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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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100 ◇番外編/康之Side 



 ── 遡ること香と離婚した直後の頃(夏) ──



  病気の妻と離婚。

 納得できない様子はあったものの、香はほぼほぼ無抵抗で実家に帰って

行った。


 泣いたり、喚いたり、そんなことがあったらと危惧していたものの

考えていたよりも、あっけない幕切れだった。


 妻は病気で何もできない身体だった……はず。

 それなのに、この違和感は?


 妻が病気になってからも、以前とまったく同じ生活という訳ではなかった

もの、俺はあまり不自由を感じたことがなかったと、改めて妻のいなくなった家でそんな思いを強くした。


 仕事の後は女の子と遊び歩いて好き勝手していて、帰宅すると風呂は沸いていたし、小腹がすいてキッチンに入ると何かしら、口に入れられるちょっとした料理がいつもカウンターの上やら冷蔵庫に置いてあった……よな。


 朝も作り置きしてあった煮物やサラダを適当に腹に入れて出勤してたし。


 掃除も自分でしたことはなかったはず……。

 家は綺麗で清潔に保たれていた。


 香がこの家に居なくなって約2週間。


 リビングや廊下には綿埃が目につくようになり、今までの家庭の

有様(ありさま)に考えが及んだ。



             ――――



 ずっとシャワーできて、久しぶりに風呂に入ろうと蓋を開けて仰天した。


 ゴミだらけで、洗い場の排水溝の蓋を開けてみたらあまりの惨状に、

えずきそうになる始末。


 下着の替えが……ない。


 洗濯する者がいない家。

 

 香は確か2~3時間ほど、ヘルパーに来てもらってたはず。

 しかし、下着なんかもヘルパーに頼んでたのだろうか?

 それとも香が?


 ヘルパーの探し方も、そして誰か人に来てもらうにしても、手配したり

話をしたりと、自分が動かないと何も進まないという現実に愕然とした。


 

 離婚後分かったのだが、香の病気前と病気後の家計の支出はほぼ変わりは

なく、医療費やヘルパーへの支払いも彼女が自身で負担していたことを知った。


 香のいない生活は思ってもみないほど不自由だった。


 いつも開ければ白いご飯の入っていた炊飯器が今は悲すぃ~、空っぽだ。 


 自分で炊かなけりゃぁ、いつまで経っても空だ。


 病気であまり動けなかった妻だったが、家の中の采配という気配りが

伺えた。


 妻を追い出したのは早計だったのではないか? 

という思いが芽生えそうになる。


 そんな気持ちを俺はなんとか宥めた。


 良かったんだよ、先でもっと重症化したらとんでもなことになっていた

はず、これでよかったんだと……。



             ――――


~石川恭子に振られた頃(夏)に遡る~


 よく飲み歩きしていた石川が最近つかまえずらくなっている。

 もうあの女も良い年だ。


 適齢期で考えるならば、婚期を逃しているとも言える年齢だ。


 待てよ、彼氏でもできたかな?

 時間を作らせて、プロポーズでもしてみるか。


 康之は、見た目到底奥様業には到底向いてなさそうな石川に僅かばかりの

期待を寄せてそんなふうに考えた。


 香も良い極上の女性で、自分のために家庭に入り良い妻になってくれ、

何の不足もなかった。


 だが如何せん、不治の病になったらそれは話が変わってくるというもの。



 善は急げというように仕事場で一緒になると康之は石川を誘った。


 「久しぶりにどう? 」


 手でぐいっと飲むパフォーマンスをしながら気軽な調子で彼女を誘った。


 石川恭子は元々康之とは頻繁に会っていたのだが、最近友だちに誘われた

飲み会で出会ったグループの人たちと仲良くなり、そっちと遊ぶことが多くなっていて、康之との飲み歩きはしばらくご無沙汰だった。


「なんか最近冷たくない? 」


「ふふっ、亀卦川さんこそ遊び相手は腐るほどいるくせにぃ~。

 私、ちょっといろいろと忙しくしてたのよね~」


「コレでもできた? 」


 康之は小指を立てて、冗談まじりに石川に直球で聞いた。


「だといいんだけどぉ」


「じゃぁ、久しぶりに飲みに行こうぜ」


 

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