表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は徹底して悪女を演じる~おーほっほっ!は卒業したい!~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/50

悪役令嬢には兄がいる

「え、お兄様が遊学から戻られるのですか?」


「そうだ。さっき、ロードリッヒから手紙が来た」


「三日後に戻るそうよ。その翌日に丁度、宮殿で舞踏会があるでしょう。ロードリッヒと共に顔を出すといいわ」


 父親と母親からそう言われた私は「はぁ」と答えそうになり、慌てて「分かりましたわ!」と公爵令嬢らしく返事をする。


 そうだった。悪役令嬢エリノアには、兄がいた。

 ただ、長年屋敷を空けているから、すっかりその存在を忘れている。兄も兄で、文は両親宛に送って来るものの、屋敷には全く寄り付かないから……。筆不精で割と自由人。記憶を探ると、確かに兄の記憶はあるものの、自分が幼くてあまり覚えていないことに加え、兄とあまり一緒に過ごしていないことに気づく。


 というのも兄は子供の頃から、次期公爵家当主として、みっちり教育を受けていた。それはまるで王太子教育並みに過酷で、食事さえ、マナーと社交のレッスンになっていたのだ。よって家族との食事の席にさえ、兄が欠席することも多かった。


 この世界での兄の記憶は少ない。ならば前世でプレイしていたゲームでどうだったのか。思い出そうとするが……。


 ゲームの人物紹介欄で、兄に関する文字情報は、確かにあったと思う。

 ただし、それは兄の個別情報としてではなく、エリノアの家族構成の説明欄に、記載されていたはずだ。

 つまり王妃と同じぐらい、兄に関する情報は、ゲームの方でもなかった。

 だって確か「兄が一人いる。現在は遊学中」としか記載がなかったような。


 その兄が戻って来ると。


 文字情報だけの兄が登場することに、ここがゲームの世界であり、リアルな世界でもあると、実感することになる。


 同時に。


 悪役令嬢の兄が帰国するなんて、ヒロインが攻略対象を攻略中の時には、起きない出来事なのだ。そう考えると確かに、ヒロインはゲースを手に入れ、エンディング(ゲームクリア)を迎えた。つまりこの世界は、紛れもなくハッピーエンド後の世界なのだ。


 その割に私には「おーほっほっ」がいまだ求められているようなのだけど……。


 とにもかくにも、ここ数日は、父親の手がける女性向け乗馬服作りを手伝っていたので、外出もろくにしていなかった。ゲースの誕生を祝う舞踏会での、婚約解消劇の噂も、そろそろひと段落しただろう。何せ最近、外務大臣と伯爵夫人の不倫が発覚した。社交界では、もっぱらそちらの話で盛り上がっているようなのだから。


 宮殿の舞踏会に顔を出すのには、いいタイミングかもしれない。しかも兄のエスコートで行くなら「あら、もう次の男を見つけたの?」なんて噂も立てられないだろう。最適なリハビリになるわね。


 久々に御用聞きの商人を屋敷に呼びつけ、舞踏会で身に着ける宝飾品や小物を入手した。そこで女性用乗馬服の装飾品について、考える。帽子に加え、首には男性とは違い、オシャレなスカーフをつけるといいのでは? しかも乗馬専用と謳えば、普段使いのスカーフとは別に、みんな乗馬専用スカーフを買ってくれる。貴族の皆さまは、流行と風潮に弱いから。


 よし、いくつか乗馬専用のサンプルになりそうなスカーフも、手に入れておこう。


 そんなことをしているうちに、兄が帰還する日になる。


 朝から屋敷が慌ただしい。

 庭の手入れは勿論、屋敷の掃除、銀食器を磨く……などなど使用人は大忙し。

 父親はワインセラーで極上の一本を選び、母親は市場で新鮮な食材を手に入れるよう、指示を出す。


 こうしてエントランスホールで両親と共に、兄の到着を待つことになった。

 兄を出迎え、そのまま昼食になる。

 父親はダークブラウンのセットアップ、母親はマンダリンオレンジの明るい色合いのドレス。私はメイドから「これですよね、お嬢様?」と着せられた、ショッキングピンクのドレス。蛍光ピンクみたいにチカチカするこんなドレス、前世の私だったら絶対に着ないのに! でもなんだかんだでエリノアはスタイルがいいので、似合ってしまう。


「ロードリッヒ様、ご帰還です」


 扉が使用人の手で開けられ、そこに登場したとんでもないハンサムに、目が釘付けになる。


 兄は寄宿学校を卒業後、そのまま遊学に向かった。結果、通算九年間家をあけ、現在二十一歳。

 その存在を思い出し、屋敷に飾られた絵で、兄の姿を確認していた。でもその姿は十一歳の時のもの。頬もふっくらし、手足もむっちりし、身長だってそこまで高くなかった。


 それが!


 もう別人ではないですか!


 スラリと長身で、シルバーブロンドの長い髪は、左側で束ねられている。その顔の輪郭は、かつてと違いシュッとしている。眉はキリッとして、睫毛は長く、瞳は深みのある藤色。鼻も高く、唇と頬の血色もいい。


 着ている葡萄色の上衣とズボン。上衣の下の淡いピンク色のシャツに濃紺のタイ、バニラ色のベストと、色彩のコーディネートも完璧。


 兄は長らく見ない間に、青虫から見事な蝶へと変貌を遂げていた。


「父上、母上、そしてエリノア、ただいま戻りました」

「うむ。よく帰って来た、ロードリッヒ」

「ロードリッヒ、おかえりなさい」

「お、おかえりなさいませ、お兄様!」


 両親と共に、兄が私を怪訝そうな顔で見る。

 え、何、今の、エリノアではない!?

 違う、ダメなの!?


「まあ、お兄様ったら、割といい男になって帰ってきましたわね。そのお姿でしたら、私のことをエスコートしてもよろしくてよ? おーほっほっ!」


「ああ、驚いたよ、エリノア。僕が不在の九年間で、人格が変わったのかと思った。そうか、僕はエリノアをエスコートすることを、認められたのか。光栄だよ。宮殿の舞踏会の件は、父上から聞いている。ちゃんと連れて行くから、安心するといい」


 兄はぽすっと私の頭に手をのせ、よしよしという感じで撫でてくれる。

 父親は悪役令嬢エリノアの態度には、基本的に「けしからん!」と怒り気味。でも兄は違う。


 な、なんて包容力があるのだろう!


 悪役令嬢の兄なのに。兄がこんなに立派でできた人間に成長していたとは。

 あ、あれ? でもそんな兄にエスコートされ、舞踏会に行っても大丈夫、私……?

お読みいただき、ありがとうございます!

続きは今晩、23時までに『悪役令嬢は役目を果たす』を公開します。

ご無理なく、ご都合のあうタイミングでご覧くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●9/2発売決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