30 ◇神谷家の子供たち
公民館では皆一様に親子して紙で作った名札を銘々親子で付けていた。
そしてサークル開始後、リーダーが出席を取り始めた。
できる子は、はぁ~い、と右手を挙げて返事した。
そう、母親と来るはずだった美晴ちゃんにとって今回は
何回めかの参加になる。
肉親でもなく、ちょっとした知り合いの、いうほど馴染みのない
私との参加に不安を感じてないだろうか?
心配しつつの参加となった。
心配だったけれど、自分の番が来てサークルリーダーから名前を呼ばれると恥ずかしそうにしたものの、ちゃんと美晴ちゃんは『はいっ』と言えた。
リーダーの方には、今日美晴ちゃんが母親とではなく何故私との参加に
なったのかは、サークルが始まる前に説明させてもらった。
みんな親子ともども、周りに馴染んできているところに見えた。
私だけがちょっと知らない人間になっていた。
馴染んでない新参ものの私は、それとなく周りを見渡したりした。
所謂、Watching? なるべくキョロキョロ感出さずに。
15組のうち、みんな、ほとんどの人たちが、連れている子供は1人が
多く、2組が2人連れていて、1組だけものすごく目立つ親子がいた。
父親の参加は神谷家だけでしかもお子さんが3人。
もうそれだけでもすっごく目立つのに、一番上の息子さんが5才にしては少し
言葉が遅れているように感じられたことと、1才の麦くんが時々ヨチヨチ、よた
よた、ハイハイとちょこまかじっとしてなくて──
3才の茉芽ちゃんも1才児ほどじゃないにしても、ちょこまかしちゃって、私ったら
気がつくと美晴ちゃんのことはおざなりで、ずっと親子4人をウォッチングしちゃってた。
『うわぁーっ、ほんと大変そ。
奥さんどうしてるのかしら?とか。
余計なお世話じゃぁ~、だよね?』
茉芽ちゃんと年が近いのかな? 美晴ちゃん。
だけど、美晴ちゃんは思った以上に大人しく、同じ場所でせっせと
お絵描きしたり、リーダーの言う通り真似て踊ったりして、楽し気に
1時間半をなんなく過ごし終えた。
神谷さんは非常にひじょーに、お気の毒だった。
麦くんと茉芽ちゃんがちっともじっとしてなくて──
きゃぁ~、ご愁傷さま、って感じ?
一番上の雨汰くんも、美晴ちゃんのようにはじっと座ってなかったし。
思わず、余裕の私は『麦くんか茉芽ちゃんどちらか見てましょうか?』と
言いたくなったほど。
だけど、初回でまったく接点もない中でのいきなりの申し出は憚られ、
言えずにいるうちにサークルの時間は終わってしまった。
帰りは駐車場に行くまでの間、親切な方が神谷さん家の茉芽ちゃんの手を
引いて連れて行くのを目撃。
それ見て『よかった』とほっとしている自分がいた。
「美晴ちゃんいい子だったね、おばちゃんびっくりしちゃった。
偉いね」
「うん、ミハルいい子だった。ウププっ」
「さぁ~ってと、帰ろうねぇ~」
疲れたんだね、車を走らせて5分もしないうちに美晴ちゃんは
寝てしまった。
同じ3才児でもその子その子によって言動に差があるんだなんて感慨深く、私も
緊張していたのか少し疲れた。
真知子さんに何か買って行ってあげようと思ってたんだけど美晴ちゃんが
寝ちゃったんで、そのままどこへも寄らず美晴ちゃんを連れて宗谷さん宅まで
帰った。
◇ ◇ ◇ ◇
美晴ちゃんを無事真知子さんに手渡せて、ほっとした。
折角なので、真知子さんにおかゆとかフルーツとかポカリとかって思った
けれど、私と宗谷さんとの距離感ではあまり踏み込むのもどうかな? と思った
ことと、私自身も本調子ではない身ということでここは無理するのを止めようって
決めて、それ以上の声掛けはせずに帰った。
元気なら、もう少し真知子さんの力になってあげたかったのにな。
そんなこんなで、私はちょっと後ろ髪惹かれつつ、美晴ちゃんと
真知子さんにさよならをした。




