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学園騒乱編〜報告書⑥〜

連投最後です!

 天ヶ崎 栞は先行して歩く無名と華鈴を見つめながら幼馴染みの愛花と菜月、三朗に政太達と並んで歩く。


「ほんと…どうなっているのかしら…」


 困惑と驚きを隠せずにいた栞は頭を抱え呟くように言い放つと他の4人も困ったように苦笑する。


「まぁ…当然の反応ですよね…」


「私達も最初会った時同じ反応だったしね〜」


「俺達ですら気まず過ぎてどうしようかって悩んでたからな〜」


「本当に似てるとかの次元じゃ無くて瓜二つだからね…その気持ちが凄く分かるよ…」


 2年生グループは各々の感想を述べる。


「…確かに声や性別が違いますが愛花さん達の先程の判断と対応は正しかったと痛感致しましたわ……世の中知らなかった方が良い事ってあるのね…これは姉様に会わさない方が良いわね…」


 琹は驚愕のあまり数分前の元気さは消え声のトーンがガタ落ちである。




〜〜〜〜〜〜数分前〜〜〜〜〜〜〜〜





「ゆ、ゆゆ…優人お兄様…なのですか!?」


 栞の眼前には死んだ兄の顔があり驚愕の事態に平常心が保てず困惑する。


「その方がどんな方なのか存じ上げませんが、まず私は女で御座います」


「へ、えっ!?」


 困惑のあまり無名の反論についていけず、栞はまた素っ頓狂な声をあげる。


「琹さん、実は…」


 三朗は栞を呼び何故顔を見せないようにしていたのか説明する。


「…そう、だったんですね…」


 内容としては自分達がこの学園の理事長と生徒会長に現時点で顔を見られるのは誤解等を招く可能性があるからなるべく見せないようにしてほしい事を失礼を承知で無名にお願いしていた。

 そう説明を聞き終わると栞は自分の早とちりで周りや無名に失礼な態度を取ってしまった事に落ち込み全員に謝罪する。


「先程は私の早とちりで皆様に失礼な態度を取ってしまい申し訳ごさいません」


 深々と頭を下げる彼女に無名以外の5人は気にしていないので大丈夫と伝えると無名も続いて話す。


「私は琹さんが皆さんに謝ったので気にしておりません…それにこちらも栞さんのご質問に対してお答えしなかったのが余計に現状をややこしくしてしまった原因があるのでこちらこそ大変申し訳ございません」


 続いて話す無名もそう伝えた後、栞に頭を下げる光景が約数分前の出来事で現在に至る。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…とりあえず、現状お父様に確認が出来ない以上、私が責任者として皆さんと同行します」


