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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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98/101

98 ◇美しい彼女



 平日で親父が会社(仕事)なため、取り敢えず香さんには会社まで足を運んでもらい、その後、子供たちを先に預けてきた実家のほうに一緒に行く、という段取りでいた。


 親父は、香さんとの再婚話をした時からあまりいい顔はしておらず、

またもや、俺の結婚相手が原因で決裂するかもしれないと危惧していたの

だが。


          ◇ ◇ ◇ ◇

           


 俺と親父の前に眩いばかりの美しい装いで立ち、挨拶する女性は……

香さん? なのか?


 俺はまじまじと何度も彼女の顔を眺めた。

 どう見ても、香さんとは思えない。


 けれど、ここに来てもらう約束をしていたのは香さん以外いないのだから、

やはり香さんだろ。


『えーっ!』


 俺の遠い記憶の中から、あの子供連れで通った公民館で

見かけた女性のことが蘇った。

 

 あっ、あの時の人だ。

 でも、なんで?

 何故自分とは、あの時とは違ったキャラで付き合ってきたのか?


 ❔マークばかりが浮かんで来て、ろくすっぽ親父に紹介もできず……。


『どいうこと❔ どいうこと❔』


 


 しかし、俺の知らない出で立ちで颯爽と現れたモデルのように美しい彼女

を見た親父の表情が、一瞬にして変化するのを俺は見逃さなかった。


 動揺しつつもその一瞬で、これからのことは上手くいくだろうと頭の隅で

そんなことも考えていた。



 動揺し過ぎてふたりの会話もろくすっぽ聞き取れず……。




「わざわざ、こちらにも脚を伸ばしてもらってすまなか

ったね ふつつかな息子ですが、よろしく頼みます」


 と話す、親父の謙虚な物言いだけは、俺の耳がなんとか拾ってくれた。


 そして俺は公共の乗り物で来ていた香さんを車に乗せて実家へと向かう

ことに。



「僕は今でもあなたがあの僕の知ってる香さんだなんて信じられませんよ」


「ですよね? 」


「分かってて、扮装してたっていうことでいいんですか? 」


「まぁ、そういうことになりますね」


「どういうこと? 」


「私はこの通りモデル並みに美しい女です」


「はぁーー。(盛大なため息と共に)

 まぁそうですが」


「大抵の男性はよく知りもしないうちから見た目だけで判断して私のことを

恋愛対象にしてきます。


 神谷さんたちと子供たちも含めて、私はそういう関係性から交流を始めたく

なかったんです。


 私の内面を先に知ってもらってから、付き合っていきたかったの。


 何も話さないで大切な場面で突然変身した姿で現れたことはお詫びします。  

 驚かせてしまってごめんなさい」


「ほんとに、あっけにとられてしまって、親父にもちゃんと紹介できなくて

そこが少し残念だったけどさぁ。

 でもあれだ、親父も君の美しさにやられてた、参ったなー」



「ごめんなさい、ほんとに」




「いや、ありがとうって言わないといけないかも。

 僕も今の香さんで出会っていたら、きっと緊張しちゃって正直な自分を

出し切れなかったかもしれないし。

 ……ということは結婚なんてことにもならなかったかも」




「はい、そこは私も同じかも」


 俺は綺麗な香さんとも、緊張せずいつものように話せてほっとした。


 そう思わせるほど、彼女は美しかった。



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