。

 いや、エロい俺人格に問題ありなのか?


 夢的想い出と妄想との一体化を防ぐ、何か有効な手立てがないだろうか。

 ここは僅かでも既視感があるかないかで、記憶か妄想かを区別するしかないのだろう。


 エロ侵蝕注意を心に言い聞かせて、もう一度イメージを動かしていく。


 すると、ふたりの少女が俺をからかったのは、どうやら事実のようだ。

 そう、彼女らは俺に馴れ馴れしく擦り寄ってきて、両肩に体重を掛けてきた。

 腹筋も触られてる。

 こんなところを那美に見られたら……いや、見られていた!


 ああ、那美の冷たい視線を感じる。

 だがしかし、口元は笑いを堪えているのが見えた。


 ふう、良かった。

 俺の妄想だったなら、ここでラブコメのお決まりパターンが展開するはずだ。


 彼女が真っ赤になって割り込んできて、きっと少女らを蹴散らしに来るところだろう。

 しかし、映像では彼女は離れたところで笑っている。


 なのでこれは、ちゃんとした夢の記憶に違いない。


 忘れないように、セーブ機能とか付いているといいんだが……。


 他にも幾つかの映像が蘇った。

 夢の記憶――隠世の想い出――では、いつでも傍らに水生那美が居た。


 良かった。やはり俺は、ちゃんとした国津神の使徒だったのだ。

 そして那美は強くて優しい、俺の大事な人だった。


 ちっとばかり二位が出しゃばってきて邪魔するが、隠世の那美はいつでも俺を見ていてくれた。


 いったい今は、何処で何をしているのだろう。

 彼女を想うと、だんだん心配になってくる。


 那美はあのアーケードから、本当に外に出られたのだろうか?

 もしかして何かまだ問題があって、独り取り残されているとしたら……?


 以前は鳥居の結界により、強力な異形――超常の者と呼ばれるようだ――も、ほとんど出現しなかったのかも知れない。

 俺が注連縄をバッサリ切り落としたせいで出入りが自由になった隠世に、そいつらが侵入しないとも限らないじゃないか。


 那美は装備もほとんど失っていたんだ。

 いくら凄腕の国津神第一使徒でも、危険が無いわけない。


 そんな思いに捉えられると、俺は居ても立っても居られなくなってきた。

 悪い妄想が浮かんでは、それを振り払う。


 ついには不安が昂じてきて、夢のイメージはすうっと消えてしまった。


 俺はオーディオの明かりだけが灯る、暗い部屋に残された。

 ハンモックのCDは、まだ音を奏でている。


隠世幻想から戻ってしまった主人公。

さあ、次はどうする?


次回5話は、令和6年8月19日公開予定!

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