 栞は全員にそう伝えて同行する形で進むなか最後に豪華絢爛な一流ホテルの大広間の広さはある食堂に一行は訪れる。


「めっちゃ綺麗でしょ?ここが学園(うち)の食堂で学食とか安いのに味はプロレベルの美味しさなんだよ!!」


 華鈴が胸を張って自慢げに言ってきたので無名は微笑み楽しく会話する。

 それを眺める2年生組と栞は頭では分かってはいるがどうしても心の奥底で無名を今は亡き大切な人と姿を重ねてしまう。


 ピロロロ…


 ピロロロロ…


 突如、スマホの呼び出し音が鳴り響く。

 一行は自分のかと思い確認していると呼び出し音が鳴っているスマホの持ち主は無名であり、彼女は画面を確認すると曇った表情を見せるとそのまま数秒眺めた電話に出る。


「…はい、私です」


 彼女は電話の相手と話し何度か頷いた後、通話を切ると通話を見守っていた彼等に申し訳なさそうに向き直る。


「皆さん、すみません」


「何か、あったのですか?」


 愛花は彼女の変わった様子に心配して問いかける。


「実は…急な予定が入ってしまってすぐに戻らないといけなくなってしまい、素敵なお誘いをしていただいたのに行けなくなってしまいすみません…」


 無名はそう言って頭を下げる。


「大丈夫っすよ、また今度行きしょ!」


 華鈴は気さくに返事すると無名は頭を上げた後、お礼を述べ急いで校門に向かう。


「…行っちゃった」


 華鈴が名残惜しそうに呟くと愛花と政太も口を開く。


「無名さん、良い人だったね」


「そーだよな、第一印象は本当ある意味びっくりしたけど…」


 その言葉に三朗が同意するかのように苦笑していると、菜月が何かに気付いたかのように皆んなに問いを投げかける。


「無名っち…校門までの帰り道分かるのかな…?」


『………あっ』


 その言葉に数間置いた後全員に不安がよぎる。

 現在位置が広大な学園敷地内の奥の方に位置する食堂に居る為、校門までの道のりが遠く複雑な為、よく新入生や転校生など初めて訪れる人は必ず道に迷うのである。


「………まずいですわね」


 今まで口数が少なかった栞が早々に口にし、すぐさま無名の後を追うように来た道を全員で戻りながら無名の姿を探すが見つからず、校門前まで戻ってみたが無名の姿は確認できなかった。

 2年生一行がどうしたらよいものかと思案していると栞が無名の連絡先は知らないのですか?と仲が良さそうだった華鈴に尋ねると彼女は思い出すようにそう言えば…と言って胸ポケットを探ると一枚の紙切れを取り出す。


「無名さんを案内してる時に渡されたやつなんすけどやっぱり、これ無名さんのメルアド載ってる!!」


 華鈴の言葉に一同は彼女の周囲に集まり件の紙切れを見ると、何かあればご連絡下さいの一文とその下に無名のメルアドが記載されている。

 栞は華鈴にメールで彼女が今何処に居るのか聞いてみてと言った後、続けて闇雲に探しても無意味なので返信が来るまでこの場で待機してみては?と皆んなに提案し全員は無名からの返事が返ってくるまで待つ事にした。

 華鈴が無名にメールを送って数分後、スマホから受信音が鳴り響くと華鈴はスマホのロックを解除すると無名からの返信がきており華鈴は急ぎ内容を確認すると一安心する。


「無名さん、ちゃんと帰れたって!!」


 その言葉に一同も一安心し喜んでいる中、栞はふと疑問が浮かぶ。


(それにしても…彼女、本当に初めて学園に来た方なのかしら…?この学園はある事情で複雑な地形にしているのは確かなので迷いやすいのは確かですが…)

 

 そう思っていると、いつの間にか大はしゃぎする華鈴に呼ばれている事に気付き、疑問を頭の隅に追いやり大はしゃぎする彼女に溜め息を吐きながら彼女達と一緒に帰路に向かう事にしたのであった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「やっぱり結構言われるものですね……」


 木の影から先程まで一緒に居た者達を見つめる無名はポツリと呟く。

 彼女達が何か言い合った後、懐のスマホが鳴り確認すると華鈴からメールが一件届いていたので見てみると何処に居ますか?ちゃんと帰れましたか?と心配する文面にどうしてそこまで心配する必要があるのかと悩んでいると、ある失態に気付く。


(…やってしまいましたわ…ここの学園は初めて訪れた人は複雑な地形や道に迷うのが定番でしたわね…)


 自分が迷わず自然に帰れた事に深く後悔する。

 とりあえず華鈴のメールに今は迎えの車に乗って自宅に向かっております、ご心配下さってありがとうございます…と自然に帰れた事に触れず返信した後、また6人を影から見つめると華鈴は皆んなにメールの内容を話している感じが見える。

 

「とりあえずこれで様子見ですわね…」


 ふと栞を見ると彼女はどこか腑に落ち無さそうな感じで考え事をしていたので内心苦笑いである。


(相変わらず昔から感の良い子ですね…やはりこの姿ではリスクが高いので一度しか出来無さそうですね)


 そう無名は…天ヶ崎 優人は考えるのであった。


(どうやら、彼女達も帰る頃合いの様ですし…私の仕事を務めるとしましょう…)


 優人は旧友や妹が帰路に向かうのを見送った後、そのまま学園内に向かう。

 たが、先程までは旧友達と一緒に学園案内と言う名目で潜入できたが今はそう簡単では無く今度は一人でしかも制服が違う為、他人の目を欺く事は簡単では無い。


(まぁ、スーツの性能でどうにかなるかしら…)


