〜不穏の兆し〜
おはようございます。
次のお話出来ました〜。
〜アストレイア王国・王城内〜
執務室の扉をノックする。
少し間が空いた後、威厳を感じさせる声で『入れ』の一言が聞こえると私は中に入る。
執務室内には机に向かい山盛りに積まれた重要書類を確認しながら処理をしていく歴戦を生き抜いた風格を醸し出す男とその傍に背筋を伸ばして控えてる執事服を着た白髪の初老の男が居た。
「失礼します陛下。王国騎士団第三部隊団長、ユーシェ・フィーネ・アストレイア報告に参りました」
机に座る国王陛下に用件を伝えその場に跪こうとする。
「よい、楽にしておれ」
「はっ!」
「すぐに報告を聞きたいが、書類を片付けるのでソファーに座って少し待っておれ」
「畏まりました」
陛下に言われるがまま応接用のソファーに腰をかけ待っていると先程の初老の男性…陛下の専属執事であるセバスが私に紅茶を差し出してくれる。
「セバス、ありがとう」
セバスにお礼を伝えると彼は優しく微笑み陛下の側に戻ると表情が一変し厳しい目つきで陛下を見る。
あぁ…またか、と私は心の中で苦笑する。
陛下はよく仕事を抜け出しては後でセバスと王妃に叱られる…もといお仕置きされるので今日はセバスが見張りとして目を光らせているのである。
陛下とセバスは古くからの付き合いで戦友でもあり、更に陛下はセバスと王妃には頭が上がらないらしくそんな監視の中、陛下は黙々と書類作業を処理を進める。
大体10分位は経った所で声が上がる。
「くあぁ〜、終わったぞっ!セバス!!」
机の書類を片した陛下は欠伸を交えながら背伸びしてセバスに終わりを告げる。
セバスも処理が終わった書類を確認して陛下に微笑みをかけると陛下の表情は一変し、だらしない顔をこちらに向ける。
「ユーシェちゅわぁーーーん!!パパお仕事終わったから癒してぇぇぇぇーーーー!!」
陛下もとい私の父、ジラード・ガルディアス・アストレイアは私に向かってダイブしてくるが……飲みかけのティーカップを持ってスッと避ける。
「ぐへぇ………」
見事ソファーに顔面から突っ込んだ陛下は変な声を上げながらその場に突っ伏す。
「陛下……そのスキンシップはどうにかならないのですか?」
陛下にそう声をかけると勢いよくその場に立ちキメ顔で言う。
「愛故に無理だっ!!さぁ大人しくパパにハグされるが良い!!」
「斬りますよ?」
「酷いっ!?」
ざめざめと泣く陛下を尻目にして反対側のソファー座り紅茶を飲む。
「陛下、報告したいのですが……」
報告する事が山積みなので早く終わらしたいのだが……。
「パパと呼んでくれなきゃお話し聞かないもん!!」
「陛下、いい歳して語尾に"もん"とか付けないで下さい気持ち悪いです」
「セバスっ!!我が愛娘が反抗期だっ!!私は悲しくて死にそうだ!!」
セバスに泣きつく陛下……溜め息しか出ない。
陛下は良き王でもあり良き父でもある。
国や民、家族すらも深く愛して接している。
特に私達3姉妹を溺愛してくれているのだが…親バカすぎて困る事が多々ある。
「ジラード…いつもの事では……毎度スキンシップが激し過ぎるんですよ……そのスキンシップを辞めてみれば?」
セバスの言葉に陛下はこの世の終わりみたいな顔をする。
「セバス……私に死ねと申すのか?」
「……そんな事では死にませんよ?」
「否っ!!愛娘から愛娘養分を補給しないと私は死んでしまう!!」
断言する陛下にセバスは頭を悩ませ溜め息を吐く。
「ならいっその事一回死んで下さい」
「ユーシェ……パパに向かって酷くない?」
私を見る陛下はマジの涙目である。
このままだと話が終わらない……じゃなくて始まりすらしない。
「お父様、話が進まないのでそろそろいい加減にしてもらえませんか?」
睨みながらそう言うと血の気が引いた顔で俯き大人しく向かいに座る陛下はボソっと最近のユーシェはユリアに似て怖いのだ……と呟くとそれを見て苦笑するセバス。
ちなみユリアとは私のお母様の名前である。
ようやく報告出来る場が整ったので報告を始める。
今回の報告は実地訓練での不測な襲撃にユト君との出会い彼に助けられた事、お礼の為王国までは来たがはぐれて見失ってしまった事等を報告した。
襲撃の話をした際はセバスや陛下も驚愕の声をあげた後『私の大事な愛娘をっ!許さんぞぉぉぉっ!!』と怒り狂う陛下をセバスと2人で収めるのが大変だった。
その後はユト君に助けられてお礼の為アストレイアまで帰ってきたが見失い、現在行方不明である事を話す。
「ふむ………」
陛下は報告を聞き終わると顎を撫でる様に考える。
セバスは私の報告を聞き終わると私と陛下に新しく紅茶を淹れてくれる。
