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学園騒乱編〜報告書④〜

続きです!

 あれからなんだかんだあり2日経過したが後頭部の痛みは引かずさすりながら管理人室で愚痴を漏らす。


「咲の奴、何で俺を殴ったか知らんがマジで殴りやがって…まだ痛ぇーよ」


 今日からまた学園への潜入調査再開だが、ある現状に俺は更に頭を悩ませる。


「1週間経ったけど、これと言って有力な情報源が無ぇ…詳しく探るなら校内に入って調べるしか無いけど……」


 おっさん変装で入ると目を付けられかねないし、先ずこの変装での校内入校は出来なくなってるからな。

 あの姉妹の不興を買わ無ければスムーズだったのに本当ヘマしたな…。


「ちょっとばかし手詰まったな……」


 現状況の忌々しさに呟く。

 まぁ、今回不興を買ったのはあの姉妹に用があったので理事長室に行ったら不運にも着替えている場面に入ってしまい事故で故意は無かったが結果俺が悪い事になっている。

 まぁ…ノックし忘れて入ってしまったから言い返す言葉も無かったけど、だからって校内全面入校禁止にしなくても良いのにな。

 別に強硬手段として潜入したら良い話だけど、事を大きくしたく無いし他にも危険要素を考えるとデメリットしか無いのでこの手は無し…。

 …となると、不本意だがあの潜入方法で攻める方向で考えるしか無いが、流石に知人やあの姉妹を欺けられるかは分からんしな…。

 そうこう考えてると管理人室の扉がノックされる。

 誰だろうか…?


「…はい、どちら様ですか?鍵は開いてますのでどうぞお入り下さい」


 しがれた声でドア越しに居る人物に語りかける。

 

「しっつれいしまぁーす!」


 この元気な声は…と思い声の主を見る


「おやおや…今日も元気だね、華鈴さん」


「おっさんも相変わらずだな!」


 内心おっさん言うな…とは思うが飲み込む。


「今日はどうしたんだい?まだ授業があるんじゃ無いのかい?」


「あれ、おっさん知らないの?」


 …さて?なんだろうか?


「いや、何も聞いちゃおらんが?」


「今日は理事長が全先生と緊急会議開くからお昼までしか授業無いんだよ」


 初耳の内容だな…何かあったのか?


