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〜野生の〇〇〇〇が現れた!〜

奉納(続き)でございます。

 目を覚ますとそこには見慣れた天井が広がっていた。


「まぁ…十何日も同じ宿で過ごしてたら見慣れるものだよなぁ…」


 いっそこと夢であってほしいと何度も思い期待を込め目を覚ますが───変わらず見慣れた天井である。


「……用意するか」


 少し憂鬱気味に呟き、身支度を済ませると宿の食堂を目指す。

 食堂にはちらほら冒険者パーティーがテーブル席に着いており今日の予定やクエストの情報などの意見交換しながら食事をしている。

 流石に1人でテーブル席に座る気もないのでカウンター席の奥の方に座る。


「あら?ユウトちゃん、おはようさん!」


 明るい声をかけられ前を見る。

 赤髪で筋骨隆々の褐色お姉さんがメニューをカウンター越しに渡してくる。


「おはよーございます…今日も朝から元気ですねライナさん……」


「あったり前よっ!!冒険者宿の女将が朝から元気無くちゃ締まらねぇーだろ!!」


 高らかに笑うこの女性はライナさん。

 この宿、破天荒の女将である。


「ヤンさんはキッチンですか?」


 ヤンとはライナの旦那さんである。


「あぁ!旦那は朝食作りながら昼の仕込み始めてるよ。なんだい?旦那にようかい?」


「いや…姿を見なかったんで、聞いてみただけですよ。」


「そうかい?ならいいけど……って朝はいつものでいいのかい?」


 長い間泊まって朝飯を食っているとライナさんも俺が何を頼むか分かっているので、俺は頷くとあいよと返事を返してライナさんはキッチンにオーダーを伝えに行く。


 俺は今日の予定について考える。

 クエスト先で現在行方不明になっている(この世界に居るのかも分からんし生死も不明だが)仲間の痕跡がないか調べたり、町や村なんならこの都市で情報を集めたりもしていたがあまり順調に進捗していなかった。

 言わば少々手詰まりなのである。

 他の国にも行く予定でもあるが、まだ色々と問題もあるため現状維持なのだが……。


「……どうしたもんか」


(マスター、焦らず探すしかないのでは?)


 急に話しかけてきたリーゼにビックリして体がビクッと反応する。


(急に話しかけられるとビックリするんだが?)


(まだマスターは慣れないのかしら?)


(急に頭の中に住人が増えて話しかけられるのが慣れる一般ピーポーが居ると思うか?)


(安心しなさい、マスターは一般ぴーぽーでは無いから)


(断言かよ)


(えぇ。覆る事は無いわね)


 ここまではっきりと言われると腑に落ちない感が芽生える。

 いや確かにそうなんだな…なんかリーゼにだけは言われたく無い気がする。


(それで…この後マスターは何をするのかしら?)


 悶々と俺が考えているとリーゼは今後の予定を聞いてくる。

 ちょうどそのタイミングでライナさんが朝のメニューを持ってきてくれたので受け取ると軽くお礼を言い朝食に手をつける。

 朝はモツと野菜のスープに小さなバケットみたいなパンと一緒に食べるのがマイブームでこれがまた美味い。

 スープはあっさりかつモツと野菜の出汁がしっかりしておりスパイスの黒胡椒が絶妙なバランスで朝から活力を漲らさせてくれる。

 そしてバケットも硬すぎずいい感じの硬さでスープとの相性も抜群だ。

 スープに浸して食べると絶品である。

 そんな朝から美味しい食事を楽しみながら耳を澄まして周りの話を聞いていると、気になる話が聞こえる。


「そういや、西の森で何か変なのが出る噂があるんだが…」


「あー、アレな。俺は兎を追い回す子供が出るって聞いたけど…」


 変な子供…ね。

 西って言ったら、昨日クエストで向かった森の事だろうか?行った時はそんな子供とは出会わなかったが…。


(リーゼ、今日の予定が決まったぞ)


(西の森に行くのかしら?)


(あぁ、噂が気になってな)


(そう…まぁ頑張りなさい)


 そう言って彼女は会話を終わらす。

 人に聞いておいて興味なさ気に会話終わらせにきたな…。

 スープを啜りながらため息を吐くと横からどうしたのー?って心配する声が聞こえたので横を見ると赤毛の少女が立っている。

 破天荒のエプロンを着ている赤毛の少女…彼女はライナさんとヤンさんの娘のミリィちゃん。

 店の手伝いでよく接客を担当している看板娘である。

 明るく誰にでも愛嬌があり素直な女の子である事から冒険者の男女問わず大変人気である。


「おはよ、ミリィちゃん」


「おはよー、ユウトさん」


 彼女はにぱーっと笑顔を向けて挨拶を返した後、少し心配そうな顔をして訪ねてくる。


「で、ユウトおにーさんはどうして朝からため息なんか吐いてるの?」


「んー、ちょっと心配事がね…」


 リーゼの事、仲間の安否や聖骸の事、頭を悩ませる案件が一杯なのだ。


「そうなの?」


 そう言って彼女はうーんと頭を悩ませる。

 その仕草が可愛らしく思う。

 彼女は15才位で年相応の見た目なのだが身体は引き締まっており、さながら後輩の部活少女って感じの子だが時折こうやって可愛らしい仕草を見せるので、たまに本当にあの2人から産まれてきたのか疑う時もある。


