56 ◇超モテモテ男
「私さ、戸籍上は独身なんだけど、ほら所謂事実婚? ていうやつでさ
一応一緒に暮らしてる相手がいるんだ」
「えっ? じゃあ火遊びしたいなんて言ってちゃ駄目じゃん。
まぁそんなこと言ったら俺のほうこそ駄目だけどな」
「ずっとさ、正式に結婚もせず、付き合ってた時のようなLoveLove感も
なく、子供も作らず、何か最近もう駄目かなぁ~なんて思ってたんだけど」
「だけど?」
「あの日の次の日──
クリスマスの日ね、彼からプロポーズされたんだよね」
「良かったじゃん、おめでとー(棒読)ププっ……嘘嘘、心よりおめでとう。
火遊びしてくれる相手、別に探さないといけなくなったけどさ……っていうか
俺も奥さんとLoveLoveすっかな」
「うん、それ揉めなくて一番いいと思う。
私ね、先週あんな帰り方したからさ、松浦くんにはちゃんと報告しとき
たかったんだ」
「おう」
それから少し話して私たちはお互いに別々の場所へと移動した。
私はひとりになったことをいいことに、少しの間、亀卦川くんと
石川さんの動向に注視することにした。
だって既婚なのにあの絡み方は気になるんだもん。
まるで先週の自分と松浦じゃん! 距離近っ!
彼らはいい雰囲気で何やら話し込んでいる。
途中であやみちゃんが知世さぁ~んって言って、同席してきたけれど
適当に話を合わせながら引き続きふたりの様子を探った。
「知世さん、さっきから亀卦川さんと石川さんのことが気になるよう
ですけど、もしかして亀卦川さんのこと狙ってるんですか?
亀卦川さんったらガキさんからはお昼にお弁当作ってもらって、飲みでは
石川さんといい雰囲気で、さらに知世さんからも見つめられて、超モテモテ
男ですよね? 亀卦川さん」
「ヤダっ──見てたことは否定しないけど、私のはそういうんじゃないから」
私はあやみちゃんの頭にぶつ振りの拳を、そのまま振り下ろした。
「ぎゃっ、ごめんなさぁ~い……。
でもぉ~知世さんみたいな仕事のできる素敵な人が独身だなんて
信じられなーい」
「うるさいっ。アラフィフの女にそんな無邪気を装って、鋭いナイフで
突き刺すようなことを言うんじゃないわよ、まったく。
今度こそ本気で殴ってやろうか、コイツぅ~うぅ~」
「ごっ、ごめんなさい、すみません」
あんたさ、今度Lunchおごりなさいよ」
「はいぃ~」汗
いやいやいやー、今はこのおバカな子をこれ以上叱ってる場合では
なかった。