 木陰に隠れそう思いながら優人は着ていた制服を全て脱ぎ始めると黒の特殊キャットスーツが(あらわ)になると向こうから1人の女子生徒が通り過ぎようとするので優人は彼女の制服を全体を見るように木陰から隠れて観察するとキャットスーツが彼女と同じ天ヶ崎学園の制服に変わっていく。


(幸先が良いですね…スーツの機能も良好ですし、これなら潜入にも支障は無いでしょう)


 準備が整い木陰から姿を現す優人は何気ない顔で学園内の調査を開始する。

 優人が目指す情報源は東西南北に位置する棟と離れた位置にある多目的棟、真ん中に位置する中央棟の内の中央棟にある議会室。

 そこで今回、理事長…律華姉さんと教師がこの学園に関わるナニかに対しての議題を討論しているのだと睨み足早に進む。

 何人かの生徒とすれ違う中、中央棟に入り生徒や人1人も見えずすれ違わない中もうすぐ目的地の議会室に着く寸前で聞き覚えのある声が怒気を含みながら外まで聞こえるくらいに声を荒げている。


(…どうしたのでしょうか?)


 優人は中の緊迫しているであろう様子に扉まで急いで忍び寄り扉を少し開き中の様子を窺いながら聞き耳を立てると律華姉さんと教師達が口論をしている様子が窺えた。


「ですからっ!学生達の身を案じ休校にするべきではっ!?」


「そうなれば、かのテロリスト達に屈服した事になりますし天ヶ崎家の名に傷がつきますわっ!」


(これは教師と…律華姉さんの声だな…他にも教職員が何名か居るみたいだが……)


「そんなの生徒の身より大事な事なのですか!?」


「そんなのとは何ですかっ!?代々受け継がれてきた名誉と誇りを私の代で傷付けるなんてありえませんわっ!!」


『――――っ!!』


 その言葉に絶句する何人かの教職員。

 本当にこの小娘は何を言っているのか理解に苦しんでいる用だった。

 途中からですが聞いている私でも分かるくらい無茶苦茶だと思いますもの。


「…それなら」


 1人の老教職員が重々しく口を開く。


「そこまで頑なに休校を拒む理由はなんですか?いくら貴女が理事長であっても、今無茶苦茶な事を仰っている事は貴女自身も理解している筈です…名誉と誇りなんて建前で本当の理由は何ですか?」


 そこまて聞くと律華はそれは……と言って黙ってしまう。


「…貴女は嘘が下手なお方ですね、本当は誰よりも生徒の事を考えている貴女がこんな無茶苦茶な事を言うなんて思えませんね…貴女は何でも1人で抱え込みすぎですよ」


 老教職員にそう言われると図星なのか少し顔を赤く染める律華の姿が窺え、どうして…と呟く。


「こう見えても、貴女との付き合いは長いですからね…こうやって自分が悪人になる事で教職員達や生徒達の為を思って守ろうとしているのでしょう?」


「ち、ちがっ…」


「そろそろ…話してはくれませんかね?前々から貴女が頑なに私達や生徒達と同様に悪人になってまで守ろうとしている使命(もの)を……」


 扉の隙間から周りを覗くと話について行けず困惑する者も居れば理解して聞こうとする姿勢の者、最初から老教職員と同じ様に信じて答えを待つ者。


「―――っ!」


 律華は俯くと喉まで出かかった言葉を飲み込み下唇を噛む。


「……あなた達に話す様な事はありません……休校はしません、これは決定事項です」


 律華は全員にそう告げると続けて言い出す。


「…本日の議会は終了にします…皆さん今日の事務など終え次第帰宅して下さい………」


 律華はそう告げて足早と議会室から出ようとする。


(不味いですわ…隠れなきゃ…)


 優人は急ぎその場を離れ近くな階段に身を隠すと先程までの議会室の扉が勢いよく開かれ律華が出てくると彼女は扉を閉めそれを背にもたれかかる。


「…私はどうしたら良いのでしょうか…お父様、お母様…優人…」


 彼女はそう呟くと優人が身を隠す反対側のほうに向かう。

 その背中を見送る形になった優人は彼女が呟いた助けを叫ぶ呟きに考え込んでいると他の教職員も議会室から出てきては職員室に向かう姿が見えたので優人は急ぎ議会室に忍び込んでみる事にした。

