第4話 片想いだと勘違いする紅髪ポニーテールの幼馴染みに僕は伝えたい
↓黒崎黎人 視点
今日の授業が終わる。僕こと黒崎黎人はホームルームを終えて部活に向かう。
そして、今日の朝、小雪と話したことを振り返りながら、小雪と帰るのが楽しみすぎて足早になってしまう。
「今年はどんなチョコをもらえるのかな……」
僕の小学校からの幼馴染み、そして今も続く初恋の女の子の名前は高崎小雪。
この世のものとは思えないほどに美しく綺麗に長く伸びた紅色の髪。
撫でたときのサラサラとした髪触りは最高に気持ちよくて時間があれば今朝だって、永久に綺麗な髪に指を通して撫でていたかった。
そして、ポニーテールによってまとめ降ろされたことで後ろから見える白いうなじはとてつもなく色っぽい。
身長は僕より15cmほど低い155cmくらいだと思うのだけれど全体的にすらっとしていて腕や足も細い。
紅色の長髪に加えて、彼女の名前通り雪のように透き通った染み1つない綺麗で柔らかそうな肌、大人っぽくしかしどこか童顔っぽい小さな顔。
さらに、大きいとはいえないものの確実に年々育ってきている制服を押し上げる大きな膨らみは健全な青少年の目を間違いなく釘づけにしているだろう。
しかも、ウエストは他の女性が羨むであろうくらいにスリムで、日頃から部活に勤しんでいるためか程よく引き締まった脚をシュッと伸ばしながらもたまにスカートが揺れて見える太腿は柔らかそうである。
そんな今となっては誰もが美少女であると認める小雪はクラスや部活でも非常に温和な性格で基本的に誰にでも穏やかな笑みを浮かべて困っている人を見つければ助けになってあげたいと行動する優しさを兼ね備えている。
まぁ、その優しさが危なっかしい小雪の魅力でありながら僕が今最も困っている性格なのだけど。
「小雪……流石に鈍すぎないか?あそこまで言って全部幼馴染みとしては無理があるよぉ~……そんなところも可愛いくて好きなんだけど」
もっとも彼女が成長する前から、小学校4年生の頃にはとっくに恋に落ちていたから見た目の綺麗さとかで惹かれたわけではない。
もちろん容姿もすごく可愛くて、日に日に綺麗になっていく彼女はとても愛おしかった。
そんな彼女だから年を重ねるにつれて告白の回数が増えてめちゃくちゃ焦っていたが、小雪はそれらをばっさりと断っており心の底から安心したのは今でも覚えている。
僕は小雪のことを好きになったのは小雪がもつ、自己犠牲も厭わないほどの寛大な優しさなのではないかなと思う。
曖昧なのは他にも小雪の良いところがありすぎて一つには中々絞れないからだ、でも強いて言うならこれだろうと思う。
◆◆◆
小学生のとき、小雪は世にも珍しい鮮やかな紅い髪は小さな子どもにとっては奇怪のように映り、いじめとはいかなくても少しだけ異端のように見られていた。
だけど、皮肉なことに小雪がいるからクラスは変にまとまった。
小雪を仲間外れにすることによって……。
別にそのことが悪いとは思っていても仕方のないことだと思っている。
小学生児には意識して差別をすることなんてできない……そこがむしろ凶悪であるのだが。
そして、小雪もまた幼いながら気付いていた。
自分が嫌われることによってクラスは団結して行事などスムーズに取り組むことができるということに……。
だから彼女は何も言わず、仲間外れにされてもぐっと堪えて輝かしかった瞳も次第に曇らせていった。
僕もまた小雪の紅い髪に対して綺麗なのにとか、避けてはだめだとか思っていたがクラスの同調圧力には逆らえなかった。
しかし、そんなある日、僕達の転機になる出来事が起こった。
たまたま小雪の近くにいた子が転んでしまって強く鼻を打ち付けたために鼻血を出して泣き出してしまった。
そして周囲にいた誰かが赤い髪をもつ小雪のせいだと言った。
鮮やかな紅色は子ども達にとっては血という負のイメージを植え付けてしまったようだった。
『ち、ちがうよ?わたしのせい……じゃないよ』
責め立てられた小さな小雪は今にも泣きそうで大きな瞳からは輝きを失い、体を親のいない子羊のように震わせていた。
僕の中で何かが暴れ出すのがわかった。
自分でも整理のつけられない感情が体を動かそうとする。
それでもまだ動けなかった。
もうとっくの昔に彼女は限界を迎えていたというのに。
『そんなわけないだろ!おまえのかみがあかいのもそうやってだれかをころばせたからついたんだっ!』
責め立てる子、どうしたらわからない子、言い過ぎだという子、様々いたが、そんな中小雪は震わせていた腕の力を抜いて皆が望むように口を開いた。
『……はい。わたしが、や、やりまし……た』
そして小雪の瞳から溢れた涙を見て、僕の中で何かが切れた……。
気付けば僕は小雪の前に庇うように立って言っていた。
『こゆきちゃんはやってない!そいつがひとりでころんだだけだ!こゆきちゃんのかみはちのいろじゃない!とってもきれいなあかいろなんだっ!』
