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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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53 ◇心の準備はできている




 私が帰宅すると緒方は入浴を済ませ、TVでサッカー観戦をしていた。

 この時間だから録画なのだろう。


 いつも彼は結果を見ないで録画にかぶりつく。


 片手に缶酎ハイを持ちながら、そこそこのイケメンなのにイブの日に

女っ気もないのか?


 見た目に反して緒方はインドア派で性格も地味な部類に入るだろう。


 学生の頃や若かった頃のことは知らないけれど、少なくとも

私と出会った頃から今日(こんにち)までの彼はそうなのだ。


 一緒に買い物に出掛けて並んで歩いたりすると、特に妙齢の女性の

視線が痛い。


 洋服や靴、そこそこのスタイルでヘアースタイルや化粧でふんだんに

作り上げてナンボの私と、ユニクロの物販で身を纏っているのに高身長で

長髪のちょっとしたイケメンの緒方を目にした彼女たちの視線が、不釣り

合いだと語りかけてくるのだ。


「ね、あのふたりの関係は?

 信じられないけどやっぱり夫婦なのかしら?

 あの男性ならもっときれいな女性がお似合いよね?

 なんであんなフツーのおばさんが奥さんなの?」


 分かる...分かるよー!


 だって自分でもそう思うもの。

 緒方くん、どうしてあなたは私の隣にいるんでしょうか?


 ハーハーハ~!

 こんな笑える展開をこの10年の間に何度経験してきたことか。


 いつも繰り返されるシーンを回想しながら入浴を済ませ私は寝た。



 12月25日……

クリスマスは早めに切り上げて18時頃には帰れるように

スケジュールを組んでいた。


 今年はチーズケーキを作ろうと思ってたから。


 そのクリスマスの夜、オーブンにケーキの具材を入れた

ところで、ちょうど緒方が帰宅した。


「ただいま、あっいい匂いする。ケーキ?」


「うん、もうすぐだよ」


 彼はいろいろと口に入れるものを買ってきてくれたようだ。

 

「そっか。え~と、食事をする前にちょっと話があるんだ。

 いいかな?」


「分かった……」


 こんなことは一緒に暮らすようになってから、はじめての

ことだった。


 いつかこんな日が来ることを知世はとっくの昔に覚悟していた。


 そっか、昨日は(うち)で1人宅飲みなんてしてたから油断

しちゃったけど、やっぱりできてたんだ、女。


 42才とはいえ、鍛えてない割にお腹も出てなくて、洒落っ気がない割

には、こざっぱりして見えるちょいイケてるおじさんだからなぁ。


 まだまだ独身の女が寄って来るだろう。


 『とうとう私、正真正銘のボッチに戻るんだなぁ~』


 段々言い草もやさぐれてゆく知世だった。


 ちょい油断してたとはいえ、心の準備はできている、できていた

はず。


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