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学園騒乱編〜報告書⑧〜

お待たせしました続きです。

 現在、議会室に居る律華と教職員達はテロリスト達に銃を突きつけら捕縛されている。


「オラっ!動くんじゃねぇーぞ?」


 怯えている教職員がテロリストに脅される中、律華は忌々しげに側にいるテロリストを睨む。


「んだよ、オンナぁー?(バラ)されてぇーのか?」


 顔はマスクをしていて分からないが声からにして男と確信する律華にテロリストは彼女に銃口を突きつける。


「くっ……!」


「嫌なら大人しぃーしとけや」


 もちろん、律華は暴れるつもりはない。

 暴れた所でテロリスト達に蜂の巣にされて殺されるか嬲られ辱められるオチでしかないのと周りの教職員達に被害が及ぶ可能性があるからである。

 だから律華は自身の非力さを憎みながらテロリストを睨む事しか出来ない。


「貴方達…目的は何ですか?」


 律華は議会室に居るテロリスト達に問いかける。

 律華はまず彼等の目的を知らないと話にならないと考えていたが、その目的に大体察しはついていた。


「んなもん、アンタが一番理解してるんちゃうか?」


 銃口を突きつける男が今更という感じで問いを投げ返してくると男は自身のマスクを外す。

 この時、律華は男が返した言葉に深く後悔する。

 何もかもが遅すぎて、この現状を自分で招いてしまった結果だということを…。

 すると律華の側にいた男の無線からノイズが混じりたが男の仲間と思われるテロリストの声が聞こえてくると男は無線を取る。


「どうしたぁ?」


 男は笑みを浮かべながら無線に呼びかける。


《…ボス、第1から第4までの建物の占拠を完了(クリア)しました》


 仲間からの報告に男は満悦に気味の悪い笑みを絶やさない。


「そうかぁ…よぉーやった、こっちもほぼ片付いたさかい、離れの大講堂で人質連れて合流しよかぁ」


 男の返事に仲間は了解(イエッサー)と告げ無線を切る。


「貴方達…まさか生徒達に危害を!?」


 律華は断片的にしか聞こえなかったが最後に男が言った人質は聞こえたので顔を真っ青をにして聞く。


「まぁ、大事な人質やさかい、(バラ)してはおらんやろーけどこの後のアンタ次第やなぁ」


 律華の問いかけに答えると男は横目で彼女舐め回すように視線を送るとその視線に律華は恐怖を感じる。


「まぁ大人しぃー、俺等について来いやぁ」


 男の言葉に律華や教職員達は大人しく従いテロリストに離れの大講堂に連行されていった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 離れの大講堂では小学生から高校生までの生徒達が集められていた。

