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『あなたに恋しました !』 ――最後は君を好きになる――    作者: 設楽理沙


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10 ◇深夜の帰宅




 我が家では、家計費として夫から毎月決まった額を受け取るだけで、

私が家庭の全財産を任されているわけではない。 

 そのため、私は夫がどれほど貯蓄しているのかすら知らされていない。


 実家の両親はふたりで相談しながら財産を管理しているらしく、それを

知っている私からすると、多少のモヤモヤ感は否めない。


 とはいえ、独身の頃から続けている在宅の仕事もあったし、これまでは

そういったことに特別不満を抱くこともなかったというか、目を瞑ってきた

のだけれど……。


 ――そう、“これまでは”。


 こんなもしかすると長期戦で望まなければならないかもしれない

厄介な病気になってみて……


 人の手を借りないと生活できなくなり、思いがけず多くのお金が必要と

なってみて……


初めて見えてくるものがあった。




 あの日――『難病で、今のところ有効な手立てがほとんどないのです』と

告げられてからの半年。


 母やヘルパーさんたちの支えがあったおかげで、寝てさえいれば痛みも苦しみも

少なく、どうにか家での生活を保つことができた。


 

 そんな中で、私が唯一“頑張った”と胸を張って言えるのは……。



 

 ものすごく体調が悪い日は別として、半日をベッドや椅子で過ごす日でも、

ちゃんと寝間着から普段着に着替える、ということだった。


 それは一日のリズムを守る小さなけじめであり、そこにはいつか必ず元気な

自分に戻るのだという、ささやかな意地と願いを込めた行為だったのかもしれない。





 ただ、どうしても申し訳なく思ってしまうのは夫に対してだった。

 

 こんなふうになってから、彼はできる範囲で自分のことは自分でという

スタンスで、なるべく私に負担をかけないようにと飄々と自炊してくれて

いる。


 


 ヘルパーさんには、少しだけ作り置きをお願いしてはいるけれど、どうしても

週に1度か2度、賄えない日ができてしまう。


 そのたびに「ごめんね」という気持ちが胸に広がってしまう。

 そこは、病気になった日からずっと、感謝してもしきれないところだ。


 出掛ける時の挨拶、『行ってくるよぉ~』はあるけれど。


 いつからだろう――――。

 夫の『ただいま』が、聞けなくなってしまったのは。

 

 それは避けられているというより、おそらく私の起きている時間には

彼がまだ帰ってきていないことを意味してるってことなのよね。



 夫の仕事は本業が文筆業で、あと副業みたいな感じでモデルも

している。


 どちらも朝早くから出勤というわけではなく、モデルの仕事もほとんどが

午後から。

 だから深夜の帰宅でも、翌日の仕事に支障はないのだろう。



 でも、毎晩こうして遅い帰宅が続くのは、どうなのだろう。


  私自身、この半年は自分のことで精いっぱいで、夫を気にかける余裕など

まるでなかった。


 それでも、一度ふと気になりだすと、思考はそこばかりへ向かってしまう。


 毎夜、毎夜。

 夫はどこで、誰と、何をして過ごしているのだろう──と。




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