29 ◇憩いのひと時
ある日の朝、ゴミ出しで美晴ちゃんの家の前を通り過ぎようとしたところ、美晴ちゃんが泣いているのに気が付いた。
インターホンを鳴らすか鳴らさないべきか、迷ったのだけれど、美晴ちゃんとはたまに公園で会うとよくおしゃべりしてくれていたのでつい、インターホンを押してしまった。
反応がないけれど、美晴ちゃんは何か叫んで泣いているしで、
私は失礼とは思いつつ、ドアノブに手をかけた。
「失礼しまぁ~す」
ドアを開けると寝間着姿の奥さんと、泣いてる美晴ちゃんが
玄関の三和土にいた。
「泣いてる美晴ちゃんの声が聞こえたもので、勝手におじゃましてすみま
せん。何かお手伝いできることあります?」
私は泣いてる美晴ちゃんの母親の宗谷真知子さんに声をかけた。
寝間着姿の彼女は具合が悪そうに見えた。
「行きたい、いちたいのぉ~!」
「……?」
「今日は公民館に行く日で美晴が楽しみにしてたんですけど……私が
体調悪くって、今度行こうねって言って、宥めてたところなの」
美晴ちゃんもぎゃん泣きしてるけど、真知子さんも途方に暮れて
泣きそうな顔をしていた。
「真知子さん、わたしでよければ美晴ちゃん公民館に連れて
行きましょうか? その間に、真知子さんもゆっくり寝ればいいし 」
「そんな、亀掛川さんだって体調よくないんじゃありませんか?」
病気のことを知っている彼女が気遣ってくれる。
私は首を横に振って答えた。
「大丈夫、最近病院変わって新しい薬飲むようになってから調子いいの。
良くない日もたまにあるけど、以前に比べたら随分良くなってるの。
1~2時間くらいなら大丈夫だわ」
「じゃぁ、甘えさせていただきます。
助かりました。
もう美晴は泣きっぱなしだし、身体に自信なくて車運転できないし
正直困ってました」
おっおー、私、救い主の尊になれそうじゃん、やったね。
そこから持って行くものを真知子さんと美晴ちゃんと私とで
鞄に入れ準備万端。
「美晴ぅ、香さんの言うことよく聞いてね」
「はいっ、聞ますっ」
私と真知子さんは顔を見合わせた。
「「ぶはははっ」」
かくして、美晴ちゃんと私は公民館へLet's ら Go!
※いつかの日、真知子さんと交わした公園での話。
散策を兼ねてウォーキングもどきをし、目と鼻の先にある我が家に帰る前に、
この公園に立ち寄るのは気晴らしであると話したことがあった。
ほんの少し前までちょっと難しい病気に掛かって病院通いと在宅の日々
だった。
それがほんの少しだけど外を歩けるまでになって外の空気や景色、そしてこの
公園で知り合えた真知子さんたちに会えること、が憩いのひと時であると。




