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悪役令嬢は徹底して悪女を演じる~おーほっほっ!は卒業したい!~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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エピローグ

 咄嗟の判断であれだけ動けるのは、カルヴィンだからとしか言いようがない。

 さすが私の推しね。

 まさに奇跡。

 気絶したことを恥じているが、そんな必要はないと思う。訓練に励むのはいいことと思うが、カルヴィンに落ち度はないことを伝える。


 何より、カルヴィンに助けられるのは、もう何度目だろう。


 感謝しても、しきれないぐらいだ。


 ということで何度も御礼を伝え、そして重要な件を話すことにした。


 そう。銅レリーフの件!

 うっかり私が伝えたことに従い、銅レリーフを肌身離さず持ち歩いてくれているが……。その必要はないことを、改めて伝えた。


「……そうは言われても、困るな」


 カルヴィンは真剣な表情になる。

 困る? なぜ……?


「こうやって一度でも、自分の命を守ってくれた。既にお守りのようなものだ。……今回、傷がついてしまったが、それは修繕し、これからも大切に持ち歩きたいと思う」


「え……でも邪魔ではないですか? 結構な重量ですよね?」


「鍛えることになるので」


 そこで言うかどうか迷っていたことを、口にすることにした。

 つまり私の母親と兄が勘違いした件だ。

 それを伝えるとカルヴィンは、あの白い歯を見せ、実に朗らかに笑う。

 この笑顔、母親と兄に見せたい!

 これを見たらカルヴィンのことを、変態とは思わないはずだわ。


「自分は気にしませんよ。エリノア嬢が浮き彫りにされた銅レリーフを肌身離さず持ち歩く――かなり変わった騎士だと思われても」


「そんな……カルヴィン様は、まだ婚約者がいませんよね? せっかく縁談の話がきても、誤解されてしまいますよ?」


「それは……少し困るかな? でもそうなったら、エリノア嬢に責任をとってもらおうか」


「へ?」


 私が実に間の抜けた返事をしたまさにその時だった。

 カルヴィンが苦しそうな表情になったと思ったら、胸を手で押さえ、前傾姿勢になる。


「え、どうされましたか!?」


 一気に血の気が引き、心臓がバクバクいい出した。

 椅子から立ち上がり、カルヴィンに駆け寄る。

 心臓を押さえているということは、やはりナイフで突かれた時の衝撃で、何か影響が出ているのでは!?


「すぐにお医者さんを呼んできますから、待っていてください!」


 そう言ってその場から離れようとするが、手首を掴まれ、ベッドの方へ引き戻されることになる。

 これには驚き、でも焦ってしまう。

 早く医者を呼ばなければと、気が急いている。


「エリノア嬢!」


 カルヴィンが碧眼の瞳で私を見る。

 先程の苦しそうな様子は収まっている……ように見えるが、どうなの!?


「月の姫君、その寵愛を、わたしには与えてくださらないのですか?」


「!?」


 そ、それは……デジャヴを覚える。

 王都でロングランしている有名な歌劇『月夜姫と七人の若者』のセリフ。

 以前、酔っているカルヴィンがこのセリフを言っていたけれど、なぜ、今!?


「カ、カルヴィン様、今、なぜそのセリフを……?」


「今、だからです」


「?????」


 いまだに胸を手で押さえている。苦しいのではないの?

 医者を呼ばなくていいの?


「大丈夫なのですか?」


「エリノア嬢のセリフの返しを待っている」


 真剣な表情のカルヴィンにそう言われると、もう頭の中は「?????」だが、セリフの返しを待っているならば、返さなければならない――という気持ちになるから不思議だ。


 そこで私は、あの夜のことを思い返す。

 カルヴィンが言ったセリフに対し、私が口にしたセリフは……。


「わくしの愛を欲しくば、この世で最も紅く輝くあなたの心臓ルビーを捧げてください」


 なぜ今このセリフを求められるか分からない。

 不可能な要求をするセリフなのに。

 でも半信半疑でこのセリフを告げると、カルヴィンが真剣な表情から一転。

 ふわっと柔らかい笑みを浮かべる。

 ドキッと心臓が反応した。


「もし自分の心臓ルビーを捧げれば、そなたの愛を得ることができるのですね」


 あの夜が繰り返されている。劇のセリフとは違うため、私は苦肉の策でこう返している。


「ええ。心臓ルビーとあなたの気持ちを捧げてくだされば」


 フッと微笑んだカルヴィンは、自身の胸を押さえていた右手を、私の方へと差し出す。

 よく見るとその手は何かを握り締めている。

 カルヴィンの左手は私の手首を掴んだままだったが、その手で私の手首を返す。

 手の平をカルヴィンに向けることになった。

 するとカルヴィンは私の手の平に、自身の右手を乗せる。


 コロンと私の手の平に、何かが転がった。


「?」


 カルヴィンの右手が離れ、見えた私の手の平には……。


 ビックリした。


 これは何カラットあるの!?

 鮮やかな赤色は、まるでザクロのよう。

 でも大きさは、ミニトマトぐらいある。

 よく見るとハートの形に加工されている。


「月の姫君。心臓ルビーと、自分のあなたへの愛を捧げる」


 このルビーと愛を捧げるの……?


「あ、えっと、月の姫君に?」「エリノア嬢に捧げる」


 転生した乙女ゲームの世界で、私が見つけ出した推しであるカルヴィン。彼が告げた言葉の意味を、じわじわと理解した私は……。全身の血流が一気によくなり、そして顔が赤くなる。


 そんな私を見て、カルヴィンは限りなく甘く微笑んだ――。


 ~ fin. ~

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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