表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は徹底して悪女を演じる~おーほっほっ!は卒業したい!~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【特別編・SS】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/50

決して実らない恋の味(1)

「おい、カルヴィン、出発だぞ」


 部屋に入って来たロードリッヒは、その長いシルバーブロンドの髪を左側で束ね、白シャツの襟を立て、シルクサテンのモーブ色のベストとグレーのズボンで、その長身の体を包み込んでいる。


 美少女になりそうな兆しを一年次には見せていたが、卒業となる今は、立派な貴公子に成長していた。三年前はふっくらしていた顔のラインもシュッとし、眉はキリッとして、睫毛は長い。鼻も高く、唇と頬の血色もすこぶるよかった。深みのある藤色の瞳は、この界隈の女学生から「紫の貴公子様」というニックネームの由来となっている。


 一方の自分は。


 もはやエリノア嬢に指摘された“棒に吊るされ、丸焼きされている子ブタさん”などではなくなっている。剣と槍の腕は、全国の騎士科の学生の中では一番をキープ。弓の腕も相応にあげている。馬術では大会で二度優勝。そして騎士科の生徒なら誰もが憧れる王立ブルー騎士団には、推薦で入団が決まっている。


 ただし。


 二年間の猶予をもらっていた。


 それは。


 この国の筆頭公爵家の次期当主として、遊学するというロードリッヒに、付き合うことにしたからだ。


 ロードリッヒは普通科ながら、運動神経も良く、当然だが勉強はできた。総代として卒業式でも挨拶をしている。その彼から「三年間。この塀の中でひたすら学業に打ち込んできた。だが世界は広い。外の世界をきちんと見聞しないと、人として完成しないと思う。だから僕は世界を見に行く。カルヴィン、君はどうする?」と問われた時。正直、衝撃を受けた。


 自分の目的は騎士になることであり、あの王立ブルー騎士団への入団も決まっている。後は学校を卒業し、王都へ戻り、騎士団で騎士として生きて行く――。そこまでの展望しかできていなかった。だが、ロードリッヒは違う。この国を飛び出し、世界を見たいと考えているなんて……。


 本当はもっと違う未来も描いていた。


 立派な騎士となり、そしてエリノア嬢に自分の気持ちを伝えるつもりだった。一年ほどの交際を経て、プロポーズをして婚約。いろいろ準備をして一年後には式を挙げる。その頃までにはなんとか王立ブルー騎士団で、上級指揮官補佐ぐらいまで出世できていれば……そんな風に考えた時期もある。


 でもその夢は、あまりにも早い段階で砕けている。


 あとは……何かを吹っ切るように。忘れるように。


 ただただ訓練に励んだ。その結果で今があった。


 騎士科の同期からは羨望と嫉妬を受けるぐらい、騎士としては順風満帆。ただ、先の未来は空虚だ。寄宿制の学校に三年間いたため、令嬢との接点はゼロに近い。勿論、年齢的に社交界デビューのため、舞踏会へ足を運んだ。そこで多くの令嬢とダンスをしたり、会話もしたりした。


 だが、物足りなかった。


 令嬢達は皆、美しい砂糖菓子のようだ。


 高級なドレスに身を包み、キラキラと輝き、令息の心を溶かす笑みを浮かべる。その唇を味わえば、さぞかし甘いのだろうが……。


 手応えがない。


 自分のことを褒め、相槌を打ち、微笑む。


 だが自らの考えや思いを、熱く言葉にすることはない。意味深な視線を投げかけ、「察してくださる?」とアピールするばかり。対するエリノア嬢は、ズバズバ物怖じをせず、自分の考えを口にしていた。


 諦めないといけない。

 彼女は……この国の第三王子の婚約者なのだから。そう自分に言い聞かせて三年間。身体的に成長しても、自分の精神はまだまだ未熟なままだ。


 自分の心の成長のためにも。

 ロードリッヒと共に、自分も世界を見てみるのはどうだろうか?


 幸いなことにこの国では、若者のモラトリアム期間を認めてくれている。騎士になると言っても、貴族の令息も多く、家の事情が加味された。つまり、即時入団も理由によって免除される。特に学校を卒業した直後の二年間は。さらなる技術の習得など、それらしい理由を並べれば、入団を遅らせることができる。


 表向きは……そうだな。


 他国の軍事力をこの目で確かめ、優れた武術や技術力を調査。防衛拠点や要塞を視察するため、二年間の遊学を申請したい……これでいけるだろう。


 そう考え、申請書とレポートを提出し、あっさり許可が下りた。


 そして今、卒業式は無事終わり、三年間お世話になった寄宿舎を出て、ロードリッヒと共に学校を出るところだった。


「カルヴィン様、ロードリッヒ様は既にエントランスへ下りています。向かわれてなくていいのですか?」


 三年間。そしてこの後の遊学にも同行する従者のシドが、自分のことを見上げた。少年だったシドも、この三年で成長したと思っていた。だがどうやら身長については、自分の方が縦に伸びていたようだ。同じぐらいの背丈だと思っていたが、目線を下げることになる。


「ああ、今、向かう。馬車に荷物は既に詰んであるんだな?」


「はい。御者には正門ではなく、裏門に向かうよう、言われた通りの指示も出してあります。……ですが、学外の女学生は皆、ロードリッヒ様とカルヴィン様が出てくるのを、今か今かと正門で待っているのに、よろしいのですか?」


 従者ではあるが、友のようなシドと並んで歩き出す。


「ロードリッヒが裏門から出ることを提案してきた。自分もそれでいいと思っている。女学生に興味はない」


 自分の回答を聞いたシドは、微妙な表情を浮かべている。


「……言っておくが、ここが男子校だったからと、変な想像はするよな。ロードリッヒも自分もただの学友だ」


「ええ、承知していますよ、カルヴィン様」


 なんだか含み笑いをするシドに辟易しながら考える。

 世界に目を向けたら、そこにエリノア嬢のような令嬢がいるのだろうか。


 ――「人間、何事も諦めたら、そこで終了ですわよ」


 一度しか会ったことがない親友の妹。

 そしてこの国の第三王子の婚約者。

 その彼女の言葉に励まされ、同時に。

 決して実らない恋の苦い味を、自分は何度も噛みしめ続ける――。

お読みいただき、ありがとうございます!


【お知らせ】

『ざまぁは後からついてくる

 ~悪役令嬢は失って断罪回避に成功する~』

https://ncode.syosetu.com/n3197io/


本作のSSを公開しています。

気になる読者様はページ下部のイラストリンクバナーから

遊びに来てくださいませヾ(≧▽≦)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●9/2発売決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