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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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44/101

44 ◇ 観察



 昨年のクリスマスを前後して石川恭子は亀卦川康之と親しくなった。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 彼が既婚者だってことはもちろん知ってた。

 私は元々タレントでTVなどにも時々だけど出演している。


 所謂売れない綺麗なだけが取り柄のしょぼいタレントなのだ。


 自分で綺麗なだけの……だの、しょぼい……だの、笑っちゃうけど

これ世間から言われてることだから。


 世間ってまぁ、雑誌とか、インターネットとか? 楽屋とか?


 話題に上がるだけマシかも。

 今はほとんどTVから依頼なし。


 事務所の後押しとマネージャーのプッシュでモデルの仕事が

そこそこ入るようになって何とかやっていけてるってところかな。

 

 亀卦川康之は年齢高めだけれど、イケてるおじさま的要素が

売りで、結構需要があるのか仕事には困ってなさそうだ。


 誘われて、私が支払いをしたことは一度もない。


 

 ただ酒、ただ飯がいただけるのも魅力のひとつなんだけど、なんか本人が

掴みどころのない人間で、ずっと何もない関係でただのモデル仲間としてず

っときていて──


だから最初に二次会から一緒にバックレた時も、無料でお酒や遊びを提供して

くれる人って勘違いさせてくれるようなところがあって、一緒にいて疲れない

っていうのもよかった。



          ◇ ◇ ◇ ◇




 たまたま、いつものようにモデル仲間と夜の街に繰り出した

ある日のこと。


 私には当時たまたまステディな相手がおらず、悩む必要もなく

いとも簡単に私は彼に誘われ(なび)いてしまった。


 とはいえ、このことに関して、別段後悔はないんだけれどもね。


 私は今のスタジオに顔出しするようになってまだ2年とちょいなので

新参者みたいなものなんだけど──


余裕ができて私が周りの人に注意を払うようになった頃には亀卦川さんは

確かすでに結婚していたと記憶している。


 古参の誰かからいつだったか、亀卦川さんが昔はいろいろと浮名を流す

ほどプレイボーイだったけど今の奥さんと付き合うようになってからは

派手な女性関係が一切なくなったと聞いたことがあった。


 みんなで繰り出しての飲み会にこれまで彼はあまり顔出ししてなかった

けれど──


そのうち、何度か顔出しするようになった頃、二次会にも出るように

なっていた。


 そして、何度目かの二次会で口説かれちゃったんだ。


 えー、奥さんはいいのかよ、、なんてちらっと頭の隅で思ったんだ

けども、なんかぁその夜はそんな気になっちゃったんだよね。


 惚れた腫れたというのではなかったと思う。


 妻のいる相手、亀卦川に至ってはいわずもがなのことだろう。

 いい加減だが、いわゆる自然の流れというヤツなのだ。


 彼だって計画的ではなかった? はずと思う。


 互いに心のどこかで気楽に付き合うにはいい相手と認識が

あったのだろう。


 

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