〜起きたら森の中?②〜
「皆様、先程は大変ご迷惑とお見苦しい姿をお見せしまして誠に申し訳ございませんでした……」
目の前の優男…不知火は綺麗なThe・土下座を決め込む。
先程までの不知火の有様にジーク達は完全に気が抜けたのか、どう対応したら良いのか困り果てている。
「不知火、分かったからもう良いよ…こいつ等が悪いのもあるし」
俺が不知火にそう言葉をかけるが…頭を上げる気配が無かった。
「あの様な失態…死も覚悟している所存ですっ!」
「いや、あんなんで殺そうとしねーよ!?てかお前死んだら誰が聖骸を受け渡しするんだよ!」
その言葉に不知火は我に帰ったようにハッとし出し慌てて起立するように立つ。
忙しい奴だな…ほんと。
「導師ヴァルハイム様と内山首相からお話をお聞きし、受け渡しのため皆様をこの学園の地下に存在する禁忌格納庫にご案内します!!」
不知火の切り替えの速さについて来れないジーク達と溜め息混じりに頭を抱える優人は彼に案内されるがまま中央棟地下深くまでついて行く。
途中、特殊な装置が付いたエレベーターに乗り地下まで降りると、目の前の光景に俺も驚く。
「これは…また広いな…」
「…大きい」
「この広さ首都圏外郭放水路並みに広いんじゃねーか?」
俺とアイリス、ジークが感想を述べるとレオが奥を指差すので視線を指した方向に向けると厳重そうな扉が佇んでいるのが分かる。
不知火もその扉に向かう様に歩き出し俺達も追随する様に並んで着いて行く。
近づけば近づくほど存在感が大きくなる扉は目の前に着く頃には10メートル位ある堅牢な扉であった。
「これどうやって開くのかしら…?」
扉を前にナオミの疑問は最もである。
確実に人の力で開くのは無理であり、かつ何かしら特殊な装置が見当たる訳でもない。
「これはですね、こうやって開くんですよ」
ナオミの疑問に応える様に不知火は扉の前に立つとおもむろにナイフを取り出す。
一同が不知火が何をやるのか観察する様に視線を向けていると彼は自分の親指の腹を少し切り扉の一部に血で紋様を描き始める。
彼が紋様を描き終えると血の紋様は扉に吸い込まれる様に消えていくと扉は轟音を立ててひとりでに開き出す。
「さ、開きましたので奥まで進みましょうか」
不知火はそう言うと開いた扉の奥に入って行くので一同もまた彼の後を追う様に進む。
歩き出して然程時間は経っていないが何も無い薄暗い空間を歩いていると、長時間歩いているような錯覚が一同を襲い始めていると不知火が歩みを止めて「着きました」と告げるが……。
「何も…無いぞ?」
ジークは辺りを見渡すが周りは薄暗い空間しかなく何かしらの物や目的の聖骸などは見当たらずにいると天井から眩い光が筋となって目の前を照らし出す。
「何……これ……」
目の前を照らし出された光景にアイリスが呟いた後、一同はその光景に息を呑む。
どこからとも無く伸びる数多の鎖が中の物が解き放たれ無いようにする為か幾重にも巻きついた浮かぶ西洋風の棺が目の前にあり沈黙は続く。
「少し待ってて下さい…今移送できる様に拘束固定術式外しますので」
不知火は淡々と一同に告げ、棺の周りでテキパキと何かを始めだす。
不知火が行動を終えた後、棺に巻きついていた数多の鎖は一本ずつ砂の様に崩れ消え全ての鎖が消えた後、解放された棺は宙に浮かんでいたがゆっくりと床に降りる。
「拘束固定術式は解除しました。後程来る輸送ヘリに乗せますので先に先程の庭園にお戻り下さい」
特に何事も無く見てただけで終わった一同は呆気なさに拍子抜けする。
「俺等、一緒にここに来た意味あるのか?」
俺が何気なく不知火に疑問をぶつけると彼は当然ですよ!?みたいな顔をする。
「意味大ありですよ!?確かに見てただけでしょうが解除の見届け人は規則上必須で尚且つ、万が一棺の中の物が目覚めた際には確実に鎮圧出来る人達じゃ無いと駄目なんですから…自分は目覚めるんじゃないかってビクビクしてたんですから!」
