67 ◇ 一泊
今までの汚れものは、明日神谷さんに聞いてからの方が
いいような気がしたからだ。
住宅の密集したところではないので、本当に静かだ。
この辺りのほとんどの家が古い家なんだけど、神谷邸は
30代世帯が普通の住むような今風の家で古びてなく、外観も
家の中もさっばりとしていて、清潔感のある造りになっていた。
浴室も台所もロフトも、どこもかしこも窓がたくさんあって
採光が一杯入ってくる造りになっている。
このまま子供たちを寝かせたら帰ろうって思ってたんだけど、なんとなく
一泊して神谷さんの様子を見てから家に帰った方がいいような気がしてきて、
泊まることにした。
明日の予定のヘルパーの吉田さんには料理の代わりに買い物をして、
届けてもらうよう連絡を入れた。
子供部屋は大きなマットレスが2枚敷かれていて余裕で私も子供たちと
寝られそうだったので、シャワーさせてもらいその夜、私も子供たちと
一緒に寝た。
次の朝、疲れて寝た割に5時過ぎに私は目覚めた。
昨夜は何も考えずに寝てしまったんだけど、汗をかいた服のまま
だったことと、スッピンの今の状態の自分のことに考えが及び一度自宅に
帰ろうと思い至った。
鉛筆と紙を探したけれど見つけられなかったので、メールに
書置きして帰ることにした。
階下に降りようとしたところで眠そうに茉芽ちゃんが私を呼んだ。
「カオリちゃん? 」
「茉芽ちゃん、香ちゃんね一度自分のお家に帰るね。
お着替えのお洋服がないからお家でお着替え済ませたら
また来るから、待っててね」
茉芽ちゃんはニコッと笑ってから、また夢の世界へと戻っていった。
起きた時、私の言ったこと覚えててくれたらイイケド──
『なるべく早く戻るからね』私はそっと神谷家を後にした。
夫のことは不思議と気にならなかった。
今や夫が私の部屋に自ら入って来るなんて100%ないことを
確信していたからというのもある。
そして今の私が彼にとって存在などないがごとくのように
なっていることも。
空気のような存在の私は静かに早朝、自宅の廊下をゆるりゆるりと
歩を進め、自室のベッドに滑り込んだ。
15分程横になり、それから朝シャンして洋服を着替え、家にある
すぐに口に入れられそうな食材を、着替えやタオルなんかと一緒に
カバンに詰め込み、簡単に化粧して再び神谷家に慌ただしく取って返した。
なんとか8時前に到着。
家から持ち出してきた食材で手早く朝食を作る。