「そんな事より向こうでお客さん呼んでるけど行かなくて大丈夫なの?」


 彼女にそう言って向こうのテーブル席を指すと、あっ!と慌ててテーブル席の方に向かう。


「とりあえず今日は西の森にピクニックでもするか…」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「今日もいつもので良いかな」


 部屋に戻った俺は西の森に向かう為の準備で自分の装備を確認する。

 武器はジークお手製の高周波マチェーテが2振りに防具は皮の胴当て。

 中のインナーは愛用の防刃繊維が織り込まれた口元まで隠せるハイネックのミリタリーコンバットシャツを着用。

 服装は流石にNo.の制服は使えない為、服屋で購入したが店員にあれよこれよと勧められた結果、フード付き外套にアサシン風な服装になってしまった。


「何かこう…他にも無かったんかな…」


 日本で着たら完全コスプレである。

 とりあえず部屋着から着替えて忘れ物が無いかを確認してから宿を後にする。


 本日は道中で魔物や盗賊などに襲われる事も無くゆっくり進む事が出来た。

 逆に順調すぎて怖いくらいである。


「昨日まであんなに襲われたりエンカウントしてたのにここまで何も無いと後が怖いな…」


 嫌だよ?後で面倒事が2、3倍になって返ってくる事無いよね?。




 ………本当に無いよね?。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 本当に何事も無く平和に西の森に到着する。

 森の中に入ってからも平和に過ごせた……って事は無く魔物の奇襲やエンカウントは普通にあった。

 まぁ昨日のアホみたいに襲われる事は無かったが、すこし数は多かったと思う。

 魔物も動物型が多かったので対処がしやすく手間取る事もなく簡単に討伐出来た。

 ちなみに戦闘に関しては能力は一切使っていない。

 使うとリーゼがうるさいので……まぁ、余程な事があれば使っても良いとは許可を頂いてるし、何かあったりすれはリーゼも助言してくれるので正直、割と使わなくても今の所問題は無いのである。

 え?空間収納は能力じゃないのかって?

 俺も疑問に思って前にリーゼに聞いたら「問題無いわ」の一言で終わったよ。

 だから詳しい事は正直分からないので、それについて考えるのは辞めました。


 そんなこんなで朝から噂の変な子供を探して森を彷徨っていたら何組かの冒険者パーティーに会ったり、ちょっと戦況が厳しそうなパーティに加勢したりなんてしたらいつの間にかお昼を回っていた。


「そう簡単に見つからんもんだな……」


 森の中にひっそりとある少し大きな泉付近で休息しながら宿で頼んでおいた昼食のバケットサンドを頬張る。

 味は一言で言うなら絶品だった。

 丁寧に焼かれたローストチキンのスライスがピリッとしたスパイシーなソースと絡み口に運ぶスピードが速くなる。

 さらに新鮮なレタスとトマト、スライスチーズの味のアクセントが余計に食欲をそそる。


「うまっ」


 そんな一言しか感想が出ない事を許してほしい。

 こうやって外で食べるまともな料理は久しぶりでNo.時代なんかの食事はレーションかカロリーメイト位である。

 何か思い出したら涙出てきた……。

 そんなこんなで美味しく昼食をいただき森の探索を再開し始める。

 ちなみに今回何故噂の確認をしようかと思ったのは確証は無いが、もしかしたらその変な子供がアイリスかもしれないって思ったからだ。

 アイリスは何気に逞しいのでどんな所でも生きていけるからである。

 生きていて合流出来るなら、早めに越した事は無い。

 そう考えながら森の奥の方に向かって足を進める。


 ─────ガサガサッ。


 前方の草陰から音がしたので武器を構え様子を見る。


 ─────ガサガサ……ガサッ!


 音が大きくなり草陰から何か飛び出してきた…がただの兎であった。

 とても怯えているのか急いでその場から逃げる様にまた違う草陰の中に消えていくと、先程兎が出てきた場所から大きな影が出て俺の目の前に姿を現わし目が合う。

 目と目が合った瞬間、時が止まったような錯覚が起き見つめ合う。


「アイ、リス…か?」


 少々見た目がボロボロだが見覚えのあるNo.の制服にクリーム色の少々ボサボサな髪、更にこちらに向けられた視線は綺麗なサファイア色の瞳を覗かせる。

 猫がその場に座る様な体勢でジーッと俺を見たまま、口に咥えていた獲物である兎をそのままポロっと落とす。

 解放された兎は意識を戻したのかその場から逃げるが彼女は逃げた獲物に見向きもしない。

 その代わり、今度は俺を獲物と判断したかの様に狙いを定め、四つん這いでジリジリとにじり寄って来る。

 さながらその姿は獲物を追い詰める小さな女豹である…。

 俺がその気迫から逃げる様に一歩下がる度にアイリスも一歩とこちらに詰め寄り、俺が後ろに逃げ場が無くなると彼女の口からはフーッ、フーッと威嚇する様な声が漏れている。



 ……アイリスさん野生化してません!?

初めての方、いつも読んでいてくれている方。

読んで頂きありがとうございます。

まだまだお話的にも序盤なので終わりが見えませんが頑張って執筆していきますのでこれからも楽しんで読んでもらえると嬉しいです。


また気に入った方や続きが気になる方、よければ……いや是非ブックマークや評価のほど、よろしくお願いします。

評価が高いと私のテンションも高くなります(・ω・`)



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