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第9話 恋人達のバレンタイン

最終話です

↓高崎小雪 視点

「小雪のことが好きです。僕と付き合ってください」


「はい、私も黎人くんのことが好きです。これからもよろしくお願いします」


 こうして私達はようやく恋人になることができました。


 これからはどんな日々になるのでしょうか、未来への期待への膨らみと共にこれまで色々とあった泣きたくなるような辛い出来事や苦しい出来事も今の幸せによって浄化されていくような気がします。


 きっとこれからもこうやって何度も好きと伝え合うのでしょう。


 そんな輝かしい未来に想いを馳せていると黎人くんが何かを思い出したのか「あっ」と呟いて背負っていたリュックから四角い箱を取り出して開けました。


「これは何ですか?」


「本命チョコレートだよ」


 ドキンと心臓が強く音を立てます。


 数時間前まで嫌だったこの音が今は凄く嬉しくて体が熱いです。


「僕が小雪に好きだって伝える本命のチョコレート。食べてくれる?」


 そう言って箱から取り出して私の口元にもって来る黎人くん。


 その手はぶるぶると震えていて緊張しているのがわかり私は思わずクスッと笑ってしまいました。

 

 そして、黎人くんは照れ隠しをするように私から顔を逸らしています。


 ですが、いくら顔を逸らしても真っ赤に染まったお耳は隠せません。


 可愛い黎人くんですっ。ふふふ。


 私は優位性を感じて少し強気に出て黎人くんをからかいます。


「大丈夫ですよ。黎人くんが作ったチョコレートなら絶対に美味しいですから。そんな可愛くびくびくしなくても大丈夫です。むしろ嬉しくてしょうがないです。本命ってこのことだったんですねっふふふ」


「う、うるさいっ」


「ありがとうございます。では、……ぱくんっと……ちゅ」


 差し出されたチョコレートを口に含むときに大きく口を開けて黎人くんの指をペロリと舐めてしまいましたっ!


「ひえっ!?こ、小雪!?おまえ、い、今!?」


「はい、黎人くんの思ったとおりです。チョコレートも黎人くんも美味しく頂きましたっ!」


 ペロリと舌を出してすっとぼけます。


 めちゃくちゃ心臓がバクバクしていて顔も熱いですが慌てふためく黎人くんを見ることができて満足です。


 それに、黎人くんの指を舐めるという感覚がゾクゾクして溜まりませんっ。


 黎人くんを手玉に取っている気分は背徳的でもの凄くいじめたくなってしまいます。


 私もカバンの中に入れたチョコレートを取り出して黎人くんの前に差し出します。



 あれ?どうしてでしょう?……チョコを持つ手が震えてしまっています。


 どうやら、黎人くんのことはばかにはできないようです。


 味見して大丈夫だったのにいざ渡して本人に食べてもらうとなるとすごく緊張してしまいます。


「はい、どうぞっ」


「それじゃあ、い、いただきます」


「ひんっ……」


 仕返しと言わんばかりにチョコレートと一緒に私の指を舐めてくる黎人くん。


 私は思わず上擦った声を上げてしまいましたがなんとか平静を装い、ドギマギしながらも先程触れた温かな感触を思い出します。


 へへっ、思っていたよりもいいかもしれないですっ……恥ずかしいからこんなことは絶対に外には言えませんがっ!


 だから私は余裕ぶります。


「黎人くんっ!チョコレートと私、どっちが美味しかったですか?」


「なっ!?小雪何言って……」


 本当に自分でも何を言っているんでしょう……もう頭のネジが外れてしまっていて、吹っ切れてしまいました。


 後で絶対恥ずかしくなるやつです、うぅ~っ。


「そ、それでっ、どっちなんですか?私の指ですか?それとも私が作ったチョコレートですかっ?」


「おっ、教えないっ!」


「えぇ~何でですか!教えてくれてもいいじゃないですかっ」


「いいから帰るぞっ。皆心配してるんだからっ……ほらっ」


「うぐっ、正論を振りかざして逃げないでください!……っありがとうございます」


 逃げられたことに不服ではありますが、黎人くんから差し出された手を私は握ります。


 これまでは握ることが許されていなかった黎人くんの手。


 繋がった手は大きくて固くて、私の手とは全く違います。こんなにも頼りがい溢れる黎人くんの手を握るだけで私の心はじーんとしてスッと染み渡るような感じがして心が落ち着きます。


「黎人くん」


 帰り道を2人で歩きながら私は黎人くんに呼びかけます。


「どうした?小雪」


 優しく微笑みながらまっすぐに私の目を見つめてくれます。


 だから私も自然と笑顔になれます。


「好きです、黎人くん」






◆◆◆






 こうして長いバレンタインの一日は終わりました。


 私はこれからも大好きな彼と共に毎日の日常に戻り、また1年後、2年後、3年後……何年経っても彼とチョコレートを交換し気持ちを伝え合うことでしょう。


 そのときのバレンタインはどんな好きなのか、ものすごく楽しみですっ!


最後まで読んでいただきありがとうございました!

面白かった!と思った方は評価★をぜひよろしくお願いします!


 2月14日の一日だけの話を書いたのにここまで長くなるとは思ってもいませんでしたが、小雪と黎人のバレンタインはこれにて完結とさせて頂きます!


 チョコは待つんじゃない、渡すんだ!……もらう相手も渡す相手もいない自分です(泣)

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