「そうなんか、何かあったのかい?」


 現状況では内部事情に疎いので情報源に近いである華鈴に聞いてみる。


「知らなーい」


 少しでも期待した俺が馬鹿だった。


「さ、さようかいな」


「そんな事よりも、おっさん暇そうだから他にも連れてきたんだ!」


 気を取り直して俺は、華鈴に入ってもらうように促す。


「センパイ達入っても良いですよー」


 華鈴の言葉を合図に男女4人組が入ってくる。

 俺はその4人組を見てこの学園に来た以上分かってはいたが内心驚きを隠せずにいた。

 まず、いかにもスポーツやってる感じの高身長の好青年が口を開く。


「どもっす、高等2年の守口 政汰(もりぐち せいた)っす、よろしくっす!」


「あ、あぁよろしくなぁ」


 あまりにもフレンドリー感丸出しで戸惑いを隠さずに居ると、続いて政汰より少し背が低いオシャレイケメンが口を開く。


「政汰…君はちゃんと挨拶できないのかい?…初めまして用務員さん、僕は清水 三朗(しみず さぶろう)と言います」


「ご丁寧にどうもねぇ、私は三田 古奈木(みた こなき)と言います、よろしくねぇ」


 とりあえずこの学園内での偽名で挨拶を返し笑顔が眩しいオシャレイケメンの三朗と握手する。


「いえ、こちらこそ学園内ではよろしくお願いします。」


 …相変わらず絵になるイケメンっぷりだな、オイ。

 次に目をやるとThe風紀委員長的な黒髪ショートヘアーの子が挨拶してくる。


「初めまして!私は菜月(なつき)牙城 菜月(がじょう なつき)って言います!」


 お前も昔から変わらず元気だなって思いながら、よろしくと返事をする。

 そして、最後の子に視線を向ける。

 軽く三つ編みで結っているおさげの大人しそうな子


「こんにちわ用務員さん」


「こんにちわ、愛花(あいか)さん」


 志野咲 愛花(しのざき あいか)は朝の登校時、挨拶をしてくれる真面目な良い子であり昔からの幼馴染みでもある。


「あれっ?愛花先輩は顔見知りでしたっけ?」


 華鈴が不思議そうに愛花に尋ねる。


「朝に花道部の活動で良く顔を合わせるので知っていますよ」


 そうなんだぁ、と華鈴は答えると俺に尋ねる。


「どうどう?おっさん現役美少女JK3人に囲まれて嬉しい?」


 2年も会ってなかった旧友達との邂逅に皆んな成長したなと思った一方で中身が昔のままで安心感もあった。


「…そうだね、君達の様な若い子に会えて嬉しく思うよ」


 俺はおじさんスーツ越しに会った皆んなを見て色んな想いが込み上げてしんみりした感じに答える。


「あ、あれー?思ってた反応と違う…」


 華鈴は俺の反応に困惑している。

 きっと喜んでいる俺を揶揄いたかっただけなのだろうが俺があまりにもしんみりしてるのでどうしようかと悩んでいる。


「三田さん大丈夫ですか?」


 イケメン三朗は昔変わらずの天然紳士っぷりを発揮しながら優しく問いかけてくる。

 …我ながらこんな事で心が乱されて感傷に浸るとは情け無いと思う。


「あぁ、すまない大丈夫だよ…どうも歳をとると思い出に浸ってしまっていけない」


 俺は見た目を利用してもっともらしい事を言い話題を変える事にする。


「ところで、君達…」


 問われた側の4人は俺を見たので、さっき華鈴から聞けなかった内部情報を得ようとする。


「今日は昼までしか授業が無いという事なのですが何かあったのですか?」


「そうっすねー分かんないっす!」


 好青年のくせに昔から興味のある事以外は頭に留めていないスポーツ馬鹿に内心ため息を吐く。

 それなら他の3人は…と見るが誰も知らなさそうなので聞くのを断念する事にした。

 …やっぱり調べた方が早いかと思い5人にとある提案をする。


「そうだ、君達はこの後は予定はあるのかな?」


「私は今日の花道部は休みなので空いております」


「俺も部活無いっすから暇っすねー」


「僕も今日は選択授業が無いので予定は空いています」


「私は―――…考えたけどなかったよね?」


 菜月は何故か俺に聞いてきたが、お前の用事なんて知るわけないだろと喉まで出かかったが胸中に秘めておく。


「は、はは…自分の予定を人に聞いてくるとは牙城さんは面白い子だね」


 俺がオブラートに包んで答えると愛花が困った顔をして菜月に注意する。


「もう…菜月、そんなこと聞いても用務員さんが困るだけでしょ?」


「はーい」


 見た目しっかりしてそうなのに中身が残念な菜月である。


「アタシも暇っすよー」


 華鈴ちゃんも暇らしいので5人に俺はある頼み事をしてみた。





 〜〜〜学園校門前〜〜〜





「先輩達――お待たせして申し訳ないっす…」


「大丈夫だよ、華鈴さん」


「そそ、私達も今来た所だし」


「華鈴ちゃん走ってきたの?凄い汗かいてるけど大丈夫?」


「だ…大丈夫…っす」


「俺、使ってないタオルあるからそれで拭いたら良いよ」


「守口先輩…ありがとうございます」


 政太は鞄からタオルを取り出し息も絶え絶えな華鈴に渡す。

 5人はあの後用務員から頼まれ事を聞いて快く返事した後、一度自宅に戻り学園に集まった形である。


「それにしても…政太、君良くタオルとか持ってたね?」


 愛花や菜月、三朗は政太がタオルを持っていた事に驚きをあらわす。

 政太は自分にとって興味ない事等はとことん無関心なので学校の課題や必要な物などよく忘れる常習犯であり、そのせいか成績はあまり宜しくない。

 その彼がタオルを持参して来ている事が珍しくてつい聞いてしまったのだが…。


「いや、俺って通学の時も自主練の一環で走り込みしてるからそれの癖で持ってただけ」


 三朗はそれを聞いて、あぁ…いつもの事かと納得して苦笑する。

 それを聞いた愛花や菜月も同じく苦笑し、華鈴は先輩達のその話に?を出しながら首を傾げるのであった。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 校門近くの壁際に潜む人影は5人の存在を見つめ確認すると歩き出す。

 ゆっくりと、確実に、腰まである長い黒髪をなびかせながら亡霊は5人に近づく。

 5人は談笑をして亡霊には気付いて居らず、とうとう距離はあと一歩の所で亡霊は立ち止まる。

 

「こんにちわ」


 亡霊は5人に気付いてもらう為に声をかけ挨拶をする。

 声をかけられた5人はびっくりして全員同時に振り向くとそこには1人の女子が他校の制服を身にまとって立っており5人からの返事を待っている。

 華鈴はすぐに待ち合わせの人だと思い話しかける。


「こんにちわ!…もしかしておっさ…じゃなくて用務員のおっちゃんが話してた方です…よね?」


「えぇ、そうですわ。」


 話しかけられた亡霊は返事を返し華鈴の顔を見据える。

 クールそうな印象と前髪から覗かせる切れ長の目から冷たい視線に華鈴は身をこわばらせ、先輩達に助けを求めようと4人を見るが全員驚愕のあまり目を見開き声を出せずにいる。


「せ、先輩達?」


 華鈴は4人のただならぬ雰囲気に心配になって声をかけると、三朗が意を決したかの様に彼女に問いかける。


「き、君は……優人君なのか…?」


 その言葉に愛花、菜月、政太は息を呑み華鈴はえっ?優人君って誰?しかも相手男子じゃなくて女子だよ?しかも彼女と先輩達を交互に見る。

 一方、彼女は目を細め怪訝そうに4人を見るがすぐに可憐な笑顔を見せ答える。


「――ふふっ…男性に間違われるなんて生まれて初めてです」

 

 笑いながら答えた彼女は笑いが落ち着くとスカートの裾を摘みながら礼儀正しくお辞儀をする。


「皆様初めまして、本日は学園の案内にお時間を頂き誠に感謝致します…」


 彼女はそう言って一間置き頭を上げる。


「私は、不知火 無名(しらぬい むめい)と申します…性は違いますが古奈木おじ様の姪で御座います」


 無名はそう言ってまた可憐な笑顔を見せるのであった。

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