58 ◇知世と桂子
「年末だし、二次会とか行ったんですか?」
「ううん、私は行かなかった。あっ……」
「どうしたんですか?」
「どーしよっ、突然思い出しちゃった」
「……?」
「言ってもいいかなぁー?」
「えっ、なんですか? 聞きたい」
「とりま、同じ職場の人のことだし、片方は既婚者だから見たことだけを
話しするね」
「……」
「なんか亀卦川くんと石川さんが意気投合しちゃったみたいで
店に入ってからずーっと話込んでて、一次会がお開きになる前に
ふたり一緒にバックレちゃったの。
しかも、それ、私の目の前でバッチリ見ちゃったの。
あれよぉー、他の連中はもう自分たちのトークに夢中でね。
次行こう二次会行こうーってなった時になって、やっと騒いでたわ、
ふたりが見当たらないって」
「みんなにそのこと言ったんですか?」
「ううん、何となく言いそびれた。
私、関係ないしさ」
「じゃあ知世さんの他に知ってるのは私だけってこと?」
「うん……そだね、たぶん」
「教えてくれてありがとうございます」
「やだぁ~、そんなんじゃないって。
今ガキさんと話してて思い出したから話しただけだから。
う~ん、だからこの先も他の人には話さないと思う」
石川さんも小娘じゃないんだし、自分のことには責任持てると
思うし、まっ、そこのところは心配はしてないンだけどさっ……。
話しながらついガキさんに『だから二股三股できそうな亀卦川くんには
ほだされないよう気を付けて』と言いそうになってしまって。
おっとぉー、なんとか私は何とかお口チャックできました……っと。
そこまで口を挟むとほんとによけいな"世話焼きおよね"じゃないけれど
"世話焼きおばば"になってしまうからね。
ま、これで誘われるようなことがあっても、お弁当の関係で踏みとどまれる
だろうとの思いを込めて──
『知世のミッションコンプリートどした』
◇ ◇ ◇ ◇
ガキさんこと、新垣桂子には何となく今回の話を持ちだしてきた
というか、話してくれた知世の真意が伝わってきた。
ありがとう、知世さん。
知世さんは、すでに私と亀卦川くんがそういう仲になっている
ことは知らない。
ひょっとすると、もしかして──くらいのことは邪推しているかも
しれないけど。
最初にお弁当の話を振ってきた時は、あまりいい気はしなかったけど、
あの時ちゃんと彼女に話していたからこそ、今回のことを善意でちゃんと
耳に入れてくれたのかもしれない。
知った上で弁当を続けるのと、知らずにいい気になって弁当を続けるのと
では、天と地ほども心情的に違うものになるだろう。
今回ばかりは、今までそんなに言うほど親しくしてきたわけでは
なかったけれど、桂子は心から知世に感謝したのだった。
そして、これがきっかけでふたりの距離は少し縮まることになる。
(これがきっかけで、後日桂子は知世から男性を紹介されることになるので
あった)