 生徒の大半はテロリストの恐怖に怯えて涙する者がおり生徒同士身を寄せ合っている。

 そんな光景を作るテロリストや何も出来ない自分に怒りが湧き奥歯を歯噛みする栞は華鈴や三朗に政太、菜月や愛花、愛美、メイドの咲と共に身を寄せていた。


「いったい、警備は何をしているの?」


 栞は誰に問いかけたものでも無く誰にも聞こえないように呟くと咲がそっと耳打ちしてくる。


「恐らく…警備の者は既に…」


「…………」


 咲の言葉に栞は分かっていたが認めたくない事実を突きつけられ言葉を無くす。

 だがこの現状の怒りや恐怖を誰かに向けないと栞もやっていられないのである。

 琹はこの場に居る生徒を束ねる生徒会長だが彼女も1人の生徒であり、恐怖を感じない訳ではない…だが生徒会長の意地でそれを表に出さないように務めている。


「お姉ちゃん……怖いよぅ」


 今にも泣きしそうな愛美は姉の愛花に身を寄せては胸に顔を埋めると彼女は大事な妹を抱きしめ頭を優しく撫でる。


「大丈夫だから…お姉ちゃんが側にいるから…」


「うん……」


 愛花は妹を安心させる様に言うが彼女の体は僅かに震えている。


「愛花ちゃん…大丈夫?」


 菜月が心配そうに愛花に問いかけるがそんな彼女も体が恐怖で体が震えており落ち着かない様子が伺えると愛花は深呼吸をして気丈に振る舞う。


「私は大丈夫だよ、菜月さん」


 愛花はそう言って震える菜月の手を撫でている反対の手で握る。

 一方で政太と三朗は何も出来ない不甲斐無さに悔しさを覚えるが何かをしたとしても自分や他の皆までも殺されるだけなのは明白なので大人しく従っている。


「…政太、君のコネでどうにかならないのかい?」


 三朗が小声で問いかけるが政太は困り顔で答える。


「無茶言うなよ…流石に親父が警察庁でトップだからと言って俺がそんなコネがあると思うか?」


「そう、か…馬鹿な質問を許してくれ」


 少しだけ期待したがあっさりと崩れた希望に落ち込む三朗に政太が今度は問いかける。


「てかコイツ等、一体何が目的なんだろうな…?」


「僕にも分からない…ただ今の僕たちは貴重な人質って所だろうね」


「今は?」


「そう、今はね…」


 目的が分からない正体不明なテロリスト達に2人は悩んでいると大講堂の出入り口の扉が開かれる。

 大勢の生徒が扉に注目するとテロリストに連れられた教職員達や理事長の律華の姿が見受けられる。

 フェイスマスクを外している男が講壇付近に近づくと教職員達に固まって座っていろと告げ、律華には講壇前まで歩けと命じていた。


「さて、と……」


 男は講壇に上がり椅子に座りそう呟くと律華に見下ろす。


「んじゃ、そろそろ要求聞いてもらおーか?」


「………」


 無言の律華は見下ろす男を睨んでいるが男は笑って喋り続ける。


「おーおー、怖い怖いなぁ〜…だけどそんな顔して無言ならこっちも手段選ばへんでぇー」


 男はそう告げると片手を上げた瞬間、大講堂の中に居るテロリスト達が一斉に囲んでいた大勢の生徒達や教職員達に銃口を向け構える。


「この下衆がっ……」


 律華は苦々しい表情を浮かべながら男に暴言を投げると男は言い返す。


「言いましたやん…アンタ次第やって」


「貴方達は聖骸(クイーン)をどうするつもりなの?」


 律華の問いかけに男は手を下ろすとテロリスト達は構えた銃を下ろし、それを確認した男は律華の質問に答える。


「さぁね?俺も()ってこいとしか言われてねぇーからな」


 律華はこの答えにテロリストの裏には大きな存在が関わっている事を確認すると思案する。


 (聖骸(クイーン)の存在はごく一部の政府上層部と代々学園の理事長しか知らない情報…そんな情報を知っていると言う事は上層部に内通者か裏切り者が居るのかそれとも他国の人間か…)

 

 思案していると男はお見通しと言わんばかりの笑みを浮かべながら話しかけてくる。


「どうせ頭ん中で色々と考え巡らせてる所なんやろーけどアンタが考えてるより事は深いって事や」


「なら、貴方のバックに居る人について教えて欲しいものね?」


 笑みを浮かべる男にそう尋ねると男は驚いて大声で笑い始める。


「…アンタ面白い事言うなぁ〜、知ってどうするんや?」


「それは話をつけ……」


「無駄やし辞めときぃーや」


 律華が答え終わる前に男はきっぱりと告げた。

 その答えに納得がいかない律華は男に問いかけようとすると、男はそのまま律華に話を続けた。


「よう考えてみてみぃーや、普通お偉いさん通すのにいきなりこんな強硬手段とるんやで?」


 確かに考えれば分かる答えに冷静さを欠いてたとはいえ我ながらアホな返答をしてしまったのだと呆れる。


「まぁ、時間は限られてるけど…ゆっくり話しよかー」


 大勢の生徒や教職員達が2人を静かに見守る中、男は笑みを浮かべながら律華にそう告げた。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「うっわ…仮眠してたらいつの間にか占拠されてたとかマジで洒落にならんって…」


