第2話 大好きな幼馴染みとの登校ですっ!
↓高崎小雪 視点
高校に入学してからもうすぐ1年、ようやく見慣れてきた道を私はいつものように黎人くんと一緒に歩きます。
私の方が黎人くんよりも15cmほど身長が小さいのでいつも見上げる形になってしまいますが朝日に照らされる黎人くんの横顔はとてもキラキラしてかっこいいです。
高鳴る鼓動を感じながらもそれをなんとか押さえつけて私は今日も歩きます。
黎人くんは寒いのが苦手なようで「うぅ、さむ」と不満そうに言いながら制服のポケットに両手を入れて歩いています。
寒くて不機嫌なのか少しだけ目つきがちょっとだけ悪いように見えるところが先程までの穏やかな瞳とのギャップがあってかっこよさが際立ちます。
ワックスを使わすに自然に降ろしてまつげ辺りまで程よく伸びている黒髪は綾お姉さんの教育の賜物なのかツンツンして硬そうではありますが上手いこと綺麗に分けられていてかっこいいです。
「昨日さ、世界史の授業があったんだけど、世界史の朝倉先生が毎回結婚予定の奥さんの話をするんだよ」
「あっ、それなら私のクラスでもよく聞きます。確か先生よりも2歳年上の方なんですよね。授業の度にお話を聞かせてもらっているのでよく覚えていますよ」
「そうなんだよ。それで今回も惚気話だと思っていたら、めちゃくちゃ落ち込んでてさ。全然授業にならなかったからまさかの授業中断してわけを聞いたら奥さんと喧嘩したんだってさ。それでなぜか経緯を聞かされた後、皆でどうやって仲直りするか考えさせられたんだよ」
「ふふっ、授業はどこに行ったのですか」
「そうなんだよ、結局授業はほとんど進まなくて仲直りのプランを考えさせられたからさ。まぁ、僕はそれらを無視して休憩してたんだけど」
「そうなのですか?黎人くんも少しは協力してあげたら良かったのに。もし今後彼女さんが……できたときにきっと役に立つと思いますよ」
黎人くんに……彼女……
思わず自分で言ってしまったことにチクりと胸が痛んでしまい、言葉を詰まらせてしまいましたが息継ぎ程度の間で誤魔化せた……はずです。
喧嘩は極力したくありませんが、どうしてもするなら黎人くんじゃないと嫌です……。
なぜか少しだけ動揺した黎人くんが慌てて聞いてきます。
「へ、へぇ~小雪は僕が彼女と喧嘩するとでも?」
「偉そうに言っていますが、そもそも、黎人くんに彼女は……いません、よね?」
いないですよね?……いない、ですよね?
またまた自然な流れで聞いてしまったことに後悔して胸がキリリと悲鳴を上げています。
胸が痛いです。
もし、ここで彼女が実はいるなんて言われてしまったら?
……だ、だめですっ。
ちゃんと笑顔でおめでとうと言ってあげなければ、大切な幼馴染みの幸せを祝福してあげなければいけません。
……泣くのは帰ってから……い、いえそこまで絶対に保たせられません。
せ、せめて黎人くんに見られていないときにですっ……ってあれ?想像しただけで視界が揺らいできてしまいました!い、いけません!このままでは涙が溢れてしまいます、落ち着かないと!
だけど、一度不安に駆り立てられた私の心は止まりません。まだ何も言われてないのに私の胸はキリキリと軋み絞めつけるように呼吸さえも苦しめて痛くて止まりません。
黎人くんも私の様子がおかしいことに気付いたのか立ち止まってこちらの顔を見られてしまいました。私はバッと両手で目を隠して涙を隠します。
「あれ、小雪どうした?目が赤いけど大丈夫か?」
ば、バレてますっ!?
「うぇっ、え、えっと……目にゴミが入ってしまって」
よし、何とか誤魔化せました……よね?
