28 ◇ 出会い
快方に向かう手応えを掴んだ私はヘルパーが帰ったあと、近所周りを
散策して歩くのが日課になった。
先の見えない日々を過ごすのと、もうすぐ快復するというゴールの
見えている日々を過ごすのとでは、気持ちの持ちようが全然違った。
私たちの住んで居るのは新興住宅街の区画戸建のすぐ側の8階建て
マンションになる。
マンションから見えるその戸建て群の一角に小さな公園があって、
その戸建てが立ち並ぶ道路を通る時には必ずその公園を通ることになる。
滑り台を降りたらすぐ目の前に砂場っていう作りになっていて、その
砂場の横にベンチも備え付けられている。
住宅地を抜けて広い道路を渡り、田畑の残る田舎チックなつづら折りの
道を軽くウォーキングして区内に帰って来た私は、公園のベンチに座り
休憩することにした。
自宅はほんの目と鼻の先なのにね、なんとなく外の風に触れて
いたかったのだ。
今朝は小降りの雨が☂降ったけれど午後になってから晴れ間が広がり、
気温も高めなので散歩して少し汗ばんだ。
目を閉じて肌で風を感じた。
肌にやさしく触れる風が心地よかった。
次に目を開けた時、プラスチック製の黄色のスコップの入った赤い色の
バケツを手にしたかわいらしい女の子とおばあさんらしき女性の姿が視界
に入ってきた。
「こんにちは」コンニチハ」 おばあさんが私に挨拶してくれると
すぐに女の子も同じように挨拶してくれた。
「こんにちはっ」
おばあさんと少しだけ世間話をした。
聞くところによると、女の子の家はこの公園のすぐ前だとのこと。
おばあさんは家の方を指さしながら教えてくれた。
「お家の前が公園なら、簡単に毎日遊びに来れていいですね」
「そうなんです。ですから孫とは毎日のように来てます」
「おばちゃん、はい、これどうぞ」
「あぁ、ありがとっ。それなぁ~に?」
女の子がくれようとしたのは泥団子だった。
「オニギリっ、たべてくらさい」
「美晴、そんなのおばちゃん困るでしょ。手が汚れちゃうよ」
おばあさんからそう言われた美晴ちゃんは、手渡すのを止め
私の口元に近づけてきた。
なので、私は食べた振りをした。
「モグモグ、おいしかった、ごちそうさまでした」
◇ ◇ ◇ ◇
それからウォーキングの帰りに公園に立ち寄ると、時々彼女たちと
遭遇するようになり、顔見知りになった。
美晴ちゃんは母親と来ることもあって、私は母親の宗谷真知子さん
とも知り合いになった。




