27 ◇転機
病院と薬などの関係から、なかなか新しい病院を開拓できずにいたのだ
けれど、ようやく診てもらえる病院と先生に目星がついたので、春頃にな
ってようやく私は新しい別の病院で診察を受けられる運びとなった。
この病院を選んだのは、母親がご近所の古くからの知り合いに聞いて
くれて、というもので、所謂口コミっていうやつ。
「あなた、幸運の持ち主ね」
意を決して訪ねた病院で40代後半くらいに見える感じの良い
女医からそう告げられた。
「……?」
「あぁ、ごめんなさい。なんのことだか、分からないわよね。
私ではないんだけれど私の夫がね──
あぁ私の夫も同業者で医師なの。
その夫がねあなたのような症例を手掛けたことがあって。
よい療法を見つけて、ある一人の患者さんを助けたことがあるのよ。
その患者さんは薬がうまく適合して、今では発症前に近い健康状態で
生活されてますよ」
たった一例のみの診療。
ゼロと一の違いは大きい。
しかも、たった1人とはいえ、うまい具合に寛解して
いるのだ。何という朗報。
日常生活もままならない身を考えると、奇跡としかいいようがない。
チマチマとでも、ゆるゆるとしていたとしても、普通に近い日常に
戻れるならば、なんと有難いこと。
そして──
「発症してから9か月が経過してますね。
不安だったでしょう?
よく頑張りましたね」
と担当の女医はやさしく言葉をかけてくれた。
「すぐに紹介状を出しますね。
きっと、、妻の私が言うのもなんだけれど、夫は有能な医師で
頼りになると思います。
あなたの人生を元居た場所へと戻してくれることでしょう」
「先生‥私、先生とご縁をいただけてよかったです。
本当にありがとうございます」
◇ ◇ ◇ ◇
私は紹介状を持ち、早速翌月の初めに紹介先の病院で受診した。
個人情報は開示できないということで、顔出しや身元は伏せた上で
同じような病気の患者がどんなふうに寛解までの道のりを歩んだかという
記録を見せてもらった。
そして、投薬が始まり、一か月もすると明らかに分るほどの症状の改善が
見られるようになったため、私は当初からお世話になっている病院での診療
を止めることにした。
先生との相性や、病気の状態などを見ながら、ふたつの病院通いをと
考えていたのだけれど……。
紹介された医療機関の私の担当医であるH医師から二回目の受診から
オンライン診療を提案してもらうことができたのも幸運だった。
薬は母親に受け取りに行ってもらうようにした。
半ば、訳のわからない病気に見舞われ、親子して励まし合いながらも
その実、内心では疑心暗鬼の中で暮らしていた母と娘にとって、この
医療機関に通うという作業はとても明るく前向きな心持で向かえた。
医師からは2~3か月投薬を続けたら、後は薬を止めて様子見をし
最後の受診に一度来てもらって終わりになりますよ、と言ってもらえた。
一度は絶望的に思えた病気が、こんなにもあっさりと治りそうだなんて
私はまだ夢を見ているような気分だった。
母も喜んでくれた。
心身共に母親には本当にお世話になった。
この先も終わりの見えない病気で延々と世話にならなきゃいけないのかと
思うと暗澹たる気持ちになったこともあったので、私は母への感謝とともに
天に向けて心より感謝を捧げた。




