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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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11 ◇一進一退



 夫の帰りが遅いというのは、確かに気になるところではある。

 けれど、病気とはいえ、ここのところほとんど彼の世話らしい世話もできずに

過ごしてきた私には、どこかで“責める資格なんてないのでは”という後ろめたさ

がある。


 だから、夫に問いただすこともできず、胸の奥に小さなモヤモヤだけが

澱のように残ったまま……。


❀これがまた厄介で、無理に見ないふりをしても、ふっとした瞬間に

疼きだすのだ。


 そして、こんなふうに自分以外のことに気を配る余裕が生まれるように

なって、気づけば一進一退だった私の病状も、ゆっくりではあるけれど確実

に波が引くように落ち着いてきていた。


 家の中で、疲れたら無理をせず横になる──そんな生活なら、なんとか

こなせるようになってきたのだ。


 もちろん、以前のように元気いっぱいとはいかない。


 けれど、発症当初の、寝返りを打つのも辛かった頃と比べれば、今は

“断然マシ”と言える。


 時間が解決したわけではない。

 けれど、時間の経過と共に“病気の身体との付き合い方”のようなものが、

ほんの少しずつ分かってきたのかもしれない。


 慣れなのか? 馴染んできたっていうのか、そんな感じ。



 一進一退とはいえ、以前よりは確かに楽になったという現実。

 それが私の心を、ほんの少しだけ前向きにしてくれて、元気づけてくれる。


 悩んだって悲しんだって、私の身体は思うようにはならない。


 

 だけど──

自分の足で立てる。

 歩ける。

 排泄もできる。


 食事を作るほどの体力はまだ戻らないけれど、食べることはできる。


 “できないこと”より、“できること”に目を向けてみれば、不思議と

気持ちは軽くなる。


 できることに感謝してみれば、心の持ちようも変えられるのだと

知った。


 そう──

そんな当たり前のことに、私は今さらながら気づいたのだった。



 あれもできない、これもできない、ではなく……。


 ひとつひとつのできることに喜びを見出すのだ。


 そうしないと、生きていけないような気がする。

 自分の大切な生活時間を少しでも良いものにしたい。


 泣いて暮らしても一日。


 同じ一日なら、笑ってとまではいかなくても、1mmでもいいから

より良い一日にしたいじゃないか、なんてね。


 ここのところすごく前向きに生きたいと強く思うようになっていて、

 ぼちぼち病院を変えてみるのも一つの手かな、とも思うようになっている。



 -ふとね、突然あることを思い出したのが切っ掛け。

 そこから導き出された結論。-


 病気について、病気に伴う投薬について、病気を診てくれる医師について。


 医師は日本という国、私の住まう県、市があって、どこで括るかはそれぞれ

だけど、ひとまずは近いに越したことはないから、まず市で括るとして。


 セカンドオピニオンを受けてみるべきだと思い始めた。


 今診てくれてる医師にはない発見や発想で、診立てをしてくれる医師が

住まう市のどこかに、居るかもしれない。


 そしてその医師は私の病気に対して特効薬となる薬を見つけてくれるかも

しれない。


 可能性はゼロではないはずだ。


 こんなことを考えられるくらいには、今の病気との付き合い方を

マスターし、そのことで精神的にも少し余裕が出てきたのかもしれない。

 

 



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