74 ◇女心
『一対一だと行き詰まるっていうのなら、付き合ってる者同士、4人で
会えばいいじゃない。私は亀卦川さんとは付き合ってないし、関係ない
から誘われても困る。それに私、恋人だっているし』
我慢できなくなって何度目かに誘われた時、私は友人たちにはっきりとそう
言って断った。
それでしばらくは何事もなく平和に過ごしていたのだけれど……。
友人のひとり平山麻子が妊娠した。
子供の父親であるモデルの男は逃げた。
男の台詞が痛かった。
「誰の子だよ、それ? 」
もうひとりの友人も結果的に遊ばれた。
相手の俳優、子供もいる既婚者だったようだ。
彼女たちの話を聞いて、正直私はあまり同情できなかった。
騙されるほうが悪いなんてそこまでは言わないが。
もちろん騙す方が悪い、すごく悪い。
悪人であることは間違いない。
だけども、自分が好きで付き合ったのだから全面的に相手だけの責任って
ことにもならないと思うんだよね。
そんな男、気が付いた時点でさよならするしかないでしょ。
だけど傷ついてる友人たちに本心をはっきりと言えるはずもなく、
修羅場に2度ほど立ち会った。
その時に何故か亀卦川もいた。
亀卦川が妊娠させたモデルの男に、
『一緒に病院へ行き、もしお前の子だって分かったら、産むにしろ
堕ろすにしろ、麻子ちゃんに何らかの方法で責任取れよ。
ちゃんと避妊しなかったお前に責任あるだろ? 』
と言い含める発言をしてくれた。
この発言が康之のことをまともな人と、私が認識した切っ掛けに
なったのだと思う。
現在の仮面の剥がれた康之を知った今なら、もしかしたら──
案外あれは彼らの猿芝居だったのかもしれないと思わなくもない。
結局、平山麻子は男と病院へ行き、『今回はあきらめてくれ』と
男に懇願され、子供を堕ろしたのだ。
それでもその時の平山麻子の表情は明るかった。
聞いてみると、男がやさしく付き合ってくれていると言う。
「結婚して次は絶対彼の子、産むんだ」
私はその言葉を聞いて、なんでそんなに簡単なの? って思った。
本当にそれが現実になればいいけれど、私にはどうしてもあの男が
彼女との結婚を考えているようには思えなかったから。
けれど私には彼女にどんな言葉を掛ければいいのか、どうすることも
できないことだけは分かった。
半年後、男とは破局したと平山麻子から聞かされた。
「私、馬鹿だよね? 」
「あの男が馬鹿だよ」
「私会社辞めようと思うんだ」
「えっ? 」




