93 ◇予見
「そうなんだ。
じゃあ、その本は香さんが借りてくれる日を待ってたってわけですね」
「ふふふ、どうなんでしょう? 」
神谷さんの反応に私は笑いそうになった。
普通なら、またまたまたぁーって反応するところなのに何、その反応。
こういうところが彼のいいところだなって思う。
彼が信じるか信じないかは分からないけれど、否定はしてこなかったので、私は当初の予定通り、素晴らしい意見を彼に提示することにした。
「この件については、話し出すと長くなるので神谷さんのお家の家業に
関わる話についてだけ、今回はお話しますね。
結論から言うと、神谷さん、是非とも家業を継ぐべきです。
ものすごく将来性があるように思えるので。
きっと業績は二倍以上伸びますよ」
「今までもなかなか安定はしていたようですが。
香さんにそこまで後押しされる事業内容とは思ってもみませんでしたから、少し驚いてます。
家を出てしまい、ここ数年関わってないのであれなんですけど、なんとなく頭打ち感があって。
というのも、納入先というのがだいたい網羅してしまうと新規開拓するのが難しいですからね。
例えば極論ですけれど、普通の企業ではぼほぼ必要とされない訳で。
使われる業種は限られてきますからね」
「神谷さんの言う通りです。
世の中が今までのように続けば」
「ということは……」
「近い将来ウイルスが世界中に蔓延するかも」
「ウイルス? ってあのv・i・r・u・sのウイルスですか? 」
「はい、そのウイルスです」
「何か根拠があるんですか? 」
悪戯心がムクムクっと起きて、私は彼に向けて少し腕をを伸ばし、人差し
指をクイクイっと横に振りつつ返事をした。
「ありますともぉ~」
期待を裏切らない人。
話を前に進めやすいように誘導してくれる。
「私の持つ予見の根拠は2つあります。
予言と言いたいところですが、残念ながら私、そういう能力は全く
無いので。
神谷さん、ビル・ゲイツってご存じですよね? 」
「ええ、マイクロソフトの創業者で確かものすごい額の寄付なんかをして
ますよね。
確か、小さな国の国家予算を越えるほどの額と聞いたことがありますよ」
「わぁ、そんなことまで知ってるなんて、なんだかうれしい。
私、その慈善活動を知って心から彼のことを尊敬してたんです。
長野で別荘購入してる話なんかも聞いたりして、あんなお金持ちが日本に
別荘持つっていうことは、日本の安全保障の観点からもいいんじゃないかって
思っていて。
呑気に彼の存在をいいように受け入れてました。
だけど……」
「だけど──何があったんですか? 」