「そうだったんだ、気付けなくてごめんな。よし一旦止まるから落ち着いたら言って」
「は、はい。もう少しだけ……」
ほんとは目にゴミなんか入ってないのに、妄想で泣いちゃっただけなのに止まってくれる上に私の手の隙間から溢れた涙をそっとハンカチで拭ってくれます。
そんな黎人くんの優しさにさっきまで痛んでいた胸の痛みが少しだけ和らいだ気がしました。
そして視界真っ暗のまま黎人くんが続けて言います。
「後さっきの話の続きで重要だから言っとくけど、俺には彼女はいないから安心してね……だ、だからこれからもこうして小雪の側にいられるからっ」
「っ!?ん~!」
唐突な告白に私の心臓は思わず声にならない叫びを上げてしまうくらいに飛び跳ねます。
よかった、どうやら彼女はいないようです……この返事を聞いて私は心の底からホッとします。
そしてこれからも一緒にいてくれると言ってくれる黎人くん。もしや告白!?と胸を高鳴らせましたがこんな朝の登校で平然と言ってしまう黎人くんのことですから、それは私が望む関係……ではなく幼馴染みとして、でなのでしょう。
ひゅーと乾いた風が枯れ葉を運び、熱を急速に冷やしていきます。
何舞い上がっているんですか私は……だめですよ……。
黎人くんは優しくて周囲に気が利くのでこうした人の心には敏感ですぐに察知して解消してくれます。
黎人くんのことですから先程の会話から彼女が出来てしまったら私は黎人くんと関わりが少なくなることを不安に思ったと考えたようで一緒にいるよと私を安心させてくれようとしました。
本当に黎人くんはいい人です。
まぁ、私が本当に安心したのは彼女がいないということなのですけれどね。
少しは私のことを女の子として見て気付いて欲しいのだと思いますがそこだけは黎人くんは鈍感なのでしょうがないです。
でもそんな黎人くんも私は大好きです……いつかちゃんと振り向いてくれたらいいなとは思いますが。
私は隠していた両手を外して視界いっぱいに眩い光を取り込みます。眩しさのあまりまた目を閉じてしまいましたが少しずつ目を慣らしていきます。
そしてようやく視界が元通りになったところで「お待たせしました」と告げて再び歩き出しました。
きっと私の目は少し赤かったでしょうがそこに対して黎人くんが追求してくることはありません。そのまま先程の会話に戻ります。
「それで、昨日の夜に仲直りしているはずだからさ、小雪のクラスは今日世界史の授業があるだろう?先生の様子がどうだったか確認してみてくれる?」
「ふふふ、そうですね。私も結果が気になるので注意しておきますね。とはいっても先生が自分から話しそうなんですけどね」
「確かにな、仲直りできたらめちゃくちゃ惚気てきそうだな」
「それもそうですね。嬉しそうに語る先生の姿を簡単に想像できます。そしてそれが羨ましいです」
私も黎人くんとの惚気話をたくさんしたいです……だから羨ましいです。
今の私には黎人くんとの数え切れない思い出を語り合えてもその中に好意や惚気話を含めることはできません。
それができてしまう朝倉先生夫妻がすごく楽しそうで、そして羨ましい。
またまたチクリと棘の芽を出したときに私の頭がぽんぽんと撫でられたのを感じて「えっ」と口から漏れて見上げます。
すると黎人くんが少しだけ顔を赤くしていました。私もそこでようやく自分が黎人くんに頭を撫でられているのだと気づき顔に熱が集中するのがわかりました。
黎人くんの手ってこんなにも大きくて温かいんですね……。
昔は当たり前のように手を繋いでいましたが、それも小学校低学年くらいまでの記憶でしかなく、気付けば手を繋ぐことはなくなってしまいました。
こうして隣に居ても私達の間には分厚い黒板が間に挟まれているみたいで向こう側にある手に伸ばすことはできません。
そんな記憶のものよりもずっとたくましく成長し男性になった手の平が私の心の中の棘をスッと溶かしていきます。
「そんな羨むことはないよ。小雪とのたくさんの思い出は他の誰とも紡げない僕と小雪、2人だけの大切な思い出だから。この思い出は他の何にも代えられない唯一のものでこれからももっとたくさん増えていくからな」
「…………はい!」
黎人くんの温かい言葉がじーんと胸に染み渡ります。私達の思い出をかけがえのないものだと言ってくれて、そしてこれからも増えていくと言ってくれて……嬉しくて溜まりませんっ。
本当に黎人くん大好きですっ……どうしていつもいつも私がこうやってネガティブになっても心の底から欲しい言葉を黎人くんは本心で伝えてくれます。
こういうときの黎人くんはずるいです。まっすぐに、真剣にで一点の曇りもない清らかな純黒な瞳は逸らしたくても見つめられてしまえば逸らすことなんてできません。
こうして私はまた1つ黎人くんに心惹かれていきます。
もうっ、私をどれだけメロメロにさせてしまうつもりなのでしょうか。鼓動が強くなりすぎて弾け飛んじゃいますよっ!
朝からるんるんな私はもう体が疼くのが止まりません。
あり余るエネルギーが胸の内から溢れて止みません……どれもこれも黎人くんがいけないんですっ。
「それでは高校に行きましょうっ!」
「おいおい、そんな急に元気になってどうしたんだ?」
「ふふふっ、黎人くんのせいですっ」
「はぁ?俺のせいなの?……まっ、いいか。小雪が笑ってるならそれでいいよ」
こうして私達は歩きます。これからも2人で通れたらいい道を、黎人くんと一緒に。
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私が、投稿している完結小説の後日談の方でもバレンタインに関するお話をあげております。
こちらは既にくっついた2人がイチャイチャするだけですが、よければ是非読んで見てください!
刹那の想いを紡ぎ重ね永遠に『俺は幼馴染の美少女と住んでるんだけど、誰よりも優しいそんな彼女とずっと一緒にいたい。ただ、それだけの話』
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