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あの日いったい何があったのかほとんど記憶の中には残っていない。
ひたすらに轟音に耐えかねて耳を塞いでいたような気がする。
ただ、暗闇の中にいる小さな自分とは違い、明滅するステージの上の少女たちの姿が私たちの力の及ばぬ異世界の住人のように映ったことだけを覚えている。
それは人々に勇気を与える天使のようにも、人々を幻惑する悪魔のようにも見えた。
「絵本の中の人魚みたいだ」
こもった音と暗闇の中、彼女はそう思った。
序章なので200字程度ですが以降は2000字程度で進めて参ります。
書ききってから更新しますので次回投稿のタイミングは未定です。