 五十代のメタボおじさんは学園内の廊下のど真ん中で学校によくある防犯用サスマタを突き立てる様に構え、そう感想を述べると廊下の奥から向かって来るテロリスト達を棒術の要領で次々と無力化していく。

 まずはサスマタの柄で人体の急所を突き体勢を崩すと今度は反対に回転させU字になっている部分でテロリストの顔面や顎、後頭部に当てて気絶させては次の標的に切り替えては同様に先程の流れで気絶させていく行動を繰り返し(おこ)なっている。

 テロリスト達もメタボおじさんのサスマタ捌きに驚愕が隠せず警戒しながらも距離を詰めてナイフを構え隙を窺っては奇襲を仕掛けたり離れた位置に居るテロリスト達は銃を構えては発砲しているが…結果はどちらも避けられたりサスマタで返り討ちにされ、弾丸は弾き返され唖然としてしまう。

 それでもテロリスト達はあのおっさんやべーぞ!や何で弾丸避けたり弾き返せるんだよ!?など驚きの声を上げながら必死にメタボおじさんの無力化を図るが

抵抗虚しく数分後には気絶で意識の無いテロリスト達がゴミ山の様に積み上げられる。


「見ろ、人がゴミのようだ!」


 メタボおじさんは調子に乗って、某グラサンをかけた大佐風にそう叫ぶがその叫びは誰にも聞こえず誰も居ない廊下に響いては消えていった。

 どうしてこうなったのかはテロリスト達が学園の生徒や教職員達を大講堂に連れて行く数十分前に遡る。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ふぁーっ……」


 管理人室で大きな欠伸と共に目が覚めたメタボおじさんこと天ヶ崎優人は現在の時刻を確認する為、部屋に掛けてある時計を確認するが深く後悔する。


「……寝過ぎた」



 現在昼前の11時頃であり普通ならこの時間帯は清掃や中央庭園の花壇に水やりをしている筈なのだが学園内の戸締まりをして帰った後、目の痛みや身体の痛みであまり寝れなかった所為か朝の日課を終わらした後いつの間にか寝てしまい現状寝過ごした。


「だいぶ寝てしまったし、とりあえず早めに学園での日課を済ませてしまおうか…」


 とりあえず、変装のチェックと準備を済まして中央庭園に向かうか……。


「にしても…何か変だな…いつもなら生徒達や教職員達の声が聞こえる筈なのに全く聞こえないなんて…」


 そう言って管理人室の扉に手をかけて外に出て南校舎を目指す。


「いちいち校舎を経由しないと中央庭園に向かえないのは面倒だな…」


 一応校舎を経由すると言っても中に入る訳ではなく渡り廊下を通るだけなので、さして手間では無いがあまり人通りが多い所は実際には避けたい部分である。


「……やっぱり変だな」


 南校舎の渡り廊下付近で異変が気になりだす。

 耳を澄ましても授業の音や声など一切聞こえないのである。


「……何故だ?」


 自分の身体能力が落ちた訳でも無いし他の要因にしても思い当たりがない…と考えた所で一つの答えに思い当たる。


「……まさか、な」


 俺は中央庭園に向かうのは辞めて、そのまま校舎内に侵入する。


(もし、違ったら謝れば良いだけだしな)


 校舎内に侵入はしたが物音一つ無く自分の足音だけが廊下に響く。

 辺りを警戒しつつ校舎内の階段を登り上階を目指しながら教室などを探索する。


「……誰1人居ない」


 探索してみたが、どの教室や部屋にも誰1人おらず廊下でも誰ともすれ違うことが無かった。


(これらの現状と情報をまとめると、バカでも分かる答えだよな…)


 答えが見えて行動を開始しようと歩き始めると人の気配がしたので無人の部屋に入り身を隠す。

 声や足音からして3〜4人の人数が一緒に行動してる感じなので教室窓からこっそり廊下を窺う。


「……おいおい、本当寝てる場合じゃ無かったな……てか良く俺寝てて無事だったな」


 廊下には顔はフェイスマスクで隠れて分からないが4人の武装した人物達が立っており話し声が聞こえたので扉越しに耳を澄ます。


(何を話してるんだ……?)


