22 ◇いい女
石川恭子はいい女だ。
見た目もオツムの回転具合も。
両方兼ね備えていて、さらに一緒にいて楽しい会話のキャッチボールが
できる相手なんてそうそういはしない。
打てばポンポン響く、そんな女性だ。
何より彼女には色気があり、そそられる何かがあった。
俺は彼女ともっともっと、仲良くなりたい、親密になりたいと思った。
元来俺は欲しいと思うものに対しては貪欲で、これまでもほぼほぼ
いいなぁと思った異性にはことごとく猪突猛進でアプローチをし、手に
入れてきた。
黙ってじっとしていられない性質なのだ。
そして、そういうスイッチが、この夜入った。
俺のアンテナに、いける、という電波が飛んできた。
彼女といろいろ話しているうちにお持ち帰りできそうに思えて
きたのだった。
彼女のほうでも、俺の出している電波をキャッチしたようで
互いの会話で盛り上がった後、俺が『ここを出ようか?』と聞くと、
彼女は目を潤ませながら『うん』と頷いた。
そして俺たちは他のメンバーをその場に残して、ホテル街に消えた。
石川と懇意になってからは昼はガキさんとはほとんどお昼だけの関係に
なっていった。
ただただ、お弁当を一緒に食べる仲。
たまにそれでも自宅に招かれて夕飯ごちそうになることもあったが、
気がつくと、ガキさんが自宅に招待してくることはなくなってたなぁ。
まぁなんだ、アレかな? とは思ってたから。
ちょうどガキさんからの夕飯のお誘いがなくなる少し前から
石川としょっちゅう夜の街に繰り出すようになってたから、噂で
俺たちのことを知ったのかもしれない。
それで、気持ち的に引くものがあったのかな? って。
だけど、ガキさんは律儀に昼の弁当はかかさず作ってくれる。
で、俺も悪びれず、美味しいおいしいと有難がっていただいてる。
ガキさんは思っていた通りの奥ゆかしい女性だった。
その辺の若いギャルのように『浮気したわねー』とか言って責めてくる
こともなければ、『もうそんな浮気な奴に弁当なんかつくんないわー』
なんてことも言わない。
今もって都合のつく限り美味しい手弁当を作ってくれるんだよな。
いや、ほんと、有難い。
◇ ◇ ◇ ◇
……などと、大らかというか呑気というか──
康之は、繊細な心持でいる新垣の気持ち、配慮、遠慮、といったものが
ないまぜになった、そんなものには頓着なかったのである。
なので、康之は石川と親密になったからといって新垣と今後は
仲良くしないと決めたわけでもなかった。