 夕日か差し込む部屋の中は、豪勢な絨毯が敷かれており部屋の真ん中には装飾された大きな円卓や椅子、周りには綺麗な調度品が置かれている。


(流石に情報になる様な物は無いかしら…)


 そう思いながらも慎重に部屋を物色していると一枚の封筒が床に落ちている事に気付き拾い上げると中身を見る事にした。


(…これは…そう言う事でしたか……)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…迂闊でしたわ」


 血相変えた彼女はそう呟くと急いで踵を返し先程まで居た部屋に戻ろうと足早に向かう。


(アレを他の人達に見られる訳には行きません…)


 彼女は先程まで居た議会室の前まで着くと急ぎ扉を開くと中には誰も居らずそのまま自分が座ってた席に向かい辺りを探すと椅子の下に一枚の封筒が落ちている事を確認して拾いあげる。


「良かった…ありましたわ」


 彼女は見つかった安堵感からそう口から漏らす。


(見られた心配も無さそうですね…もし見られたのであればこの手紙は教職員達の手に渡り問い詰められた事でしょう…)


 そう思った彼女、天ヶ崎 律華は封筒を開き何度も見た手紙の内容を見る。


【最終通告…再三なる通告を無視する愚かな天ヶ崎理事長、これが我等の最後の通告となる…これ以上我等の通告を無視し学園を完全閉鎖せず、政府と天ヶ崎家が秘密裏に隠し、厳重に守っている聖骸(クイーン)を渡さなければ学園に大きな災禍と無関係な者の血が降り注ぐであろう…】


 何度も見る脅迫文に律華は下唇を噛み締めると一筋の血がツツーと下唇から流れる。


「教職員の皆さんが言う事が正しいのは本当は分かっています…私だって本当は…可愛い生徒達やこんな私を慕ってついて来てくれた教職員の皆さんを巻き込んでまで私は使命を全うしたく無いです…ですが天ヶ崎家の長女であり学園の理事長として酷く蔑まれても約束された使命(呪い)を果たさなければならない……」


 誰も居ない議会室で力無く口にする律華の目に涙が溢れる。

 ふと入ってきた扉の方から気配を感じその方向を見ると一瞬人影が見えたので慌てて涙を拭い誰!?と叫んで急いで扉まで駆け寄り勢いよく開けるが…。


「…誰も…居ない?」


 確かに人影がこちらを窺うように見ていた筈なのだが…と律華は思ったが弱気になったせいで変に見間違ったのだろうと思いそのまま部屋を出て鍵を閉める。

 理事長室に向かおうと夕日が窓から差し込む廊下を歩こうとすると少し離れた所に1人の生徒が窓越しに夕陽を悲しげに見つめている。

 その横顔を見た瞬間、律華は言葉に詰まり心臓の鼓動が速くなる。


「―――――っ!?」


 その横顔は今までどんなに会いたいと思っていても一生会えないと分かっていた良く知っている人物。


(そんな……嘘よ……)


 頭では否定していても目の前の現実にさらに心臓の鼓動は速くなり、その場から一歩も進めずにいる。


(だって…貴方はもう……)


 そう自分に言い聞かせ、分かってはいる分かってはいるけど目の前の現実に否定が追いつけずにいると、その人物はそのまま律華に背を向け何処かに去っていこうと階段まで進んで行く。


「まっ――――」


 待ってと言葉にして手を伸ばそうとするが言葉が出ず手も動かない。

 その場から動けず言葉も発せれずまるで金縛りにあってるみたいな感覚に陥るが、それでも何とか身体を…足を動かそうとする。


(お願いだから……動いて!!)