「またユト君に後から聞いた話ですが……私達以外に人の気配があったらしく隠れてこちらの様子を観察した後消えたらしいです」
「そうか…その謎の人物も気になるな。ただの一般人ならあの森には立ち入らんだろし、更に冒険者って線も無いだろう……。その謎の人物が襲撃に関係する者とは断言できんが注意はした方が良いだろう。暫くはユーシェの1人での行動や新兵の実地訓練などは控えた方が良いだろうな…今回は失敗に終わったがまた襲われる可能性は高かろう」
「承知いたしました」
新兵しか居ない実地訓練を狙った襲撃に見えるが明らかに私を狙った襲撃である。
その証拠に普段なら現れるはずのないジェネラルオークが現れ私の首を要求して来た。
「そのユトと言う少年には我が愛娘を救ってくれた感謝せんといかんな……」
「はい…ユト君が助けてくれなかったら新兵や私達はここには居なかったでしょうから……」
私は助けてもらった時の事を思い出すと赤面してしまう。
あの時は色々あって思い返す事は無かったけど落ち着いて今思い返すと中々女の子なら憧れる場面である。
ピンチの時英雄が救ってくれるそんなお伽噺の様な場面……。
「ま、まさか……ユーシェ……惚れたのか!?」
「へっ……?」
私の顔を見て陛下の一言に更に顔が熱くなる。
「そ、そそんな事は………」
慌てて違うと言おうとするが……何故か言葉が止まってしまう。
陛下を見ると俯いてプルプルと小刻みに震えだす。
「絶対に…」
「は、はい?」
「絶対にユトと言う者に我が愛娘はやらんぞぉぉぉっ!!」
そう絶叫して暴れる父をセバスと私で止まるのであった。
ちなみに数日後……とある報告でまたこの父が暴れるのだが……それはまた別の機会に。
◇◇◇◇◇
〜????〜
「残念なことぉ〜にぃ〜、今回は失敗ですねぇ〜」
通信越しから聴こえる男の間延びした独特な喋り方に腹が立つが───ぐっと堪える。
「……あぁ、もう知っておる」
「今回はちょぉとしたぁ……たった1人のイレギュラーが混じっていましたからねぇ〜」
「1人のイレギュラー?」
用意周到で慎重に動く奴が失敗した──その事には少なくとも驚いているが、その感情を隠すように原因を聞き返す。
「えぇ〜、相当な手練れでしたぁ〜よぉ〜」
「そんなにか?」
「私の存在にもぉ〜気づいていましたしぃ〜、何より用意したプレゼントもぉ瞬殺されてしまいましたからぁ〜ね」
以前定期報告で聞いていたプレゼントは相当強力な物だったと記憶しており対応出来ず全滅すると思っていたが……それをたった1人のイレギュラーが瞬殺、しかも気配を消したり隠れたりするのが得意な奴の存在に気付いていた点に驚愕し返す言葉が見つからず唖然としてしまう。
「聞いてますかぁ〜?」
「あぁ……プレゼントはたった1人のイレギュラーでどうにかなる物だとは思えないんだが」
「いやぁ〜私も驚きましたよ〜。苦労して用意した特別なプレゼントでしたから」
「まぁいい……チャンスはまだあるし、最悪失敗しても例の日にまとめて消しても問題は無い」
そうまだチャンスはある。
無理なら準備を万全にして最後にまとめて消せば問題ない───たったそれだけの事だ。
「分かりましたぁ〜よ。ところで……イレギュラーの件はどうしますか?」
奴が言うイレギュラーにどう対処するか悩むが……。
「今は放置で良い。貴様を察知出来るほどの者だ……変に突っついて支障をきたせば意味が無い」
「暫くは放置でぇ〜?」
「あぁ、だが邪魔をしてきたその時は……」
「了解しましたよ〜」
俺の言いたい事が分かったのか奴はすぐに返事を返して来た。
「とりあえず貴様は例の日に向けて準備を頼むぞ?」
「了解しましたぁ〜よ。それでは失礼します……」
奴はそう言葉を残すと通信が途絶える。
暫くは大人しく準備するしか無い。
下手に手を出してしまえば最悪勘付かれかねない。
そうなってしまっては意味が無いし、現在戦場に赴いている人類最強の1人がこちらに帰って来て失敗の可能性が高くなるのは最も避けたい。
「全く……ままならんものだ……」
そう呟いて窓から空を眺め、口角を僅かに上げる。
◇◇◇◇
〜????〜
荒廃した地にある崖の上にフードを深く被るボロマント姿の人間がは1人立っている。
「いやぁ〜本当にアレは予想外でぇすねぇ〜」
相手との通信を終えイレギュラーの件を思い返す。
3体のオークは瞬殺、攻撃の瞬間すら見えなかった。
依頼は失敗それもたった1人の人間の所為で、だ。
「私は気配隠蔽等の複数の隠蔽スキルを使っていたのに、それすら見破って私の気配に感付いてこちらを見ていましたし……中々に面白いですねぇ〜」
何度思い出しても笑みが止まらない。
一応、こちらからはまだ手を出せないが……もし手が出せるようになれば……。