「……クリア…他の校舎の…クリアして」


「人質…どこ……大講堂……」


「早いとこ……戻ろ……ボスが…」


「その前……ここ…人が居た…確認…」


 会話は途切れ途切れでしか聞こえなかったが大体の内容は容易に分かる。


(てか、気をつけて入ったけど見られてたか……相手も中々の手練れだな……よく訓練されている)


 内心感心しつつ部屋の中を見渡す。

 幸いこの部屋が清掃用具や備品などが置かれている物置部屋みたいなので、もしかしたら武器になりそうな物が見つかるかもしれないと物音を立てない様に静かに探す。


(何か無ぇーかな…)


 ふと、隅にあったロッカーが気になり開けてみると防犯対策用のサスマタが入っていたので、それを手に取る。


(…無いよりはマシか)


 サスマタは新品の状態で置いてあったので耐久度の確認も心配無さそうなので物置部屋から出て武装した人間とご対面しに行く。


「おやおや、これはえらいお客さんが来られてますね…」


 廊下に出た俺がそう呟くと気付いて居なかったのか慌てて武装した人物達はこちらに銃口を向けてける。

 慌てていたとは言え銃口の先はちゃんと的確に俺の頭を捉えている。


(なるほど…敵影探索や戦闘スキルは中々のものだけど少し気が緩んでたのは減点だな……)


 俺は残念でため息を吐くと武装した人物達は苛立ちを見せ始める。


(これくらいの挑発に乗ってくるなら3流だな…)


 武装人物達の様子を確認しながら思っていると相手の1人がこちらに声をかけてくる。


「おい、おっさん!その手に持っている物を床に置いて両手を上げ頭の後ろに置け!」


 声をかけてきた人物は銃を構えながら一歩一歩慎重に近づき他の3人も彼に続いてこちらに近づく。

 俺は彼等の要求通りにその場にサスマタを置くと両手を挙げ頭の後ろに置く。


「これでいいかのぉ?」


 俺は演技っぽくわざとそう尋ねると彼等の後方に居た人物以外が素早く俺に駆け寄ってくる。

 …勿論銃口は向けたままだけど。


 「…前言撤回、全くもってダメダメだな」


 俺はそう呟くと姿勢を低くして俺も相手に走って駆け寄る。

 予想外な俺の行動に3人は立ち止まり構えていたグロック17で発砲してきたので少しの動きで左右に回避しながら走って相手に向かう。

 彼等の迎撃は止まらず何発も撃ち続けるが全くもって俺に当たらないので驚愕と困惑を隠せず、なおも撃ち続けるが俺は距離は詰め、後数メートル範囲まで彼等に近づいていた。


「このおっさんなんなんだよ!?」


「嘘だろ……!?」


「くそっ!くそっ!!」


 彼等3人とも信じ難い現状に思っていた事を口に出してしまう。

 

「…まずは1人目」


 距離を完全に詰めきった俺は目の前の人物をCQC(近接格闘)で素早く相手のみぞおちに左ストレートを決め相手の体勢を崩し、すかさず手に持っている銃のトリガーに指を入れ相手がトリガー引けないようにすると銃ごと手を捻り相手から銃を奪う。

 続いてその近くに居る残り2人の内1人に裏拳を腹部めがけて打ち込み流れる様に相手の片腕を掴みながら背後に回り拘束するともう一人に銃口を向ける。


「2人目、3人目…」


 そう呟いて向かい合う相手の足を奪った銃で撃ち抜くき銃床で拘束した人物の頭を殴る。

 その後、撃たれて膝をつく相手を回し蹴りで頭にクリーンヒットさせ2名とも気絶させ無力化する。


「はい、お終い!」


 俺はウォーミングアップ感覚で10秒にも満たない時間で3人を無力化して最後の1人に見向きする。


「……………」


 驚いているのかそれとも分析しているのか分からないが相対している人物は何も喋らず動きもせずこちらをじっと見ている。


「まだ続けるかね?」


 俺は警告を含めて目の前の人物に問いかける。


「……貴方、何者なの?」


 無言で立ってこちらを見ていたその人物は俺にそう問いかけると先程の俺の答えを返すかの様に腰からぶら下げているシースからコンバットナイフを抜き戦闘体勢をとる。


(…隙が無いな)


