88 ◇夢のような出来事
夢みたいな……
嘘のような……
できごとが起きようとしている。
子供を3人も抱えて、小さな世界で孤独を抱えていたのに
大きな救いの手が現れて──
俺の抱えている孤独が小さく小さくなっていくのを感じる。
しかしね、実際のところ、ご両親が許すまい。
この話がただのたわ言で終わるかもしれないと、己が精神を保つため、
浮かれ過ぎないよう、俺は気を引き締めて掛かることにした。
◇ ◇ ◇ ◇
ははっ、プロポーズしちまった。
ヤバイ。
プロポーズに後悔はないけど、相手からプロポーズさせたかったわ。
ま、いっか。
男前な自分を褒めてやろう。
彼の不安や苦悩の詰まっている相談していた某サイトのスレ。
実際の彼、つまり、容貌や性格、話し方、子供たち、家の様子などを
リアルで知っていると、それほど気の毒にも思えないのに。
インターネットという顔の見えない空間で、周りの子持ちの既婚者たちに
向けて、相談し、やりとりで受け答えしている彼の姿には何ていうか、心の
底からこの不遇な男性を何とかして手助けしてやらねばという気持ちにさせ
るモノがあった。
まず健気さ、一途さ。
そしてそう思わせることのできる父性を感じさせるのだ。
Web上だけの彼しか知らなければ、きっと私は一連の彼の相談事スレを
読んで、泣けた自信がある。
何度も質問を繰り返し、皆から知恵を授かった彼。
彼の熱意とそこに集う人々のやさしさ。
まだまだ人間捨てたもんじゃないと教えてくれた人たち。
世界助け合いの精神がそこには息づいていた。
◇ ◇ ◇ ◇
漫才みたいな遣り取りで決まりそうな自分たちの結婚に、普通なら
なかなか聞けそうもない内容にも関わらず、神谷は香にある質問を
ぶつけてみることにした。
「ひとつ、質問していいですか?
同情ですか? 」
自分へのプロポーズは同情からなのか? と神谷が直球で問いかけてきた。
「同情なんかじゃないわ、とは言いきれなくて。
そうですね少し同情も入ってるかもしれません」
普通ならここは同情なんかじゃありません、と言うところだろう。
香にはそういうことも分かっていた。
けれど、神谷には嘘をつきたくなかったというのもあるし、また彼には
自分の胸の内は何でも話せてしまうという懐の深さみたいなものを感じて
いたため、そのまま本音を話した。
すると神谷が落胆を隠しきれず言った。
「やっばり同情がかなり入ってるんですね」
「同情がちょっぴり入ってて何が悪いんですか?




