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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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46 ◇引き際




『ねぇ、妻の務めってなぁに?』


 まぁ、何となくは察することはできたけれど、私はその奥さんにできない

一端を担わされてるってことなの?

 

  例え寝たきりであったとしても、亀卦川さんには正式に結婚している

奥さんがいることは前から知っていて、略奪婚を狙っていたわけでも

ないけれど──


それなりに魅力的な男性(ひと)だと思う部分があったから深い付き合い

まで進んだのだが。


 だけどこの辺りから雲行きが怪しくなってきた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 亀卦川の話の愚痴を聞くうちに、自分に接近してきたのはちょうど

香が難病になった少し後くらいだと気付いた。


 そのことに気付くまでは、相手が既婚者でもあまり相手の妻に対して

罪悪感はなかった。


       

 石川は学生の頃から男が途切れることがないくらいそこそこのモテ女で、

男が言い寄ってくるなんて日常茶飯事のことで、もちろん既婚者からの誘い

も多くあった。


 嫌になって別れれば深刻に悩むのはせいぜい1か月か2か月。

 悩む間もなく、次の恋人が見つかるのだ。


 そんな中、元彼と、よりを戻したこともある。

 そんな石川恭子の恋愛遍歴は、華々しいと言えた。


 なので、付き合っている相手に執着というものをあまり持たずにやって

これたし、いつも別れる時に切った張ったのと、暴力沙汰になることも

なく、これまで生きてきた。



 自分が望めば結婚相手など、そうそう苦労することもなく見つかる

だろうと、なんとなくではあるが、そう思っている。


 あくまでも相手あってのことなので、自分を気に入ってくれる男の中から

選ばなければならないことは分かっている。


 誰しも一番好きな相手と付き合いたいし、結婚もしたいというのが

人の性というものだろう。


 けれど、たくさんの異性と付き合ってきたからこその経験値が、そんな

乙女チックな価値観など自分にとっては、何の意味もなさないことを物語

っている。


 恋愛感情の最高値がずっとは続かないことを知っているし、

好き過ぎない方が楽(な恋)だということも。


 だからって、一途に好きになれる相手を望んでないというものでもない

けれど、結婚してから一生大恋愛をし続けることなんて、できないこと

だけは、よぉ~く分ってる。


 

 要するに、男と女の関係の引き際というものはよく心得ていた。


 だから、康之の妻への冷たい仕打ちを彼の言葉の端々から見えて

くるようになると、自分はいろいろと考えさせられるようになった。



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