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悪役令嬢は徹底して悪女を演じる~おーほっほっ!は卒業したい!~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【特別編・SS】

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彼の恋心(2)

「休みの日なのにすまないな。自分の外出に付き合わせて」


「構わないさ。おかげでピアノのレッスンをさぼるいい口実になった」


 馬車の中で、対面に座り、窓の外を見るロードリッヒは、やはり美少女のように見える。


 着ているセットアップもラベンダー色だから、なおのことそう見えてしまう。しかもこの姿でピアノも弾くというのだから……。


 ロードリッヒは文武両道であり、ピアノまで個人的に習っていた。学校が休みの日、外部からピアノ教師を招き、音楽室でピアノのレッスンをつけてもらっている。まったく。芸術センスまであげて、これで体も男らしく育ったら、ロードリッヒはとんでもない貴公子になりそうだ。


 しかもコール公爵家は、この国で五つしかない公爵家の筆頭なのだ。そしてその嫡男。


 今は男子校にいるが、舞踏会へ頻繁に顔を出すようになったら……ロードリッヒはきっとモテモテだろう。


「それでカルヴィン。どの店に行くか、決めているか」


「! いや、実は街へ出るのは、これが初めてで……」


「だろうな。君は休みの日もトレーニングをしていたから。いいだろう。僕が見つけた店に案内するよ」


 馬車がショッピングストリートと知られる、レスターロードに向かい、その入口付近で降りることになった。休日の晴天の午後。沢山の人でにぎわっている。


「こっちだ、カルヴィン」


 ロードリッヒに案内されるまま、通りを歩いて行くと、一軒の雑貨屋に辿り着いた。羽根ペンやインク、画材、ステッキや扇子なども売っている。


 中に入るとかなり広いし、三階まで店舗になっていた。


 カード売り場は二階にあり、そこでは既にホリデーシーズンを意識したカードも沢山売っている。ロードリッヒは、カード売り場の近くの楽譜売り場を見ていた。自分は棚に並ぶカードを手にとり、そのデザインを確かめる。


 エリノア嬢の印象は、やはりあの真紅のドレスだろう。


 そうなるとこの赤い薔薇のデザインのカードか……。


 いや、赤い薔薇に添えられるのは、愛の言葉が多い。そんな薔薇の花のカードを、いきなり贈るのは……。


 心臓がトクトクと高鳴っている。


 エリノア嬢の顔を思い出すと、なんだか落ち着かない。


 ――「何も始まっていないのに、はなから諦めたら、ダメではなくて? 人間、何事も諦めたら、そこで終了ですわよ」


 彼女が自分にくれた言葉は、今でもはっきり覚えている。紙に書きだし、毎朝眺めているからかもしれないが……。


 もっと鍛え、腕をあげ、一人の騎士として認められたら……。

 この赤い薔薇のカードで、エリノア嬢に……。


「カルヴィン、決まったか」「あうっ」


 不意打ち過ぎて、変な叫び声を出し、一枚のカードを棚から取り出していた。


「なんだ、クマのぬいぐるみが描かれたカード? 随分、子供っぽいな。エリノアは大人っぽいものを好むから、こっちにしておけ」


 カルヴィンに渡されたカードには、黒い台紙に紫の花と白い猫が描かれている。

 シンプルだが、シックで確かに大人っぽい。


「そうだな、これにするよ」


 カードを手にレジへ向かいかけ、たまたま通り過ぎた宝飾品コーナーで、一つの宝石が目についた。それは、手の平に乗る程のサイズのハート型のルビーだ。これを見た瞬間、このルビーがペンダントに加工され、エリノア嬢の首元を飾る姿が浮かんでしまった。


「どうした、カルヴィン」

「このルビーが、すごいと思って」


 ロードリッヒは、ガラスのショーケースに入ったルビーに目をやり、「ほう」とため息をつく。


「この店には時々、こういう掘り出し物がある。店主は儲けより、自分が目利きしたいい物を売るのが好きだからな。本来、国宝級の逸品も、しれっと店頭に並んでいる。おかげで僕は、モーラントの直筆のピアノ曲の楽譜を、格安で手に入れることができた」

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