必死に訴える不知火に聖骸と言っても単なる死体だろ?そんなに怯える程の事か?と疑問に思いつつも、その場を後にし中央庭園に向かう。
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この後バタバタとしていたが、特に異変や襲撃と言った物騒な事は無く無事に引き渡しを終了して富士の麓…青木ヶ原樹海に大型ヘリで向かう事になる。
樹海の中に佇む警備の厳重な導師主導の研究所…アーカイブ研究所に向かい聖骸を引き渡すだけの簡単な仕事だった筈…なのだが。
「RPG!!」
唐突にヘッドセットに響くパイロットの声と共に大きく揺れるヘリにヘッドセット越しからでも分かる轟音。
パイロットも樹海の何処からか放たれるRPGを避けようと努力をするが後尾に当たってしまい爆発で吹っ飛んでしまう。
「チヌーク、ダウン!チヌーク、ダウン!!」
言葉通りこの大型ヘリが墜落の意味としており、パイロットは何とかしようと色々試すが事態は変わらず俺やアイリスも動こうとする…その時だった。
突如、聖骸の棺が目が眩む程光出す。
「なっ!?」
「きゃっ…!?」
「何だこれ!?」
「棺が…!!」
「!!」
光は次第に大きくなり、その瞬間俺は意識を失い気付けば森の中に居た。
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目が覚めるまでの、俺にとってはほんの数分前の出来事を大雑把にまとめれば…。
「まぁ…とりあえずだ」
そう言って一息つけると目を覚ました場所から周りを散策して辺りを見渡す。
「マジでここ何処なんだ?」
散策して気付いたのはここは落ちた樹海じゃ無いって事だけ。
そして、群生している草木はどれも樹海では見られない物ばかりか見た事もない草花も生えている。
「………」
暫く見渡すと森の奥に開けた場所が見えた気がしその方向へと歩みを進める。
生い茂る草を押しのけながら進み、ようやく木々が無い開けた場所に出るが…。
「……どうなってるんだコレ…?」
日本でも中々見られない光景…絶景と言うべきか。
開けた場所は切り立った崖の上であり、そこからは
ナイアガラを思わせるような勢いの凄い滝や巨大な滝壺に広大に広がる自然豊かな大地、その先には大海原が広がっている。
だが驚いたのはそこでは無い。
「アレは…月、か?2つ浮かんでるように見えるが…」
昼なのに太陽とは別に空に浮かぶ月らしき物体が2つ。
優人は何度か景色を見ては空を見上げると言った行動を取るが景色は変わる事などなく悠然と映る。
「まぁ…天国では無さそうだけど……へっ?」
間抜けそうな声を上げながら空の一方を見る。
何かしらの物体が空からこちらに近づいてくる。
段々と近づいてくると分かるがデカイ…とてつもなくデカく大きな翼をはためかせながら飛行している。
そしてその巨大な飛行物は巨大な影と轟音や風圧と共に俺の真上を飛び過ぎ去る。
「……………」
呆気に取られすぎていて言葉が出ない。
これが現実ならば認識しないといけないのだが…。
「………いやいや無理無理!流石に限度って物があるよ!?」
認めたくない一心から言い訳を試みるが…目の前に映る景色や過ぎ去ってもなお、遠くの空を飛び続ける飛行生物に改めて現実を突きつけられる。
「見た事ない景色に…ドラゴンみたいなのも飛んでいっちゃたらもう…アレだよね………」
どうしても認めたくは無いが口に出してしまう。
「これ…アレですよね…異世界転生か転移ってやつだよな……」
一難去ってまた一難…とはよく言ったものだよな…どうやら、俺こと天ヶ崎優人は貧乏クジを引いたらしく…異世界にウェルカムしてしまったみたいだ。
陽が優しく差し風が心地よく駆け抜けるが心は穏やかでは無かった。
「……これ俺帰れるんか?」
そう呟くが答える者は誰一人として居なかった。