 そう強く願い足を動かそうとすると急に金縛りが解けたかのように体が動き戸惑うが、すぐに先程の人物を追いかける。

 律華は一定の距離で追いつけない人物に追いつこうと必死に駆け寄るが追いつけずいつの間にか中央棟から外に出ていた。

 外には色とりどりな花が一面に綺麗に咲き誇る中央庭園(セントラルガーデン)でそこで例の人物を見失ってしまい呆然と立ち尽くす。


「…貴方なの…………優人………?」


 そう寂しげに呟くがその呟きは優しい風に舞う花びらと共に夕焼けに虚しく呑まれ消えていく。


「そう、よね……そんな筈は無いのだから」


 そう自分に言い聞かせる。

 2年前の事件は悪い夢か嘘であって欲しかった…そんな儚き希望は目の前に横たわる黒くなった弟の亡骸(現実)に打ち壊されてしまったのだから。


「はぁ…私………疲れているのかしらね」


 溜め息と共に口からそう漏らすと周りの景色を見て深呼吸を繰り返す。

 何度かしているうちに落ち着きを取り戻し中央棟に戻ろうと考えていると……。


「あのー…?」


「――っ!?」

 

 背後から急に呼びかけられ驚いて振り向くと、現在学園内で会いたく無い人物が立っている。


「あなた………古奈木さん…ですか」


 あまりいい思いがない人物に反応が無愛想になってしまう。


「えぇ…所で理事長はこんな所で何を?」


「貴方には関係ない事です」


「そうですか……」


 少し寂しげに言う彼に罪悪感が湧く律華は憂鬱な気分になってしまう。


(なんですか…私が悪者みたいじゃないですか…)


「それで、私に何か御用ですか?」


 あまり良い気分では無いので呼び止めた用件を聞こうとする。


「いや…先程お見かけした時、今にも消えそうな感じで心配だったものなので」


 そう彼は答えると申し訳なさそうに笑う。

 律華は今の自分はそんな情けなさそうに見えていたのかと落ち込む。


「だ、大丈夫よ!気にしないで下さい!!」


 確かに感傷に浸ってしまい落ち込んでいるのは承知だったが、なんでこんな奴に言われるのよと恥ずかしさのあまり癇癪を起こしたかのように言い放つ。


「……そうですか、もしなんですが」


 古奈木は律華の態度に気にして無い感じにある提案をする。


「何ですか?、まだ用があるならさっさと言ってもらえますか?」


「もし、少しお時間あるなら庭園のテラスで少しお茶をしませんか?」


「はぁ?何でですか?」


 律華はこの男は何を言っているのかと驚く。

 こんな態度で接している相手を誘うなんて馬鹿なのかしらと思っていると古奈木はこちらが思ってる事なぞ全く気にしてる様子もなく会話を続ける。


「まぁまぁ、そんな事仰らずに…ただ年寄りの茶飲み話でも付き合ってもらえればと」


「だから何で私が…貴方に付き合うギリなんてない筈ですが?」


 年上であるが着替えを事故とは言え覗かれた事で関係が修復されておらず、そのせいで律華は彼に対してどうしても態度が悪くなってしまう。


「…まぁ、そこまで仰られるなら…無理にとは言いませんが…」


 流石の古奈木も律華の激しい拒絶に気を落とす。

 律華は彼の落ち込みようを見て余計に罪悪感が込み上げ溜め息を漏らしてしまう。


「はぁ…分かりました、あまりにも断ってしまっては私が悪者扱いされてしまいますし無下にしては天ヶ崎家の名折れですから、少しだけお付き合い致します」


 彼女はそう言って仕方なく古奈木からのティータイムの誘いに応じたのであった。

 その言葉に古奈木は朗らかに微笑みありがとうと伝えると律華を中央庭園テラスの席に導き、テラスの席まで来ると彼は椅子を引き彼女を招く。


「どうぞお座り下さい……」


 彼女は古奈木の紳士的な対応に内心驚くが表には出さず無愛想に答える。


「……どうも」


 流石に同意して来たのにこの無愛想な対応は如何な物だろうとかと思っていると古奈木は気にして無い様子で、いえいえと答えお茶を手早く用意するのであった。

読んで頂いてる皆様へ

読んで下さる皆様つまらないかもしれませんが読んでくださってありがとうございます。

また投稿も不定期であり遅くなってしまう事申し訳なく思います。

まだまだ未熟ですが読んでくださる皆様に面白く思って頂けるよう精進しながら頑張って書きたいと思います。


また、良ければ誤字や読んだ感想など頂ければ幸いです。

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