僕は小雪に振り返ってまっすぐ瞳を見つめた。
ポロポロと涙を溢しながら少しずつ輝きを取り戻していくのを確認した僕は小雪の肩を優しく掴んで言った。
『ぼくがみてた!こゆきちゃんはたってただけ。こゆきちゃんのかみはおはなさんみたいにとってもきれいなあかいろなんだ!』
『わ、わたしは……やって、ない』
そこまで言って泣きついてきた小雪の小さな頭を僕は撫でていた。
確かその時もポニーテールで、初めて褒められた髪型だからか今もなお小雪はポニーテールを続けているのかもしれない。
まぁ、とっても似合っていて可愛くてよしなのだが。
それをきっかけに小雪とは仲良くなり、担任にもこのクラスの異常性に気づき小雪のフォローに入ってくれた。
僕は小雪の家に遊びに行くという体で小雪の赤髪が目立つ両親からも感謝されて家が近かったこともあり家族ぐるみの付き合いが始まり今に至る。
そして、小雪がクラスのことで言っていたのは、私が我慢すればクラス皆が仲良くなってたからとか、髪のことで私がバカにされるのはいいが、両親のことをばかにされるのは嫌だった。とのことだった。
そこに自分の気持ちはなく他人のことしか考えない非常に危険で、それでもまっすぐで優しい彼女の笑顔に僕は心惹かれたんだと今では思う。
まぁ、今でも自分を蔑ろにするのは止めていただきと心から思っているが。
やがて思春期を通じて僕達は異性を知り、恋を知り、こうして高校生になった。
昔のようにベタベタとする幼馴染みではなくなったものの、一番仲のよくて大切な幼馴染みという認識にはお互いなっていると思う。だから、そんな彼女のこと好きにならないのは無理な話である。
そんなこんなで、部活を終えた僕は楽器を片付けて帰宅の準備をする。
帰りは小雪が待っているのであまり待たせてはいけないという思いと純粋に小雪と会うのが楽しみすぎて待ちきれなかった。
ちなみに、唐突かもしれないが、僕は小雪と両想いであることに気付いている。
小雪は僕に対して一方通行の片想いで僕は一生懸命アプローチする小雪の好意に気付かない鈍感野郎と思っているかもしれないが、それは小雪の中だけである。
流石に今日みたいにわざとマフラーを巻いてもらうように仕向けたりハート型のチョコレートを毎年もらっていては嫌でも気付く。
むしろ鈍感なのは小雪のほうで小雪は俺からのアプローチにも幼馴染みだからと気付くことはなく、しかも挙げ句の果てには自分の恋が報われなくてもいいと考える始末である。
今朝も自分で僕に彼女がいないかどうか聞いてきたときに、泣きそうなくらいに綺麗な顔を歪められていて、小雪がゴミのせいにしていたが、流石にバレバレだ。
だから、遠回しではあるものの告白擬きや大切に思っているといった言葉を伝えたのだが全てスルーされてしまった。
穴に入り込む覚悟で伝えたのにも関わらず伝わらないのはたちが悪すぎる。
それでも小雪が浮かべる笑顔を見て嬉しく思ってしまう僕はもう文句なしに小雪に惚れていた。
だから、今日ここで僕はこの関係に終止符をつける。
そして次に2人で踏み出す……と考えていたのだが、一つだけ嫌な予感がしていた。
それは、高校のバレンタインは思っていた以上に盛んであり、当たり前のように手作りを持ち込み皆と交換するのだと。
よく考えてみれば中学校は高校と比べて自由度が高い、中学校のときにお菓子の持ち込みは考えられなかったが高校になっては持ち込むことは別段変わったことではない。
思い返せば何かの行事終わりや季節のイベント毎にお菓子交換なる出来事は発生していた。
それは吹奏楽部に入っている僕には顕著に表れており、僕の右手にはいつもなら中身がスカスカなカバンには義理チョコが溢れんばかりに入っていた。
ここに来てようやく綾ねえ怒濤の勢いで責め立てられた説教の重要性を理解できた。
どうやら、僕はまず小雪の誤解を解くことになりそうだなと思いながら窓の外を眺める。
「見つけた、小雪……好きなんだよ。僕はずっと、小雪のことが。……ねぇ、小雪……自分の気持ちも、僕の気持ちもどうやったら気付いてもらえるかな」
夕暮れの中、1人そわそわと待つ小雪の姿が見えて微笑ましく思い、「フッ」と吹き出してしまう。
覚悟を決めて僕は先日の綾ねえとの会話を思い出しながら小雪が待つ所へ向かっていくのだった。
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私が、投稿している完結小説の後日談の方でもバレンタインに関するお話をあげております。
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刹那の想いを紡ぎ重ね永遠に『俺は幼馴染の美少女と住んでるんだけど、誰よりも優しいそんな彼女とずっと一緒にいたい。ただ、それだけの話』
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