「フフッ……さぁ〜て、どうお相手致しましょうかねぇ〜」
イレギュラーが敵対した時、どう対処するか考えると楽しみすぎて笑いが込み上げて止まらなくなる。
「是非、私の前に立ちはだかって来てくれると嬉しいですかねぇ〜……片付けが楽しみで楽しみで楽しみで楽しみでぇ───愛おしい程ぉ待ち遠しいで〜す」
狂気を孕んだ声で言った後、彼は景色と同化するかのようにスーッとその場から姿を消していった。
◇◇◇◇◇◇
〜魔帝国ワルプルギス・王城〜
「はぁ……今日も1日平和で…………暇ですわ」
そんな独り言を呟いて自室のふかふかなベットの上でゴロゴロする少女。
「何か面白い事でも起きないかしら?」
暇潰しに何か起きないかと願いを込めて呟くと廊下が騒がしくなりゴロゴロする事を止め起き上がる。
「どうしたのかしら?」
首を傾げ、騒がしい原因を確認しようとした時、部屋にノック音が響く。
「姫様!失礼します!!」
「入りなさい」
入室の許可を出すと、すぐさま扉は開かれると1人の黒騎士が入り跪く。
「報告します!3体のジェネラルオークがアストレイア王国の領土内に出現し演習中だったアストレイア王国の騎士達を襲撃した模様で───」
「はぁ!?」
黒騎士の報告途中だが驚きのあまり声を上げ報告を遮ってしまう。
まずアストレイア王国とは不可侵条約を結んでいる為、配下の魔族達にも絶対敵対行動を取るなと厳命しているのに襲撃した事。
更に驚いた事は襲撃したのはオークジェネラルが3体で魔族である事。
魔物自体は世界中何処にでも自然発生しているのでなんらおかしな事では無いのだが上級に分類する魔物は魔族になり魔族に関しては別で他国の領土に移動する場合は色々と手続きをして許可証が必要なのだが……ここ最近そんな話はこちらにきていない。
もし許可証を持たずに国境砦や検問の警備にバレずに通過する事なんて出来ない筈なのに通過して侵入していた事。
もし自然発生したとしても発生した魔物の殆どは下級〜中級魔物位で知性ある上級魔物の自然発生は絶対に有り得ないのだから。
「……いったいどういう事かしら?」
怒りの感情に呼応するかのように私の魔力が暴力的に部屋中に吹き荒れ、恐怖からか黒騎士がガタガタと震え始める。
その姿を見て慌てて冷静さを取り戻し魔力を鎮める。
……確かに何か面白い事が起きないかと願ったが、これは度が過ぎた出来事で看過できない。
更に現王と王妃は城を開けておりしばらく不在な為、最高責任者が私しか居ない状況。
頭が痛くなる……。
「ごめんなさい、少し感情が昂り過ぎましたわ……続きを報告なさい」
黒騎士に報告を促しその後の顛末を聞くが……。
「……はぁ!?本気で言ってるの?」
「は、はいっ!3体のジェネラルオークは1人の……仮面をつけた黒ずくめの人間に瞬く間に討伐されたようです」
あり得ない事態に私はさらに頭を悩ませる。
戦闘が出来ない人間や上級冒険者まで蹂躙する事が出来る戦闘力を持つ魔族が成す術なく討伐。
相当な手練れ──つまり超級冒険者なら分からんでもないがそれでも単独で瞬殺するなんて無理がある。
仮に私と同じ超越者なら単独で瞬殺するならあり得ない話ではないですが……。
もしそれほどの実力者が存在するなら必ず私達の耳には入っている筈ですし……でもそんな報告は一切無い。
つまり世界全体知らない超越者クラスの人間が1人居るって事になるけど……。
「はぁ……色々と頭が痛くなる話ばかりね……」
溜め息も吐きたくなる。
この案件、アストレイア国王はきっとお怒りだろうし後で謝罪と弁明の手紙を送らなければ……。
「悪いけど文官を今すぐ呼んできてくれないかしら?」
「畏まりました」
黒騎士が部屋から出て行くのを見送るとベットの上にまた寝転ぶ。
「はぁ〜やだやだ、やっぱり暇が1番良いわ。滅多な事は望む物じゃないわね」
あー……それとこの事が原因で王国のあの脳筋女がこの場所に突っ込んで来なきゃ良いけど……。
「それにしても魔族の王国領土内出現に襲撃、さらには単独での討伐する謎の人物、ね」
王国は王国で色々と大変そうね……まぁ、今回は大人しく静観しとこうかしらね。
でも……謎の人物は気になるから個人的に調べてみようかしら?。
とりあえずまずは……。
「厄介事の解決からね」
扉の向こうから聞こえる複数の足音を聞きながら今後の予定を考えていく。
最後までお読み下さりありがとうございます!
まだこの章ら全体的にはまだ始めなので皆様に楽しんでもらえるように頑張って執筆していきたいと思います。
後よければブクマやお気に入り、下の☆に評価してもらえれば大変嬉しいので皆さん良かったらお願いします。