 どうやら目の前に居る人物は他の3人より相当な手練れだと確信する。

 どうやら離れた位置に居たのは俺の事を警戒して離れて戦闘を見物してた事を理解し、俺は弾が空になった銃を捨て気絶させた3人の内、1人からコンバットナイフを拝借して構える。

 お互いが構えながら牽制し合う中、俺は先程の相手からの問いに答える。


「私は…ただの用務員でメタボなおじさんだよ」


 そう告げた後、2人の刃が混じり素早い斬撃の応酬が始まりお互い避けては受け流し、斬撃を繰り出したりの攻防を繰り広げる。


(最初の3人と違って動きが洗練されている…それにこの戦い方を俺は知っている……)


 俺が記憶を遡って考えていると相手は不服そうに話しかけてくる。


「戦ってる最中に考え事とは随分と余裕ですね?」


「いやいや、そんな事はないですよ…?」


 相手のナイフ捌きを受け流しながら答えを返すと俺をサマーソルトの要領で蹴り上げそのまま後方に飛び退く。


「もう一度聞きますが…貴方、何者ですか?ただの一般人にしては動きのキャパシティが異常すぎます」


 俺はただの一般人にしてはおかしいと疑問に思うだろうなと思いながらちゃんと答える義理も無いので適当にはぐらかすと相手は着用していたフェイスマスクと頭に巻いていたバンダナを脱ぎ捨てる。


「まぁ、答えても答えなくても貴方にはここで大人しく捕縛されて貰います」


 フェイスマスク等を脱ぎ捨て紅の髪色を靡かす敵対者の…彼女の顔を確認し思い出す。


(確か…(れん)、だったな)


 どうりでさっきのナイフ捌きを知っている筈だと納得する。

 小さい頃、咲に連れられて天ヶ崎家の直属部隊の組み手演習を一度だけ見に行った時に彼女と会っている。

 その時はまだ、咲は新人隊員でその時の指導者が蓮さんだった筈……。



 ヒュッ―――――!!


「っ!?」


 思い出していた所で動きがさらに速くなり鋭い斬撃を繰り出す蓮に有無を言わさず俺は意識を戻される。


「先程も言いましたが、戦闘中に考え事は感心しませんね…女だからと言って侮っていると死にますよ?」


「侮っていませんけどね……」


 基本、俺自身は相対する者を侮る事はしておらず嘘は言っていない。

 彼女の動きは洗練されていて且つ鋭い斬撃とテクニックで圧倒してくるのだが…ただそれだけで俺は本気を出しておらず子供の戯れ合い(じゃれあい)感覚で相手の攻撃を受け流しながら相手をしている。

 それに早急に勝負を決めようとして急に激しい動きをすればどうなるか分かりきっている。


「はぁ…はぁ……」


  連撃を繰り出す彼女だが先程より僅かに息が上がっており疲れが見てとれる。


「…どうされましたか?」


 俺は彼女に問いかけ構えるナイフを下ろすと彼女は俺から距離を取り体勢を立て直す。


「驚愕ですね…貴方の様なご老人にここまで容易く攻撃を無力化されるなんて…私もまだまだですね」


 自分の技量が通じなかったのか軽く落ち込みを見せる彼女だが時間は有限なので、こちらも一気に勝負を決めにかかる。


「いえいえ…そんな事はありませんが、時間もあまり御座いませんのでそろそろ終わらせましょうか…」


 俺は彼女にそう告げ、立っていた位置から姿を消すと瞬時に彼女の眼前まで差し迫った。

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